マネー

【実家の始末という問題】価値は下がって維持費もかかる…空き家を持つことのリスク 理想は「親が生前のうちに処分できるもは処分する」

相続した実家を空き家状態にすることでリスクが高まる(写真/PIXTA)
写真7枚

相続は、“老後の大仕事”である。一般家庭こそ“争続”が起こりやすいことを実感している人も多いだろう。とりわけ、手続きが複雑な不動産相続や、誰も住まなくなった実家の始末は「相続の壁」になりやすい。だからこそ、失敗と損をしないための家族会議が必要なのだ。【前後編の後編。前編から読む

実家の始末の決断を先送りすることで増えるリスク

不動産の相続には「空き家」というリスクもある。RICS代表で実家じまいコンサルティングの金石成俊さんが語る。

「問題を先送りにすることは避けた方がいい。いま多いのは築50年前後の木造2階建てで、高度経済成長期に団塊の世代が一生懸命働いて建てた家たちです。団塊世代の持ち家率が全国で85%超ですから、団塊ジュニア世代でいうと約9割が“親に持ち家がある”ということ。でも少子高齢化で人口は減少して、家を買う人は少なくなりますから家の価格はどんどん安くなります。

相続した地方の実家など、“誰も住まないから手放さなければ”とわかっていながら、気持ちの整理がつかず問題を先送りにすると、家がどんどん傷んで雨漏りしたり空き巣に入られたり動物がすみついたりします。

すると相続直後なら1000万円の値が付いた物件が200万円でも売れなくなったりする。問題を先送りにすることで本来得られたはずの利益を得られなくなるんです」

実家の始末を先送りにすると多くの問題が生じる(写真/PIXTA)
写真7枚

2023年に改正空家特措法が施行されて、空き家を持つリスクはさらに増した。ベリーベスト法律事務所の弁護士・齊田貴士さんが語る。

「法は、窓や屋根が壊れるなどした空き家を『管理不全空家』と定め、これに指定されると固定資産税の軽減措置が適用されません。また、周辺の生活環境を保全するため、放置することが不適切な『特定空家』は、最終的に自治体が行政代執行で解体できるようになりました」

2017年に、25年間管理し続けた実家を「しまった」タレントで歌手の松本明子(58才)も、“早く決断すべきだった”と後悔したという。

タレント・歌手の松本明子
写真7枚

「香川県高松市にある実家は、私が幼稚園児の頃に父が建てた“夢のマイホーム”。父の思いも、家族の思い出もたくさん詰まった家でした。1983年にデビューして、仕事が軌道に乗った頃、高松から両親を東京に呼び寄せて一緒に暮らし始め、実家は住人がいない空き家状態に。それでも、“老後に香川に戻るかもしれない”“明子の仕事もいつどうなるかわからないから家があった方が安心”だと、家族全員誰も“家を始末しよう”とは考えもしませんでした」(松本・以下同)

それから処分するまでの間、松本は維持管理を担った。固定資産税や火災保険のほかに、水道光熱費や、建物が朽ちないよう雨漏りの修理や庭木の剪定など、かかった費用は25年間でざっと1800万円。

「父は生前から、“家のことは明子に任せる”と言ってくれてはいたのですが、亡くなる間際に“実家を頼む”と言われてしまって。なかなか手放すことができず、決断を後回しにしてしまったんです」

息子の成長に伴い、“自分がきちんとたたまなければいけない”と決意。しかし、売却に向けた査定で現実をつきつけられた。

「査定金額はなんと200万円。しかも上物は0円で、土地価格が200万円でした。取り壊して更地にすれば売れるかもと言われましたが、解体費用は300万円とマイナスになってしまう。途方に暮れて空き家バンクに相談し、広く募集をかけてもらったところちょうど家を探していたかたと出会い、580万円ほどで購入いただいた。

リフォーム済みできれいに管理されていたのでと即決してくださり、25年間の維持管理は無駄じゃなかったかなと報われました」

実家を含めた不動産については家族会議をして遺言書を残す

放置するととんでもないことになりかねない実家をどうすればいいか。最初に考えるべきなのは「保有する」もしくは「手放す」の二者択一であると金石さんが話す。

「保有するのであれば、リフォームして人に貸すなどの方法がありますが、築年数が古い物件は家賃から修繕費の投資回収が可能か検討が必要です。手放すのであれば、建物を残したまま手放すのか、それとも建物を壊して更地にするのかというように、そこから先の選択肢が分かれていきます。家をそのまま手放すなら不動産業者、建物を壊すならハウスメーカーなど、相談先が変わります」

