健康・医療

《名医が教える「信頼できるかかりつけ医」の見つけ方》「専門医のネットワークを持っているか」「患者の選択を尊重してくれるか」など、重視すべきポイント

必要なのはバランス感覚

ただし、注意しなくてはならないのが、「ポリファーマシー(多剤服用)」の問題だ。薬の種類や量が増えてしまうと、作用が複雑に絡み合い、副作用が強く出て、かえって健康を害してしまうケースも出てくる。特に6種類以上の薬をのんでいる場合には、その害が出やすいといわれている。

「ポリファーマシーの1つの原因は、複数の医療機関にかかり、同じような作用の薬が処方されてしまうことにあります。特に高齢者で認知機能が落ちていると、どんな薬が出ているのか細かく把握できないために、ポリファーマシーになりがちです。お薬手帳の普及でだいぶん改善されたとは思いますが、いまも問題視されています」(濱口医師)

薬の処方が増えてしまうのは医師側だけでなく、患者側にも問題があるという。濱口医師が続ける。

「治療を受けたという実感を得るために、みずから薬を求めてしまう人がいるのです。医師が『のみすぎだから、これ以上薬は出しません』と言うと、『あの先生は薬すらくれない』と、その医師を低評価してしまう患者もいます。

高齢者の中には、薬を出してくれる医師ほど、『いいお医者さん』という思い込みもある。しかし、ポリファーマシーの害を避けるためにも、本来は余計な薬は出さずに、処方薬を必要最小限に整理してくれる方がいいのです。薬を処方するときに、のむ期間や、どうなればやめることができるのか。その目安を伝えてくれる医師なら信頼できると言えるでしょう」

もちろん、「薬を出さなければいい」というものでもない。ティーズ内科クリニック院長の土山智也医師は、「かかりつけ医に必要なのはバランス感覚だ」と強調する。

ティーズ内科クリニック院長の土山智也医師
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「たとえば、風邪の患者にむやみやたらに抗生剤を処方する医師は困ります。ウイルスによって引き起こされる風邪に、抗生剤は基本的に効かないからです。また、抗生剤を乱用すると耐性菌が出て、患者さんを苦しめてしまう場合もあります。

ですが、高熱が続く患者さんが受診された場合は別です。新型コロナやインフルエンザの検査で陰性だったとしたら、簡単な血液検査をします。そして白血球が増えていたり、炎症マーカーが高かったりした場合には、抗生剤の投与も検討します。細菌感染を起こしている可能性があるからです。

このように、高熱が出ているにもかかわらず、新型コロナやインフルエンザの検査で陰性だったからといって、『風邪ですから寝ててください』で終わらせるのはよくない。逆に、大した熱も出ていないのに、『とりあえず抗生剤を出しましょう』という医師もよくない。なぜ薬が要るのか、あるいは要らないのかを、きちんと説明してくれる医師がバランスが取れていると思います」

高血圧や糖尿病などの生活習慣病の診療にも、バランス感覚が必要だという。土山医師が続ける。

同じ薬を出し続けている医師は不安だという(写真/PIXTA)
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「毎回『変わりないですね。いつもの薬を出しておきます』で診察を終え、ずっと同じ薬を出し続けている医師はちょっと不安です。知らない間に副作用が出ていることもありますし、加齢とともに薬が効きすぎることもあります。また、生活習慣病はほかの病気を合併して発症することもあるので、そのチェックも必要です。

それに、数年もすると新しい薬が出てきます。古くてもいい薬がありますので、患者さんによってはその方が向いていることもありますが、新薬の方が明らかに優れているなら、処方を変えるべきです。もちろん、なんでも新薬というのも極端ですが、勉強を続けて常に新しい知識を取り入れる必要がある。こうした点でも、医師のバランス感覚は、とても重要です」

漫然と同じ薬を処方し続けるのではなく、その薬の必要性について別の薬に変える可能性や服薬をやめることも含め常に気を配りながら心身の状態をチェックしてくれる医師が、いいかかりつけ医と言えるだろう。

若いうちは、定期的に医師を受診することは少ない。だが、年を重ねるほど、医療機関に頼ることが増えてくる。特に認知機能が低下してきたり、体が衰弱してきた場合には、訪問診療、訪問看護、訪問介護などの支援を検討する必要も出てくる。その場合、最期まで支えてくれるかかりつけ医を探すには、どうすればいいだろうか。西村医師がアドバイスする。

「高齢者であれば、まずはお住まいの自治体の『地域包括支援センター』に聞いてみるのがいいでしょう。支援センターの相談員さんは、地域の開業医のことをよくご存じです。『その症状であれば、この先生がいいですよ』と教えてくれるはずです。

また、意外かもしれませんが、地域の医師会に電話してみるのもいいと思います。常勤の職員さんが、地域の医師の情報を把握しています」

最期を自宅で迎えたいなら早めに見つけるべき

在宅療養を希望する人は、必要に迫られてからかかりつけ医を探すことが多い。だが、「そうなる前に、信頼できるかかりつけ医を見つけておくことも重要だ」と大橋医師は言う。

「訪問診療は自分の家の中に他人が入ってくることになるので、それまで信頼してかかりつけにしていた医師がそのまま訪問してくれるのが、患者さんにとってはいちばんです。ですから、自宅で最期まで過ごしたいと思うなら、早めに訪問診療もしてくれる医師を見つけておいた方がいい。

その際、地域のケアマネジャーさんや訪問看護師さんの意見は、非常に参考になると思います。『あの先生はしっかりやってくれる』といった情報を持っているはずですので、地域の各事業所に相談してみてください。そうすれば、訪問介護や訪問看護と連携の取れているクリニックを紹介してくれるでしょう。最期まで伴走してくれる体制を持っているかかりつけ医だと、患者さん自身も安心だと思います」(大橋医師)

信頼できる、かかりつけ医を見つけることが大事になる(写真/PIXTA)
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最期まで診てもらうとなると、しっかりコミュニケーションがとれるかどうかや、人となりも大切となってくる。濱口医師はこう念を押す。

「専門分野を問わず、治療をする前に必ずその根拠を説明したうえで、治療を開始する医師が優れた医師と言えます」

自分と相性の合うかかりつけ医を見つけるには、どんな点を見極めればいいのか。森田医師はこう話す。

「風邪をひいたとか、花粉症だとかなんでもいいから理由をつけて、とりあえず医師に会ってみるといいと思います。そして、しっかり話を聞いてくれるかどうかを確かめてください。電子カルテの画面ばかりを見て、全然話を聞いてくれず、患者の目すら見ない医師がいるという話をよく聞きます。

いい医師は患者さんの目を見て、ちゃんと話を聞いてくれるはずです。そして、患者さんの意思を尊重してくれる医師を探してください。患者さんの意見を聞かないで、医療的な『正解』を押し通そうとする医師も結構います。

医療は本来、患者さんが選択するべきものです。薬をのむのものまないのも、最終的には患者さんが決めること。いいかかりつけ医であれば、『治療を受けない』という選択肢も尊重してくれるはずです。医師の元を訪れるのは全然失礼なことではありませんから、自分に合ったかかりつけ医を真剣に探してください」

誰もがいつかは医療のお世話になるときが来る。最期まで自分らしく生きられるかどうかは、いい医師に巡り合えるかどうかにかかっているとも言えるだろう。あなたが住み、最期を迎える地で、ぜひ信頼できる「かかりつけ医」を見つけてほしい。

信頼できるかかりつけ医の見つけ方
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※女性セブン2025年3月13日号

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