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人工甘味料、着色料、発色剤など…専門家が警鐘を鳴らす食品添加物「コンビニ弁当こそ添加物が少ない」の指摘も

人工甘味料、着色料、発色剤などは多くの食品に使用されている(写真/PIXTA)
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酔わないお酒に、太らないスイーツ、炎天下で持ち歩いても腐らないお弁当……おいしく、便利で、豊かな食卓を叶える“魔法のような物質”に相応のリスクがあることは、もはや常識だ。だが、そのすべてを避けるのは難しい。せめて「もっとも危ない添加物」だけは、知っておかなくては。

人工甘味料「アスパルテーム」への懸念

低カロリー、低糖質、低脂質。ヘルシーなのにしっかりおいしく、満足感があって、好きなだけ食べても健康や体形を維持できる──。健康志向の高まりに加え、コロナ禍での「自粛太り」を恐れる人々のニーズに応える形でブームになった「ギルトフリーフード(罪悪感のない食べ物)」市場は拡大を続け、次々に新商品が発売されている。「糖質ゼロ」をうたう機能性アルコール飲料や、甘さはそのままにカロリーを抑えたスイーツ、大豆でつくられた代替肉まで、スーパーやコンビニの店頭には、“夢のような健康食”が並んでいる。

だが、その多くに潜む不健康な物質について、食と健康の専門家たちが世界中で警鐘を鳴らしている。

その筆頭が2023年7月のWHO傘下の国際がん研究機関(IARC)が表明した、人工甘味料「アスパルテーム」の発がん性、特に肝臓がんに対する懸念だ。

国際機関が人工甘味料の危険性について正式に発表した(写真/PIXTA)
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消費者問題研究所代表で食品問題評論家の垣田達哉さんが解説する。

「人工甘味料の健康リスクを示す研究や論文はこれまでも数多くありましたが、国際機関が正式にその危険性について発表したのは初めて。またWHOは『砂糖を人工甘味料に置き換えても、ダイエット効果はない』と発表しています。

人工甘味料は同量の砂糖の数百倍の甘みを持つとされます。このため、たとえ糖質が含まれていなくても、甘みによって脳はインスリンを分泌して血糖値のコントロールを乱し、それが肥満につながるとされます」

IARCの発表を受けて、米清涼飲料大手ペプシコの最高財務責任者は、現時点ではアスパルテームの使用は中止しないとしながらも「必要があれば別の人工甘味料に切り替える」とコメントした。WHOが名指しで食品添加物の危険性に関する注意喚起を促した一方で、日本ではこれらの安全性を見直すどころか、リスクの潜んだ添加物がいままで以上に“カモフラージュ”されるようになった。

表記ルール「改変」は“改悪”か

2022年3月に策定された「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が、2年の移行期間を経て今年4月、ついに完全実施された。その内容について、加工食品ジャーナリストの中戸川貢さんが説明する。

表記ルールの改変によってリスクのある添加物が使われていないか判断が難しくなった(写真/PIXTA)
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「4月以降、食品のパッケージに『無添加』『人工保存料・合成保存料不使用』といった表記ができなくなりました。『アスパルテームを使っていません』などと、個別の添加物を名指しして書くことはできますが、『天然』『合成』『人工』『化学』の4つの言葉と『添加物』という言葉を合わせて使ってはいけないのです。これでは、リスクのある添加物の使われていない食品を選びたくても判断できません」

中戸川さんは、ガイドライン策定の理由についてこう分析する。

「想定されるのは、加工食品をつくる工場で添加物を使わなかったとしても、それ以前の植物や肉、魚といった原材料の段階でえさや防腐剤として添加物が使われることも多く、メーカー側での添加物の有無の判断が難しいケースがあったため。そして、“消費者に添加物の入った食品は危険だという認識を与えないため”だとされています」

確かに、添加物の中には味や見た目をよくするだけでなく、細菌の繁殖を防いで保存性・安全性を高めるなど、必要に迫られて使用されるものも少なくない。とはいえ、WHOの指摘通り、健康上のリスクが懸念される「避けるべき添加物」は存在する。

「欧米諸国、特にEUが“少しでもリスクがあるものは使用を禁止する”というスタンスを取っているのに対し、日本は“明らかに危険でなければ使ってもいい”という考え方。その価値観には大きな開きがあります」(垣田さん)

いま、日本では添加物たっぷりのギルトフリーフードが増える一方、添加物の表記に関する規制がゆるくなり、危険な添加物を見分けるのがより困難になっているのだ。本当に専門家が問題視する「ワースト添加物」はどれなのか。より警戒すべきものから、順に紹介しよう。