実家を保有するか手放すかを決める際は、不動産の資産評価も参考になる。税理士の前田智子さんが解説する。

「ネットで家がある住所の路線価を調べると、おおよその地価を知ることができます。実際に売れる金額を査定するのは不動産業者ですが、彼らは自らが仲介したいため、実際の相場よりも高めの査定額を出し、売り出してもなかなか買い手がつかないケースが少なくない。査定する場合は1社だけでなく複数の業者の見積もりを取って、大体の相場を把握する必要があります」

周囲に危険が及ぶ空き家の処理は、自治体の「代執行」(所有者の代わりに適正管理)も可能(時事通信フォト)
写真7枚

熟慮を重ねて実家を手放すことを決意した場合、まずは親からの名義変更を行って、家の中を片づける。続いて家を壊す場合は解体、測量へと進む。

「意外とハードルが高いのが片づけです。実家から離れて住んでいるとなかなか片づけられず、荷物が多すぎて遺品整理業者に頼むケースが多い。しかし、作業員による窃盗や請求トラブルが絶えません。多店舗展開していて信頼できる業者を選ぶのがベターでしょう。解体に補助金を出す行政もあるので、事前に自治体のホームページなども調べましょう」(金石さん)

核家族化が進むなか、子供たちが誰も住まない家は都市部で空き家になる可能性がある。こうした不動産の取り扱いは一般人には判断が難しい場面も多く、プロの手を借りるのも手だ。

「弁護士は一般的な相続業務のほか、相続財産の管理や運用、相続税対策に精通しており、トラブル防止やスムーズな相続に役立ち、税理士も相続税に精通しています。また行政書士は相続手続きにおいて書類の作成や調査などを行うことができます」(齊田さん)

何より大切なのは、空き家問題についても親が元気なうちに家族会議を開いて、方向性を話し合っておくことだ。太田さんが言う。

「将来的に誰も住まない家についても腹を割って話しておけば、子供の方から『じゃあ生前に処分しておいてよ』という話にできるかもしれません。理想的なかたちは、親が生前のうちに処分できるものは処分して、なるべく子供たちに負担をかけず引き継げるようにすることです」

松本が振り返る。

「私ももっと早く、父が元気なうちに実家をどうしたいか、どうしたらいいか話し合っておくべきだと痛感しました。両親が存命のうちに決断できていたら、思い出を振り返りながら一緒に実家の整理もできたのにという思いもあります。切り出しにくいテーマですが、私の経験をきっかけに家族で話し合ってもらえたらうれしいですね」

会議で導かれた「答え」は、遺言書として残しておきたい。

遺言書は有無で相続トラブルが回避されることもある(写真/PIXTA)
写真7枚

「本人が遺言書を書きたいと思うことが重要です。財産の配分が決められず遺言が進まないのはよくあるケースですが、遺言書は書き直しもできるので、最初は思い切りよく書いてみてもいいでしょう」(前田さん)

的効力を持つ遺言書には大きく分けて、本人が自筆でまとめる「自筆証書遺言」と、公証役場で公証人に作成してもらう「公正証書遺言」がある。

「公正証書遺言の方が確実ですが、公証人などに支払う報酬が気になるなら自筆で書きあげることをおすすめします。もしも遺言書を書くのが大変なら、エンディングノートに書き留めるだけでも大きな意味があります。法的には成立しませんが、ノートを見た子供たちが親の気持ちに沿った遺産分割をしてくれることが期待できます」(前田さん)

多くの人にとって、不動産は人生で最も高価な買い物であり、不動産相続も一世一代の事業になる。それだけに無事に次の世代に渡すのか、あるいはひと区切りをつけるのか──人生最後の大仕事は、まだ元気なうちから始めておきたい。 

空き家の数は年々増加している
写真7枚
「家族会議」では土地の概算価格も算出しておこう
写真7枚

(前編から読む)

【プロフィール】
松本明子(まつもと・あきこ)/1966年、香川県生まれ。1982年、『スター誕生!』(日本テレビ系)での合格を機に、1983年に歌手デビュー。『電波少年シリーズ』(日本テレビ系)などで幅広く活躍し、2022年に『実家じまい終わらせました!』(祥伝社)を上梓。今夏には所属するワタナベエンターテインメント25周年を記念した「ワタナベ25thコンサート」(6月18~22日、東京国際フォーラム)に出演予定。

※女性セブン2025年3月27日・4月3日号