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遺言書は“落とし穴”だらけ 「書いておけば安心」「開けたら無効」「書き直せない」「きょうだい間では相続権がない」はすべて誤解 知っておくべきルール 

不動産は贈与するより相続まで待つ方がいい

もっともトラブルが多いのが不動産の相続と贈与。

「名義変更が大変だから、不動産は早めに贈与しようと考える人もいますが、贈与による名義変更費用は相続の5倍かかるといわれており、受け取る側は取得税もかかるので、相続まで待つ方がいい」

また、“実家で親と同居している自分には居住権があるから、自宅をもらえる”と思う人も多いが、「居住権と所有権は別物なので、相続時には優先されません」(曽根さん・以下同)というから要注意。

実家や賃貸物件、農地などに対する親族間の意識の違いも無視できない。

「“家は代々引き継ぐもの”“賃貸物件を持っていると節税になる”とは限らず、もらう側にとっては、自分は住まないのに維持費や固定資産税ばかりがかかる負動産になる場合も」

相続開始7年前までの贈与は「課税対象」
写真4枚

不動産の管理責任は、相続放棄すれば手放せるわけではない。

「相続人全員が相続放棄しても、その家に住んでいた場合などは次の管理者に引き渡すまでは管理責任があり、固定資産税を払う義務もあります」(明石さん)

不動産でなくとも、相続放棄の手続きはそう簡単ではない。「相続しません」と手紙を出したり、口頭で伝えるだけでは、放棄したことにはならない。

「相続を知ってから3か月以内に、放棄を申し立てる側の戸籍謄本や被相続人の戸籍附票などを集めて提出する必要がある。

借金などの負の財産だけを放棄して、それ以外は受け取れると思っている人もいますが、相続放棄とは、すべての財産の相続権を手放すことであり、権利を持ったまま何も相続しない“遺産放棄”と同じではありません」(曽根さん)

一方、相続放棄すると死亡保険金がもらえないというのは間違い。死亡によって発生する保険金は「遺産」ではないからだ。

人生の最期にかかる数百万〜数千万円のため、正しい知識で、できる準備を進めておきたい。そうでなければ、自分自身、そして家族にも後悔が残ってしまうことになりかねない。

※女性セブン2025年6月5・12日号