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【内藤剛志インタビュー】サックス奏者になる夢を断念し俳優の道へ「ひとえに運がよかったというか。早いうちから俳優は天命だと感じていた」

ドラマに欠かせない人気俳優の内藤剛志
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「連ドラの鉄人」という異名を持ち、主演・助演にかかわらず、ドラマに欠かせない人気俳優として活躍する、内藤剛志さん(69才)。27クール(6年9か月)連続でドラマに出演したという、日本新記録を持つ内藤さんは、どのようにして俳優の道へと進むことになったのか。内藤さんに、若かりし頃について聞いた。【全4回の第2回。第1回から読む

サックス奏者を断念。自分を活かせる道は何か

25歳で映像デビューして以来、ずっと一線で走り続けている。大阪市に生まれ育ったが、演者になる素養は、幼い頃からあった。

「父がNHKの技術職に就いていまして、母は人形製作をしていた人なので、まあ、クリエイティヴな環境にあったとはいえるかもしれません。NHK大阪の児童劇団に入っていたこともありますしね」(内藤、以下「」内同)

だが、何よりも夢中になったのは、サックスだったという。大好きなジャズで身を立てたいと、野心を燃やして上京。しかし、ジャズ・スクールに進むも「とんでもない才能の奏者」と出会い、世の中は広いと知る。「とても敵わない……」と断念し、「では、自分を活かせる道は何か」と切り替えた。そして映像の世界で生きようと決意する。

小学生の頃、自宅で
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「やはり父親の影響があったかもしれません。ドラマを作る面白さ、あこがれがあったといいますか。それで日大(日本大学)の芸術学部に入ったわけです。でも俳優になるなんて思ってもみなかったですよ」

意外な返答だった。しかし自然と俳優への道が敷かれていく。同級生で、のちに監督として活躍する長崎俊一と共に自主映画を撮り始めたことで、たまたま主演する立場になったからだ。

「長崎に言われて、じゃあやってみるよと。ただ出役をやってみたところ、するのならちゃんと勉強してみようと思ったんです。それで文学座の養成所に入りました」

この行動に、彼の真面目さ、真摯さといったものを感じることができる。しだいに芝居に魅せられ、この道をゆこうと腹をくくる。

「父からは、けっこう反対されましたけどね。やはり俳優では簡単に食えないっていう現実を、経験値から知っていたからでしょう」

だが迷いはなかった。やがて「自主映画では飯が食えない」と、広く観客の動員が見込める、商業映画での活躍を目指し始める。25歳のとき、メジャー映画『ヒポクラテスたち』で、大森一樹監督からの依頼を受けてデビューした。医者の卵たち7人の葛藤と成長とを描いた、みずみずしい青春群像劇である。

「キャスティング方法が面白かったですね。アイドル歌手の世界から伊藤蘭さん、僕は自主映画からの代表としてとか。のちにいろいろな作品に出させてもらうようになって、監督さんたちが『作品の成功はキャスティングで決まる』というようなことをおっしゃっていて、その意味がわかる気がします」

爪痕を残すための企みは今もやっている

この出演で、それまでのアルバイト生活に別れを告げた。

「朝日新聞社で宅配便のバイトをしていたんです。でも仕事をもらえるようになって、バイトなしで暮らせるようになりました」

大学生の頃の一枚
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以降、50年近い俳優人生の中で仕事が途絶えたことはないという。

履歴にはその年出演したドラマ、映画と、作品名が途切れず羅列されている。売れない時期や変節、紆余曲折がある俳優が多い中、ある意味、非常に稀有な人である。

「え、そうですか。飯に塩かけて食べていましたとか、そういう話が聞きたいのでしょうか(笑い)、でも本当にないんですよ。ひとえに運がよかったというか。……うん、そういった運というものはあるんじゃないでしょうか。だからか、僕は早いうちから、俳優は天命だというふうに感じていました。自主映画でも養成所でも、主役というものが回ってくる……。それって何だろうと考えたら、どこからか、指名されているような、そんな感覚を覚えたといいますか」

確かにデビューの頃から存在感がある人だった。だが敷かれたレールに乗ってきただけではない。

「また呼んでもらえるために、何か爪痕を残すっていう、そういうことは常にやってきましたよ。こいつ、面白いじゃんって思ってもらえるための企みで、それは今もします」

デビュー3年目には、大島渚監督の代表作ともなった映画『戦場のメリークリスマス』の、法務中尉役のオファーを受ける。40歳のときには、是枝裕和監督の、初の長編映画『幻の光』に起用された。奥能登の静かな村を舞台に、過去に傷を持つ女性(江角マキコ)と再婚した素朴な夫を演じる。心に沁みる静謐な作品だった。内藤が依頼されるのは、その芝居が、珠玉の作品を生み出す監督らの、何かしら心の琴線に触れるからなのだろう。

「自分では、自分の芝居がどうかといったことはわかりません。僕のやるべきことは、しっかりと役の人物に向き合うことだけ。もちろん、必要な準備はしますよ。人物について考察しますし、資料があれば読み込みますし。ただいちばん大切なのは、撮影現場で湧きあがる感情だと思っています。

だからこそ僕から見てですが、準備もせずに来たり、手を抜いたりしたら、自分は許さないよっていうところがある。やはりプロとして仕事をする限りは、何どきも真剣でいてほしい。よい作品を作るのが仕事なんですから

俳優の内藤剛志
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(第3回につづく)

【プロフィール】
内藤剛志(ないとう・たかし)/1955年大阪府出身。1980年、映画『ヒポクラテスたち』で映像デビュー。以降、映画、ドラマ、バラエティーと活躍。代表的ドラマに『警視庁強行犯 樋口顕』『警視庁・捜査一課長』シリーズほか。声優としても活躍し、『千と千尋の神隠し』では、千尋の父親役を担当している。現在、主演ドラマ『旅人検視官 道場修作』の新作を撮影中。

取材・文/水田静子

※女性セブン2025年3月6日号

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