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私たちはどうして「タイプロ」に熱狂したのか 「選ぶ側の葛藤にもフォーカス」「アイドルの華やかさとのギャップ」…ハマった人々が明かすその魅力

「選ばれる側」ではなく「選ぶ側」の葛藤にフォーカスしていて魅了された

課題を与えられた候補生のパフォーマンスを菊池、佐藤、松島とダンストレーナーのNOSUKEさん、ボイストレーナーの宮本美季さんが指導・審査したタイプロ。アイドル好きの若い世代だけでなく、老若男女問わず番組に熱狂した。

「股関節の手術から退院後に配信を見始めたら、止まらなくなりました」

そう語るのはお笑いコンビ・空気階段の鈴木もぐら。

「全体としてスポ根作品で、ドラマ『スクールウォーズ』や『ルーキーズ』(ともにTBS系)を見ている感覚になり、熱にあてられて4回泣きました。学生時代、スタート社のタレントは顔がいいからモテるのだと思っていたけどタイプロを視聴して、あれだけ努力して見せ方を考えて何百人もいるなかから勝ち抜くなんて、そりゃモテるはずだなと思いました。ぼくの妹は昔からスタート社のタレントのファンですが、あれだけ一生懸命やっている人たちなら人間的に信用でき、兄として“妹よ、ハマっていいぞ”と強く思いました」(もぐら)

コンビでタイプロにハマった空気階段は、メンバーとの共演もある。もぐら(左)は菊池について「年下だけどいい兄貴」として尊敬している(右は水川)
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3人とはドラマなどで共演経験もあるもぐらだが、なかでもドラマ『ゼイチョー~「払えない」にはワケがある~』(日本テレビ系)で共演した菊池の奮闘に目を奪われたと語る。

「ぼくが何度かドラマの撮影に遅刻して現場の空気が悪くなったとき、風磨くんが“もぐらさん、叙々苑入れるしかないっしょ”と声をかけてくれて、それを機にぼくが叙々苑弁当を70個差し入れしてスタッフと和解し、空気がよくなりました。20万円かかりましたが風磨くんの気遣いはいい兄貴という感じで、お金以上の価値があった。

風磨くんは常にカッコよく明るくて余裕がある印象ですが、タイプロでは自分がプロデュースしたグループの候補生が落選して、そのメンバーたちに“自分のせいだ”と泣きながら謝っていたんです。彼の人間としての本質が見えた気がしてとても感動しました」

同じくコンビでタイプロにハマった空気階段の水川かたまりはこう言う。

「もぐらの言うとおり、タイプロは完全なスポ根で、アイドルの華やかさとは真逆のギャップにもっていかれました。ぼくが初めて脚本を書かせてもらったドラマで佐藤勝利くんとお仕事を一緒にやらせてもらえた縁で、Sexy Zoneのコンサートも何度か見に行っていたからこそ、それまでの彼らとは違う新しい一面に驚きも感じましたね。

自分も番組やライブのオーディションを経験しているので、あのドキドキ感は自分事のようでした。怒られた後に、人を楽しませようとするのって本当にキツいので、すごいことやってるなと、まさに手に汗握る感じで見ていました」

文芸評論家の三宅香帆さんは、自身の世代で圧倒的人気を誇ったSMAPや嵐の活動をリアルタイムで見ていたがゆえにtimeleszには詳しくなかったが、「選ぶ側の葛藤」にも魅せられたと語る。

「これまでのオーディション番組は候補生の喜怒哀楽を描くことがほとんどでしたが、タイプロは選ぶ側の葛藤にもフォーカスしていておもしろかった。選ぶ3人の人柄がどんどん見えてきて、そっちのファンになるオーディション番組はあまりなかったと思います」

当初、三宅さんは新メンバーになった橋本を応援していたが、最終的には松島の推しになったと続ける。

「松島さんはシンプルに、いつ見てもきれいで肌がきめ細かいことにも魅かれますが、アイドルの職業人としてのプロフェッショナルな部分を担保しつつ、候補生の心のケアをするバランスがすごいなと思った。候補生に苦手なことを課しながら上手にコミュニケーションを取る松島さんは“教育者”だなと感じて、どんどん好きになりました」

3人体制時のSexy Zone。松島はSexy 松、マリウスはSexy Boyzだった
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本誌『女性セブン』で『山田EYEモード』を連載している放送作家の山田美保子さんもタイプロにハマったひとり。

「リーダーシップを取って候補生に本気で物申す3人と、それに応じようと自分の枠組みを取っ払ってがんばる候補生の姿が徐々に見えてきて、スポーツ合宿を見ているようなドラマ性がありました」(山田さん・以下同)

審査はサバイバル方式で進み、4次審査からジュニア出身で、スタート社の俳優部に所属する寺西と原が参加した。「彼らが加わって審査が引き締まった」と山田さんは指摘する。

「あの2人はレッスンを積んで舞台やドラマで活躍していて、ほかの候補生とはスキルが全然違いました。外部の人間ばかりでなく、“事務所イズム”が刷り込まれている2人が最後まで残ったことには大きな意味があった。

私は『国民の元カレ』と愛された寺西くんを10年以上前から応援していました。彼はグループやユニットの経験がなく、ずっとひとりで舞台俳優をがんばっていました。そんな彼が、実はグループに入ることを切望していたことを知って、ビックリして“がんばれ! 絶対に落ちないで!”と必死に応援しましたね」

当初はオーディションに反対だったが、候補生たちの成長を見て心変わりしたファンも少なくない。都内在住の主婦・Mさん(58才)が言う。

「最初はtimeleszの3人と見合う一般人がいるとは思えなかったので、どうせ話題づくりで“合格者なし”のオチかなと冷ややかに見ていましたが、頼りなかった子たちがどんどん洗練されていく様子に目が離せなくなりました。心が折れそうになるメンバー3人を見て、“その気持ちわかるよ”と感情移入もした。住む世界は違えども、挫折感を共有した気になりました」

選ぶ側と選ばれる側がぶつかり合って生まれる熱気―それにあてられてハマっていった人たちは、口々に言う。

「男と男の真剣勝負という感じがした」(37才女性)

「がんばるのはダサいことではなく、カッコいいことだと思わされた」(58才女性)

「久しぶりに熱い気持ちになれた」(70才女性)。

やらせでも、話題づくりでもない、アイドル生命を懸けた「本気」が熱狂を生んだのだ。

timeleszの歴史
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(後編へ続く)

※女性セブン2025年4月10日号

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