
いま、日本の食卓を直撃している「令和の米騒動」。農林水産省が公表する全国のスーパー約1000店での米の平均価格は2月中旬に5kgあたり3892円を記録。これは前年同期の2044円の1.9倍という数字だ。現在では、店頭価格が5kgで5000円を超えるところも珍しくない。この難局を日本人はどう乗り越えていけばよいのか。【前後編の後編。前編を読む】
家庭でできる対策はあるのか
令和の米騒動の余波が続くなか、安全かつ安く米を手に入れる方法は何か。節約アドバイザーの丸山晴美さんが注目するのは「輸入米」だ。
「カリフォルニア米の『カルローズ米』はコストコや業務スーパーで購入できます。水分量を増やして炊けばパサつきが少なく、おいしく食べられます。以前は5kg1700円程度で、現在は値上げして同3290円ほどですが、国産と比べてまだ割安感があります」
また、「ふるさと納税」で米をゲットする手もある。米の流通や農業政策に詳しい宇都宮大学助教の小川真如さんはこう語る。
「返礼品として、米の定期便を扱っている自治体もあります。これから田植えの季節を迎えますが、米農家は需要に応じて田植えをします。秋の新米を手に入れるには、実はいまこそアクションを起こすべきタイミングなのです。いまのうちから『ふるさと納税』で予約しておきたいですね」(小川さん)

さらに、米不足への不安を解消する賢い手段が「直接買い付け」だ。節約ライターの三木千奈さんは、8年ほど前から農家から直接購入していると語る。
「スーパーで買うと5kgで6000円ほどのブランド米『つや姫』を、30kg1万1000円ほどで買っています。安いうえに、米を大量に確保できて一挙両得です」
ネットを活用すれば、直接農家とつながることも案外、容易だという。
「知り合いの農家に頼めればベストですが、いまはホームページやSNSで宣伝する農家も多い。早めにコンタクトして予約すれば、秋からの新米を買えます。春先のうちに確保しておきましょう。米農家の直売情報はネットにあふれています。そこでこだわりや人柄などを確認して、購入者の口コミなどもみれば農家の質を見分けられます」(小川さん)
また、日頃から農業体験や農村部へのパッケージツアーに参加して農業に親しみ、“目利き”になっておくことも有効だ。
一方で、フリマアプリやオークションサイトには注意したい。

「サイト経由で米を買うと害虫がついていたり、いつ精米したかわからなかったりすることも多い。米は、精米せずに玄米の状態で保管しておけば味はほとんど落ちませんから、個人から購入するときは必ず玄米を購入するようにしています。私は精米所で定期的に精米していますが、1万円ほどで売られている家庭用の精米機を使って自宅で精米する方法もあります」(三木さん)
購入した米を上手に保存して、できるだけ長持ちさせることも肝要だ。
「精米した米でも、洗浄したペットボトルに米を入れ冷暗所に保存しておけば、半年は味や風味を維持できます」(農業ジャーナリスト)
自治体のなかには住民の負担を軽減する支援策を打ち出すところもある。例えば香川県善通寺市は、65才以上の市民に1人あたり8800円分のお米券を配布する。住まいの自治体のホームページなどで確認しよう。
しらたきを刻んでご飯に混ぜる
実際の食卓ではどんな工夫をすればいいのか。まず、前出の丸山さんがすすめるのは「オートミール」だ。
「電子レンジなどで簡単に調理できるということでコロナ禍に流行しました。現在もそれほど値段は上がっておらず、レシピ本も多い。朝食をオートミールにすれば米の代わりになり、健康によくダイエットにもなります」

パスタなどの麺類も米の代わりになる。パスタは業務スーパーで500g120円で購入可能。またこの際、家に眠っているそうめんやそばなどの乾麺を引っ張り出してみるのはどうだろう。なかでもおすすめの麺レシピは、焼きそばだ。
「わが家では週に数回は、夕飯を値段が安くて手軽な焼きそばにしています。カット野菜を使えば安くて調理も簡単ですし、子供たちも喜んで食べてくれますよ」(三木さん)
米の消費量を抑えるためのかさ増しには、米と「麦」のブレンドが効果的だと丸山さんは語る。
「なかでも丸麦はプチプチした食感でおいしく、炊くと大豆くらいに膨らむのでお腹がいっぱいになります。納豆との相性がいいので納豆ご飯にするとおいしくいただけて健康的です。また、しらたきを刻んでご飯に混ぜて炊くとかさましできるうえ、カロリーは25%オフ。かなりヘルシーです」
ディスカウントストアや業務スーパーで購入した米が、独特の臭みがする古米の場合はどうすべきか。
「炒飯など、米自体に味をつけることもひとつの方法ですが、米1合に対しみりんを大さじ1入れたり、氷を入れて冷水で炊くと臭みが取れてふっくらします。また、古い米は水分が少ないので、保温時間が長いとカピカピになってしまいます。一度に食べる分だけ炊くのがコツです」(三木さん)

古来、日本人が親しんできた「いも」も重宝する。
「じゃがいもを使ったポテトサラダやコロッケなどのいも料理はお腹にたまるので、米の消費量を抑えられます」(丸山さん)
お米を使ったおすすめレシピは、炊き込みご飯やドリアだ。
「きのこ類を使った炊き込みご飯は栄養満点。ドリアは、ホワイトソースやチーズをふんだんに使えば、米は底にならす程度の量ですみます」(三木さん)

最後に、長期的には日本の米をめぐる状況はどう変化していくのだろうか。小川さんが解説する
「昨今の地球温暖化で雑草や害虫の発生リスクが増し、コストアップと品質の低下が懸念されています。生産適地が北上して、北海道での稲作がさらに盛んになり、西日本の稲作は衰退するなど、産地の変動が加速するかもしれません。ただし、産地が偏ると、その地域が災害などに見舞われた場合、米の生産量全体が大打撃を受ける危険性があります」
産地だけでなく、品種にも変化が生じ、「コシヒカリ一強時代」も終焉を迎えそうだという。
「冷害が原因だった平成の米騒動では寒さに弱いササニシキが大打撃を受けました。以降、コシヒカリが米のチャンピオンになりましたが、酷暑が原因の令和の米騒動では暑さに弱いコシヒカリの弱点が露呈しました。今後も温暖化が続くなか、コシヒカリに代わるブランド米が人気になる可能性があります」(小川さん)
すでに政府は2027年にかけて水田維持や減反政策の大幅な見直しを予定しているが、米の値段が5kgで3000~3500円に落ち着くには、2年近く必要との分析もある。食卓を守るためには米があるのが当たり前と思わず、賢く上手に工夫する必要がある。
(了。前編を読む)
※女性セブン2025年3月20日号