
ここ数年続く猫ブームで、日本における犬の飼育頭数は減少傾向にあるという。そんななかいま、ジワジワと老若男女を虜にしているのが「大型犬」と「ミックス犬」。愛くるしい、まん丸でつぶらな瞳、そして思わずモフりたくなる魅力に迫った。
人気急上昇の大型犬「サモエド」とは?
20~30kgほどの大きな体は真っ白でふわふわの毛に包まれて、まさに“モフる”という表現がぴったり。そんな「サモエド」の人気はうなぎのぼりで、犬種別の飼育頭数(一般社団法人ジャパンケネルクラブの血統データに新規に血統登録され、血統証明書が発行された犬の頭数/ジャパンケネルクラブ調べ)は、2022年の279頭から2024年には450頭とジャンプアップ。ロシアにルーツを持ち、大型犬ながら温厚で人懐っこい性格が特徴だが、大型犬のため飼育はそう簡単でない。
そんな“サモエド欲”を満たす場所として人気なのが、「サモエドカフェ」だ。東京・原宿にある『サモエドカフェmoffu』には、10頭のサモエドたちが暮らしており、連日、海外からの観光客も含め多くの人が訪れる。自身もかつて4頭のサモエドを飼っていたというオーナーの薫田光洋さんが言う。

「もともとはロシアのシベリア出身で、サモエド族という狩猟や遊牧などを生業とする民族が飼っていた犬です。体重は成犬になると女の子で16~25kg、男の子で18~30kgにもなります。白くてふわふわの長毛を持ち、寒さに強いものの暑さには弱く室温は18℃くらいが理想です」
かつてロシアの地では、放牧されるトナカイを狼から守ったり、荷物をそりでひく使役犬として働いたほか、南極調査隊のメンバーとしても働いた。1911年に史上初めて南極点へ到達したノルウェーの探検家、ロアール・アムンゼンの部隊では約50頭のサモエドがともに探検し、アムンゼンと南極の地を踏んだという記録もある。
夏の間は家中クーラーフル稼働
実際にサモエドを飼っている人に聞くと、「たとえ冬でも暖房で暖かくしすぎないよう、低温に設定し注意している」「夏の間は標高が高い避暑地で生活するようにしている」「クーラーは家中つけっぱなし」など、サモエド中心の生活をしている人がほとんど。
口角がキュッとあがった表情は笑っているようにも見え、“サモエドスマイル”に魅了される人も多数。また、極寒のロシアで互いに身を寄せ合って温まっていたというエピソードもあり、人間にも怖がることなく近づいてくるため、癒し効果は抜群だ。
「愛想がよく、言うことをよく聞く賢さがあります。また、物静かで自我が少なく、性格的には飼いやすいものの、サイズが大きいので部屋にはある程度の広さが必要です。運動量も散歩は1日1~2時間必要。カフェの子たちはお客様との触れ合いで動き回っているので朝晩30分ずつの散歩をしています」(薫田さん)
まるでふわふわのぬいぐるみ
注目されているのは大型犬だけではない。小型犬、中型犬でいま話題なのが「ミックス犬」だ。異なる犬種を交配させて生まれた犬を指し、マルチーズとトイプードルの「マルプー」、チワワとミニチュアダックスフンドの「チワックス」などさまざまな犬種の交配のなかで、ポメラニアンと柴犬から生まれた「ポメ柴」が、SNSを中心に人気が拡散しつつある。
ドイツにルーツを持つ長毛が特徴のポメラニアンと、日本生まれで短毛の柴犬。歴史は浅く、飼育頭数はまだまだ少ない。都内のペットショップ店員が話す。

「ポメラニアンも柴犬も、どちらも人気が高い犬種ですが、ポメ柴はミックス犬のなかでも認知度はそれほど高くありません。YouTubeなど動画サイトで、柴犬由来の三角耳に、ポメラニアンが持つ丸い瞳がかわいいとファンが増えているようです」
ポメ柴は口元や耳が柴犬、毛と目はポメラニアンと両者の愛らしい特徴を継いでいる。大きさは小型犬であるポメラニアンと中型犬に分類される柴犬の中間くらい。成犬で体重が6~11kgほどになる。性格も、両者どちらの気質も流れているようだ。
「明るく社交的なポメラニアンと、頑固で飼い主に忠実な柴犬にルーツがあるので、気が強いものの、飼い主に従順な子が多い印象です。柴犬は猟犬としての性質もあり、飼い主以外の人間やほかの犬と仲よくなりにくい一面もあります。はじめに主従関係をしっかり教えておくことが大切です」(ポメ柴を飼ったことのある女性)
ポメ柴の魅力にハマる人からは、「たぬきのようなきつねのような愛くるしさがたまらない」「どちらかというと柴犬みたいな顔つきなのに、ずんぐりむっくりした体形とのギャップに萌える」「あまりにかわいいので、飼っているポメラニアンを柴犬風にトリミングしたらぬいぐるみみたいで癒し効果抜群」などの推しコメントが。
家族に迎えるなら責任感を持って
ペットを飼うことにより認知症リスクが低下するなど健康効果も明らかになっている。ただし、安易に飼うのは禁物。
「“ブーム”として注目されることもありますが、犬は生き物ですからブームが去っても命が危険にさらされるようなことがあってはいけません。これは犬全般に言えることですが、飼い主が5時間以上家から離れることが多いと不安を感じるようになります。
また、流行っているから飼ったけどうまくしつけられないから手放したいというかたも残念ながら少なくありませんが、言語道断です。犬にとって最善の暮らしができるよう責任を持って飼ってほしいですね」(薫田さん)
カフェで触れ合う、動画を見て画面越しに癒される―いまの時代は、そんな“沼り方”もいいかもしれない。
※女性セブン2025年3月20日号