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家族とのつきあいや身の回りの世話を“外注”する「家族代行サービス」の実態 外出の付き添い、見守りから、エンディングノート管理や死後の手続きまでをサポート

家族の代わりになって対応する「家族代行サービス」に相談する人が増えている(写真/イメージマート)
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時代とともに家族の形が変化していくなか、家族との「離れ方」にも新しい動きが現れている。介護疲れ、DV、金銭トラブルなど、さまざまな原因で親や家族との関係を見直した結果、家族とのつきあいを“外注”するケースがあるという。そんな“家族代行サービス”の実態をレポートする。【全3回の第2回。第1回から読む

「家族じまい」をサポートする業者には月100件の相談が集まる

高齢になった両親やきょうだいの身の回りの世話を、家族の代わりになって対応するというサービスを提供する一般社団法人「LMN」が手掛ける「シニアライフ特化型コンシェルジュサービス」の登録者は、現時点で400人を数える。代表の遠藤英樹さんが、具体的なサービスの内容をこのように話す。

「外出などの付き添いから、病院に通う際の同行、日常生活のサポートから、行政への手続き代行まで行います。介護が必要なかたの場合は施設の選定から、実際のやり取りをすることも可能ですし、終末期や亡くなった際の対応まで一貫して担うこともできます。

ただし、当社の職員は介護や看護の資格保有者ではないため、サポートできることに制限はありますし、第三者が行うのでもちろん費用もかかります。それでも、月に100件ほどの相談が舞い込んでいる状態です」

介護から看取り、葬儀まで、親のケアをプロに完全委託できる代行業者は、円滑な「家族じまい」の強い味方だ(写真/PIXTA)
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家族代行サポートサービスを行う一般社団法人「包括あんしん協会」もLMN同様、元気なうちから逝去後まで、希望や気持ちに寄り添ったサポートを行っている。理事の土屋福美子さんが言う。

「私たちは見守りサポートと題して、週2回、指定された曜日と時間に電話で安否確認を行っています。万が一連絡が取れない場合には、当協会で緊急に家を訪問するなどの措置を取ります。また、インターネット上でエンディングノートの保管や管理も行っています。具体的には、家族や後見人などの緊急連絡先、延命治療などの医療事前指示書、ご逝去時の希望やお世話になったかたのための伝言を預かるなど、病気や死亡時に万全の体制でサポートできるようにしています。

死後の事務として入院費の精算や公共料金の停止、携帯電話やネットの解約、行政への手続きも代行可能です」

ゴールの見えない介護を理由に家族と離れることを決意

土屋さんのもとには、連日のように問い合わせが寄せられ、相談者で多いのは40~50代の女性だという。

「家族間の仲が悪く、親の面倒を見たくないので、家族代行を依頼できないかという相談が多いですね。また、ひとり暮らしの高齢者のかたや、お子さんのいらっしゃらないご夫婦のかたからのご相談もあります。

財産をめぐる相談も多いですし、意外に多いのはお墓に関する悩み。自分はひとりなので、自分が亡くなった後は誰も墓守がいなくなってしまうのでいまのうちに墓じまいをしたいとか、両親の墓に入りたくないのでどうすればいいのか、といった問い合わせが寄せられます」(土屋さん)

平均寿命の延びにともない介護する年数が増えている。介護を取り巻く環境は過酷さを増すばかりだ(写真/PIXTA)
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近年は介護を理由に家族と離れることを決意する人も多いと遠藤さんは話す。

「親の介護がつらいので離れたいという相談は多い。子育ての場合は成人や就職という明確なゴールがありますが、介護のゴールは見えにくい。親が老化し、できないことが多くなる姿を見るのは苦痛ですし、楽しいことがないと考えてしまうのは無理もないことです」 

昨年の暮れ、夫と子供を捨てて家を出たという主婦のCさん(45才)は、家政婦扱いされることにがまんができなかったと打ち明ける。

「開業医の夫は11才年上で、義父母はどちらも90才近いのですが、考え方が昔の男尊女卑そのもの。そんな両親から溺愛されて育った夫は典型的な“俺様”でした。若い頃の私はそんな夫が頼もしく思えて結婚し、2男1女に恵まれましたが、結婚生活は家政婦のようなひどいものでした。

息子2人は夫のコピーのような暴君で、母親の私をバカにして言うことを聞きませんでした。自由になる時間もお金もなく、このままでは義父母の介護をさせられるのは目に見えていたので、“それだけは絶対にイヤ”と一念発起して、友人の力を借りて家を出ました。いまは離婚協議中ですが、一刻も早く縁を切りたいです」 

(第3回に続く。第1回から読む

「家族じまい」代行料金の一例「家族じまい」代行料金の一例
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※女性セブン2025年2月13日号

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