「砂糖」よりリスクの高い「シュガーレス」

もっとも注意しなければならないと専門家が注意を促すワースト1位は、前出のアスパルテームのほか「アセスルファムK」「スクラロース」などに代表される「人工甘味料」だ。

「スクラロースなど、発がん性が“疑惑レベル”のものもありますが、これらのもっとも危険な点は、実際には糖尿病や腸内環境を悪化させるリスクが砂糖以上に高いにもかかわらず“砂糖よりも体にいい”という思い込みから積極的に手に取る人が多いこと。

同じコーラなら『カロリーゼロ』『シュガーレス』などと書いてあるものの方が体への影響が大きいことを知っておいてほしい」(中戸川さん・以下同)

1960年代から発がん性が指摘され、食品にはほとんど使用されなくなったサッカリンナトリウムは、現在は歯磨き粉やマウスウオッシュなどに使用されているため、油断はできない。

2位は、着色料の「タール色素」「カラメル色素」。いずれも発がん性が指摘されており、日本では欧米とは異なり、規制がゆるく、多くの食品に使用されているのが理由だ。

日本は着色料の規制がゆるいため多くの食品に使用されている(写真/PIXTA)
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「タール色素は『食用赤色102号』『食用緑色3号』など、色+番号で表記された12種類の色素で、EUでは使用が禁じられているものが含まれています。

タール色素以上に、日本ではカラメル色素の使用頻度が高い。I〜IVまでの種類があり、特に危険なのはIV。しかし、食品表示では番号までは表示されないため見分けられません。駄菓子やカレールーなどのほか、スーパーのお総菜などにも幅広く使われており、日本人の摂取量は世界的にみても多いと考えられます」

大量摂取で心配される「合成保存料」の体への影響

ワースト3位は、ハムやソーセージ、明太子などに使われる「発色剤」の「亜硝酸ナトリウム」。食べた後、腸内で産生されるアミンという物質と反応することで、強い発がん性のある「ニトロソアミン」がつくられる可能性があると危惧される。

「加工肉や魚卵は『無塩せき』と書かれたものを選べば亜硝酸ナトリウムを避けることができます」

4位は「安息香酸」「ソルビン酸」などと表記される「合成保存料」。安息香酸はしょうゆや清涼飲料水などに使用され、ソルビン酸は練り製品やチーズ、ジャムなどに広く使われる。腐敗を防ぎ、細菌の繁殖を抑える作用がある“必要悪”だが、それゆえ大量に摂取すれば、本来体にとって必要な腸内細菌をも殺してしまう恐れがあるうえ、発がん性の疑いも指摘される。

保存料のほか、食品の水分を保ったり食感を出す「膨張剤」として使われることもある「リン酸塩」にも要注意だ。

「中華麺などでは『かんすい』、パン類なら『イーストフード』『増粘剤』として記載されていることもあります。体内でカルシウムの吸収を阻害することで、骨粗しょう症や腎臓障害の原因になると考えられています。日本人に骨粗しょう症患者が多いのはリン酸塩が一因ではないかとする説もあります」(垣田さん)

増粘剤はクリームやパンなどの食感をよくする働きがあり、リン酸塩のほかには「加工でんぷん」が使われる。「でんぷん」と聞けば安全に思えるが、実際はブドウ糖を化学物質と反応させてつくったもので、発がん性の懸念から、EUでは一部について乳幼児向けの食品への使用を禁じているという。

「コンビニ弁当」こそ添加物が少ない

リスクのある添加物を口に入れないためには、やはりどこで食品を購入するかが重要。自然食品店に次いで安全な食品が多いのは意外にも「コンビニ」だと、中戸川さんは言う。

「“コンビニ弁当は添加物まみれ”というのはひと昔前の話。スーパーとは異なり、コンビニの食品はすべてに表示義務がある。さらに大規模な大量生産ゆえの徹底した温度管理で保存料を最小限に減らすことも可能です。“体に悪い”というイメージを払拭するため、合成ではなく野菜から抽出した天然の着色料を使用するなど、各社競うように添加物を避けているのです」(中戸川さん)

確実なのは、できるだけ口にする食材の品目数を増やし、食事に占める有害な添加物の“割合”を減らすこと。

たとえ直接のリスクがなくとも、添加物はすべて体にとっては「異物」。排出し、無毒化するためには、体に必要なビタミンやミネラルなどの栄養素を消費するため、“3食食べているのに栄養が足りない”といった状態になる恐れもある。

「自宅で調理すれば、添加物を口にするリスクを格段に減らせます。外食の際も、できるだけ品目数を増やすことを意識しましょう」(垣田さん)

正しい知識を持って、健康を守ろう。

発がん性などが指摘されている危ない食品添加物リスト
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※女性セブン2024年9月26日・10月3日号

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