健康・医療

《選んではいけない整形外科のかかりつけ医》「いつまでも通院させる」「診療せずリハビリ」「痛みの原因を徹底的に調べない」…見分け方を医師が解説

タブレットで骨について説明する医者の手元
65才以上の女性にとってかかりつけの整形外科医は必要度が高い(写真/PIXTA)
写真9枚

厚労省によると、65才以上の女性において“自覚症状のある不調”の1位は腰痛、2位は手足の関節の痛み、3位に肩こりがあがった(2022年)。年を重ねるほどに、「痛み」とのつきあいが増え、悪化すれば寝たきりや認知症の発症・悪化など心身への大きな影響があるので、整形外科のかかりつけ医はどうしても必要だ。しかし、絶対に選んではいけない医師がいる。

持病を知らないのに薬を出すのは危険

階段の上り下りでひざが痛くなる、長時間歩くことができない、肩が痛くて腕があがらない―「歩くこと」が健康にいいとわかっていても、それが叶わず、整形外科の門を叩くことは、シニアにとって避けられないことだ。戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝さんが言う。

骨の模型で患者に説明する医者の手元
かかりつけの整形外科選びは老後の生活を送るうえで極めて重要(写真/PIXTA)
写真9枚

「加齢によって軟骨がすり減ることで、ひざ、腰、肩の痛みを訴えて受診されるかたが大多数です。ゴルフやテニスで痛めた、転んだなど原因が除去しやすければ数回の治療ですみますが、デスクワークなど長年の環境によるものや加齢変化が原因で起こる痛みの治療は継続を要するため、かかりつけの整形外科選びは老後の生活を送るうえで極めて重要といえます」(戸田さん)

整形外科を受診する場合、まずチェックすべきは「専門医がいるかどうか」だと言うのは、日本整形外科学会専門医の歌島大輔さんだ。

絶対に選んではいけない整形外科医「チェックリスト」
絶対に選んではいけない整形外科医「チェックリスト」
写真9枚

「整形外科に限らず、医師免許を持っていれば、麻酔科と歯科以外は診療科の標榜が自由にできます。したがって、整形外科の専門でなくとも看板を掲げられる。近年では専門医制度が整備されてきたため、整形外科学会に所属している専門医であるかどうかを確認しましょう」(歌島さん)

痛みは人によって感じ方が異なる。だからこそ医師は、どこがどのように痛むのか患者から丁寧に聞きとらなければ原因がわからず、治療もできない。

「なぜ痛くなったのか、きっかけをきちんと聞くのはもちろん、既往歴の有無や、別の病気で治療中かどうかなど詳細な問診が必要です。“自分は内科医じゃないから”と、既往歴を聞かない医師もまれにいますが、薬を処方することもあるので持病を知らないのは危険。痛み以外の体の状態を知ろうとしない医師は避けた方がいい」(歌島さん)

戸田さんも続ける。

「発症の時期や、どんな動きで痛むのかを詳しく聞かないのは論外です。関節の痛みは外傷がない場合にも多いので、しっかり問診をしなければいけません」(戸田さん)

診察中は医師の動きにも注目したい。

レントゲンを持つ医者の手元
レントゲンを撮ったら痛みを伝えた箇所以外もしっかり診てくれる医師がいい(写真/PIXTA)
写真9枚

「患者さんから聞いたことをきちんとカルテに記入しているか確認してください。もし、診察中に既往歴について聞かれなくても、問診票に記入した内容を見ながらカルテに書いていればまだいいですが、聞きもしない、書きもしないというのは絶対にNG。患者さんの目を見て話さない医師も避けましょう。

また、レントゲンを撮ったら痛みを伝えた箇所以外もしっかり診てくれる医師がいいですね。骨の腫瘍やがんの転移など、レントゲンにはいくつもの情報が映し出されます。よく診察もせずに“異常ないね”と言う医師は信用できません」(歌島さん)

注射のための通院は疑問

加齢による痛みは根本的な治療が難しいものの、あまりにも長引く場合には、疑問を持った方がいい。

ひざに注射を打とうとする医者の手元
注射のための通院には疑問を持つべき(写真/PIXTA)
写真9枚

「シニアのかたで多いのが変形性ひざ関節症や、変形性股関節症です。いずれも、女性ホルモン減少による骨密度低下が一因となるため、40~50代の女性が発症しやすい。出産の影響による骨盤の広がりが変形性股関節症を発症させやすいともいわれています。
治療としてはヒアルロン酸ナトリウムという関節内注射が一般的で、2週間おきに5回打つと厚労省が指針を出しています。にもかかわらず、リハビリという名目でいつまでも通院させたり、慢性的に薬で治療したりする医師もいる。治療をしている中で、効果があったかどうかをきちんと確認しない医師は選ばない方がいい」(戸田さん)

女性に多い「変形性股関節症」は放置すると悪化!ということを説明するイラスト
女性に多い「変形性股関節症」は放置すると悪化!
写真9枚

歌島さんも、治療の見通しを説明せずに続ける医師はよくないと指摘する。

「“もう何か月も注射のために通院しています”“痛みを伝えるとすぐに注射を打たれます”という患者さんの声を聞くことがありますが、それは好ましくない。効果や持続性について検証したうえで、今後どのくらい続けなければいけないかを患者と共有せずに、“とりあえず”治療が続いている状態ならば、医師に疑問を伝えましょう」(歌島さん・以下同)

筋肉に電気刺激を与える、血流を促進するといった目的で電気治療が行われることもあるが、これも慢性的な通院の温床になっているケースがある。

「簡単な診察だけで電気治療を行い、“痛み改善のためできるだけたくさん治療を受けてくださいね”と電気治療を繰り返すパターンです。電気治療とひとくちに言っても機器はさまざまで、いずれもエビデンスがあるかというと難しい。さまざまな診療ガイドラインにおいても、電気治療が推奨されているケースはほとんどありません。

ただしリスクが少ない治療であり、効果を感じる人もいます。大事なのは、効果を実感しないと申し出た場合に、別の治療法をしっかり提案してくれる医師かどうかが見極めるポイントになるでしょう」

注射や薬でも症状が改善されない場合、別の病気の可能性を考えるべきだと、戸田さんは続ける。

「診察時のレントゲンや血液検査の結果を見比べるなどして、別の専門医や総合病院に紹介状を書いてくれる医師は信頼できます。このように毎回の些細な変化に気づけるかかりつけ医がいると、病気の早期発見にもつながります」(戸田さん)