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《お金持ちかバックに団体がついてないと厳しい》元TBS高野貴裕アナ「選挙出馬」で味わった“厳しすぎる現実”「怖い、本当に怖い」(前編)

都議選に挑む高野さん。
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今年1月末、22年務めたTBSを退職した元アナウンサーの高野貴裕さん(45才)は、セカンドキャリアとして政治の世界への挑戦を選択。高野さんは、実生活では妻の女優・星野真理(45才)と一緒に、先天性ミオパチーという難病と闘う9才の娘を育てるパパだ。

6月に予定される東京都議選。都民ファーストの会(以下、都民ファ)・公認候補として選挙に挑む高野さんに、決断の背景や慣れない政治活動、そして家族の反応を聞いた。前後編の前編。

政界挑戦の決断は

――政治活動の手応え、反響は?

「最初にやってみて思ったのは街頭演説って誰も聞いてくれていないんじゃないかと。駅前に立ってチラシを配り、演説をしていても、なかなか手ごたえはないんですよね(笑い)。

中には近寄って来てくれて『頑張れよ』と声をかけてくださる方もいますし、チラシを受け取ってくれる方もいます。ただ、僕もそうでしたが、圧倒的大多数はスルーしていく。その現実に直面したときに、やっぱり、みんな『政治に関心ないのかな』と思うし、あとは『諦めているのかな』と思うこともあります。

僕はアナウンサー出身なので、“伝えるためのひきだし”は人よりも多い。街頭では、とにかく小学3年生にも伝わるような言葉で語りかけるように意識しています。わかりやすい言葉だとみんな、意外と耳を傾けてくれたりしますね。小話として、生活情報をちょっと入れるのもコツです。天気の話とかランチの話とか」

――以前から、政治の世界に挑戦したいと思っていた?

「実は、自分でも想定外の挑戦でした。あれよあれよという間に整ったお話でして。きっかけは、都民ファの先輩で渋谷区選出の龍円あいりさん(48才)との出会いでした。

うちの子供は障害をもっていて、自分で自分の体を支えることができません。そのため、公園で元気いっぱいに遊ぶことも難しかったんです。でも、東京・世田谷区にあるの砧公園は例外です。砧公園は“インクルーシブ公園”の設備を整えていて、車いすのまま遊べる遊具があり、障害がある子も障害がない子も、誰もが安心で安全に利用できるんです。インクルーシブ公園には、ユニバーサルデザインといって障害児や障害がない子、みんなが安心安全で楽しめるような遊具があるんです。

高野さんと娘さんのふうかさん。
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例えば、車いすユーザーがブランコに乗るのは難しいですよね。でも、ユニバーサルデザインの遊具は、麻痺を持っていて座り位置を保てないような子でも遊べるように、円盤型のブランコになっています。他にも、車いすのまま、ジャングルジムのような大型遊具を“上り下り”することもできます。敷地内には人工芝や柔らかい素材のタイルが敷いてあるなど、そういうちょっとした安全への配慮が出来ている公園が、インクルーシブ公園なんです。

こうした公園整備の提案をしてくれたのが龍円さんだということを知り、去年の夏ぐらいにたまたまきっかけがあって、『娘と楽しませていただきました、ありがとうございます』という気持ちを伝えたくて、食事をご一緒させていただいたんです。

そこでは、砧公園のことで感謝を述べつつ、娘を育てる上で福祉に支えられた反面、利用者だからこそ目についている課題もお伝えしました。そうしたら、龍円さんから『だったら一緒にやりませんか?』というお言葉をいただきまして。そこから半年ぐらいで、あれよ、あれよと」

政治活動に退職金を全部突っ込んでいる

――会社を辞めるときは、政界進出の気持ちが固まっていた?

「はい。決めた上で、人事に相談しました。会社は『辞めてくれるな』と引き留めてはくれたのですが、いま45才で、新しいチャレンジをするには最後のチャンスかなと思い、決断しました。

選挙に出るには、社員のままでは難しいというのが結論でした。一般的には、社員の政治活動は基本OKだとは思うんですが……TBSは報道機関ですからね。忸怩たる思いで勤め先を辞めました。僕は政治がおじいさん、おばあさんだけのものになってしまうのはよくないと思っています。だから、現役世代で声を上げられる人は動いた方がいいのかなという気持ちもあり、僭越ながら、チャレンジさせていただいたということです。

22年務めたTBSを退社した。
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ちなみに、出馬を決めて実感しましたが、選挙にはお金がかかりますね。みなさんご存知ないかもしれませんが、政治活動は自腹なんです。政党にもよるとは思いますが、公認候補とはいえ都民ファからのバックアップはほとんどありません。。数十万円程度の補助があるだけで、これには驚きました。もちろん、新人の公認候補に対しては、知見がある方、経験がある方が現場に来てくれて一緒にチラシのポスティングを助けてくれたりはしてくれますが、やはり大変です。

テレビ局で22年間キャリアを積んできて、退職金を全部突っ込んでいる状態です。現在は無職ですし、怖いですよ。本当に怖い、もし当選しなければどうしよう?とも思います。だから、不退転の気持ちで、背水の陣ですよ。

ここまでしないと政治活動が出来ない世の中ってどうなのかなとは思います。本当に世の中を変えたい、明るい生活、社会を整えたいと立ち上がった人間が、こういった状況に直面するんだってことを初めて知りましたし、厳しいですよね。

親子で屋外に繰り出して遊ぶことも多い。
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ちなみに選挙区によっても、かかるお金がまちまちなんですよ。というのも、世帯数が違うじゃないですか。僕が立候補する世田谷区は人口93万人なんです。そうなると、配布するチラシの量もかなり多くなります。やはり昔からの地盤を継いでいる人や、よっぽどのお金持ち、バックに大きな団体がついている方とかではない限り、厳しいと思います」

 

(後編に続く)

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