学び直しによるキャリアアップを後押しする新制度が続々 最大80%まで受講料が戻る厚労省指定の「教育訓練講座」、10月に創設予定の「教育訓練休暇給付金」では生活費支援も

体力も、記憶力も衰えてはいるけれど、積み上げてきた経験は一生もの。そこに新たな「学び」を合わせれば、若者に負けない武器になる。何才になっても自分の足で歩き、自分の手で稼ぐ──生涯現役社会が実現しつつあるいま、私たちが目指すべきは「稼げるシニア」だ。【全3回の第1回】
高年齢者雇用安定法の改正により、この4月1日から、「65才までの雇用確保」が完全義務化された。企業は「65才までの定年引き上げ」「定年の廃止」「65才までの継続雇用」などの選択をしなければならない。
自分の力で働いて稼ぐ「職業人生」が長期化しているいま、年齢を理由にリタイアするのはもったいない。何才からでも「学び直し」によっては、これまで以上に稼げるセカンドキャリアを手にすることも不可能ではない。早期退職などで“新しい人生”を歩みたいという人も増えている。
事実、国もそれを強く後押ししており、4月1日からは「自己都合退職者の給付制限」が見直されている。社会保険労務士の井戸美枝さんが解説する。
「これまでは、自己都合での退職の場合は“ペナルティー”として、いわゆる失業手当(雇用保険の基本手当)には、給付まで2か月かかる給付制限がありました。これが、1か月に短縮されたのです。
さらに、厚生労働省が指定する『教育訓練講座』を受けた場合は、給付制限が解除され、失業手当を受け取れるようになった。教育訓練講座には給付金もあるため、学び直しでキャリアアップしたい人にとって、大きなメリットです」
指定されている教育訓練講座は現在約1万7000種もある。難易度が低い順に「一般教育訓練」「特定一般教育訓練」「専門実践教育訓練」の3区分に分かれており、受講費用の一部が給付金として返ってくるのだ。
「昨年10月からは、もっとも難易度の低い『一般』を除き、給付率がアップしました。『特定一般』は最大50%、『専門実践』は最大80%まで受講料が返ってきます」(井戸さん)
10月からは「教育訓練休暇給付金」も創設予定
さらに、10月からは「教育訓練休暇給付金」が創設予定。働きながら教育訓練を受ける際に無給の休暇を取得した場合、その間の生活費が支援されるのだ。プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんが説明する。
「雇用保険の被保険者期間が5年以上ある人を対象に、期間が10年未満なら90日、10年以上20年未満なら120日、20年以上なら150日を上限に、失業手当と同じ金額を受け取ることができるようになります。
正社員だけでなく、週10時間以上働くパートやアルバイトも対象です」
同じく10月からは、週の労働時間が20時間以下などで雇用保険に加入していないフリーランスや個人事業主、離職中の人(失業保険を受給していない人)など一定要件を満たす人を対象に、教育訓練費用や学び直し期間中の生活費の「融資制度」もスタートする見込み。
「月10万(年間120万)円を上限に、最大2年、利率は年2%。訓練修了後に就業できて賃金が上がれば、残債が減額される措置もあります」(三原さん)
雇用保険に入っておらず失業手当などを受けられない人でも、お金を借りて学び直しができるようになる。在職中、離職中にかかわらず、どんな人でも学び直しにチャレンジして、収入アップを目指せる環境が整いつつあるのだ。

(第2回に続く)
※女性セブン2025年4月24日号