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水道水だけじゃない…家の中の「PFASほこり」のリスク 家具やカーテンなどの“表面加工”に含まれる化学物質が揮発しほこりと付着、衣服や電化製品から放出される可能性も

家庭内にあるさまざまなものから「PFASほこり」は生まれる(写真/PIXTA)
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特にプラスチック類の危険性を指摘するのは木村-黒田さんだ。

「プラスチック製品には、劣化防止のための紫外線吸収剤や安定剤などさまざまな添加剤が使われていますが、これらには内分泌撹乱作用(内分泌に影響を与え、正常な働きを乱す)や有害性が報告されている化学物質があります。しかし、それら化学物質がプラスチックの中に、何がどれくらい入っているかは“企業秘密”として明らかにされません。

紫外線はプラスチックを劣化させてもろくさせるので、日当たりがいいところに置き続けているプラスチック製品からは、より有害物質を含むほこりが出ているかもしれません」

しかも、「PFASほこり」は水道水より身近なもので、摂取しやすいともいえる。原田さんが続ける。

「ハウスダストに含まれるPFASについては2003年頃から調査がされていました。大阪の研究所の調査ではPFOSとPFOAが、1g当たり合わせて平均500ng入っていたと報告されています。乳幼児であれば1日50?ng口にしていたと推計されます」

冒頭で述べた通り、水であれば1L当たり50ngを超えれば「汚染」とされる。単純比較はできないものの、報告の通り、ハウスダスト1g当たり500ng含まれているとすれば相当な量だ。

子供への影響が懸念される研究結果

木村-黒田さんはPFASほこりが体に入る危険をこう指摘する。

「ほこりは鼻から吸い込むと肺経由ですぐに血中に入り込み、全身を循環します。口から取り込む経口経由では肝臓で解毒されるので、毒物を肺から取り込む経気経由はより危険性が高いと考えられます。また、ほこりの中に含まれる、大きな粒子は肺内部にたまるかもしれません」

ひとたび吸い込んでしまえば、さまざまなルートで私たちの体内に吸収される。特に小さな子供への影響が懸念される。

PFASほこりが体に入ると非常に危険(写真/PIXTA)
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「新生児や子供は、体内に備わっている生理的化学物質(ホルモン)や外部からの情報を受け取って発達していきます。子供には特定の機能や能力が最も効率的に発達する『臨界期』があり、その時期に有害な化学物質に暴露すると、取り返しのつかない影響を受ける可能性があります。

脳の発達は有害物質にさらされると、その時期により、生命維持にかかわる部分や社会性を担う高次機能の神経回路など、さまざまな部分に悪影響を及ぼすことが指摘されています。特に赤ちゃんは何でもなめたり口に入れるため、PFASほこりを摂取する可能性が高いです」(木村-黒田さん・以下同)

今年2月に発表された米カリフォルニア大学バークレー校の研究でも、子供への影響を懸念する結果が出た。7才以下の子供のいる家庭を調査したところ、ほこり由来の8種類のPFASにさらされた子供は、暴露が少ない子供に比べて白血病にかかるリスクが60%も高かったのだ。

「家のほこりには多種類の有害化学物質が含まれており、暴露すると発がんなどのリスクが上がると想定されますが、それだけですぐ死に至るとは言い切れません。ほとんどが急性毒性を起こすのではなく、何らかの慢性影響や多種類の物質の複合毒性がかかわっていると考えています」

濡れたタオルが対策に役立つ(写真/PIXTA)
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少しでも自分や家族の体にPFASほこりを入れたくないが、できる対策としてはどのようなものがあるのだろうか。

「こまめな掃除しかないですが、ほこりを舞い上げるハタキはNG。水に濡らしたタオルで拭くのがいいでしょう」(植田さん)

木村-黒田さんも、掃除の仕方に注意を促す。

「消臭スプレーをかけるのは化学薬品を増やすばかりか、ほこりが舞い散ってしまい逆効果です」

ほうきではなく、水拭きなどでほこりが空中に舞い上がらないようにする工夫が必要だ。

原田さんは、最新家電に期待したいと話す。

HEPAフィルターつきの空気清浄機が対策に役立つ(写真/PIXTA)
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「花粉やウイルス、微細なほこりなどを除去するHEPAフィルターを搭載した空気清浄機は一定の効果があると考えられます」

家庭内にあるもののほとんどにPFASが使われているだけに、家から一掃するのは難しい。

だからこそ、「ほこりにはPFASが含まれている」ことを認識し、掃除への意識を高めよう。それが、自分と家族の命を守ることにつながるのだ。

※女性セブン2025年6月19日号