
食べ物を色鮮やかに染め、腐敗や味の変化を防ぐ──こうした食品添加物のおかげで、私たちの食卓は“進化”し、多様化した。一方、その危険性はかねてより指摘されている。海外ではリスクへの意識が高まり使用禁止となった添加物も多くあるが、日本ではいまだに使用され続けている。
世界で禁止の動きが広がる「赤色3号」
1月、米食品医薬品局(FDA)が合成着色料の「赤色3号」について、食品全般と経口医薬品への使用許可を取り消すと発表した。ラットを用いた研究で発がん性が認められたことがその根拠とされ、すでにEUでは1994年に食品や化粧品への使用が禁止されている。 日本ではかまぼこや紅しょうが、グミ、駄菓子など日常的に口にする食材に含まれている食品添加物だ。日本の消費者庁はFDAの決定を受け、ホームページ上のQ&Aを更新。

「ラットでの発がんをヒトに当てはめることはできない」とし、安全性の見直しに乗り出す様子は見られない。世界で禁止の動きが広がる赤色3号を漫然と摂り続けていいのか──米ボストン在住の内科医・大西睦子さんが話す。
「ラットでの発がん性のほか、米カリフォルニア州環境保護局が2021年に合成着色料に関する研究をレビューしたところ、約25の研究のうち半数以上で、赤色3号を含む人工着色料の摂取と、不注意や多動などの行動結果との間に相関関係があることが確認されました。さらに、食品添加物の相互作用によるリスクなど、いまだ明らかになっていないことも多く“安全”とは到底言い切れません」
海外では禁止や規制が進む添加物
赤色3号に限らず、日本の食卓には海外で禁止や規制されている“安全未確認添加物”があふれている。消費者問題研究所代表の垣田達哉さんが言う。
「合成着色料では『赤色106号』が肺がんや食道がんなどとの関連が指摘され、欧米諸国のほか中国などアジア各国でも禁止されていますが、日本では和菓子や福神漬けに使用されています。また、インスタント食品やたくあんに使用されている『黄色4号』もがんやアレルギーを引き起こすリスクが指摘されており、海外では禁止や規制が進んでいます」
天然由来であれば安心なのかというと、そうでもないという。加工食品ジャーナリストの中戸川貢さんが説明する。
「清涼飲料水やソースなどに使用されているカラメル色素の原料は糖分で、製法の違いによって4種類に分けられます。そのうち、アンモニアが使用されるIII類とIV類は、発がん性や免疫機能への悪影響が懸念されていて、EUでは区別されて規制されている。しかし、日本ではそもそも4種類の区別がなく『カラメル色素』とだけ表示すればよいので、消費者は避けることが難しい。

また、赤・青・黄の3種類がある『クチナシ色素』はアメリカやEUではすべて禁止。中国では赤色のみ禁止、タイとベトナムでは黄のみ許可されている。しかし、日本ではそのすべてを『クチナシ色素』と一括表記で使用されています」
日本人だけが無警戒に口にしている添加物は、着色料だけにとどまらない。
「食材のアク抜きやなすの漬けものの変色防止、生うにの身崩れ防止などに使われるミョウバンは、EUでは使用量に厳しい制限が設けられています。また、アメリカやカナダ、EUなどでは高濃度のカフェインを含むエナジードリンクなどは、未成年者への販売を禁止や制限するなどアルコールに準じる措置が取られています」(中戸川さん)
添加物ではないものの、厳しく規制されている成分もある。大西さんが話す。
「油脂を加工する過程で発生し、マーガリンやショートニングなどに含まれる『トランス脂肪酸』は心疾患や認知症、2型糖尿病、がんのリスクを高める元凶として各国で規制が進んでいます。アメリカではトランス脂肪酸を生み出す部分水素添加油脂の食品への使用が禁止され、EUでも食品中のトランス脂肪酸の含有量を100gあたり2g以下に制限するよう規制している。しかし日本では現状、トランス脂肪酸に関する規制はありません」