
始まったばかりの夏が、さっそく猛威を振るっている。全国的な梅雨明けはまだ先でジメっとした湿気も加わり、体はだるいしなんだか気持ちも落ち込んで食欲もないという人は多いだろう。そんな不調を酸っぱいパワーがなかったことにしてくれる。
湿度が高くなると同時に、全国各地で気温が35℃を上回る猛暑日が続いている。気象庁が発表した7月から9月までの3か月予報によると、今年の夏は平年を上回る気温になることが予想されるという。
猛暑の本番はこれからだが、すでに暑さで食欲が減退し、食べずにいるから元気が出ない…そんな夏バテ一直線の悪循環をいますぐ断ち切る最強の調味料がある。
その主役はレモン。管理栄養士の望月理恵子さんは「夏ならではの体の不調や肌の悩みを解決する栄養素がたくさん詰まっています」と話す。
「レモンに含まれる酸味成分のクエン酸は疲労の原因となる体内の乳酸を分解し、新陳代謝を高める効果があります。また、マグネシウムやカルシウムなどのミネラル成分の吸収率を高める作用もあり、夏バテ予防にぴったりです。
肌の新陳代謝をアップするビタミンCも多く含まれているため、シミやしわ、たるみ対策への効き目が期待できる。紫外線が強くなるこれからの季節におすすめです」
夏場は外気温と室内の温度差が激しくなるため血管が収縮し、血圧の変動が起こりやすい。また発汗により体内の水分が不足することで血流が悪くなり、高血圧のリスクが高まる。ここでもレモンに含まれるクエン酸やビタミンCの出番だ。
「クエン酸には血液をサラサラにして血流を改善する働きがあり、ビタミンCにはコラーゲンを生成して血管を丈夫にする効果があります。レモンを継続的に摂取することで、高血圧予防が期待できるのです」(望月さん・以下同)
体にうれしい成分は、この2つだけではない。
「レモンに豊富に含まれるポリフェノールには抗酸化作用があり、がんや動脈硬化などの原因となる活性酸素を除去する働きがあるため、生活習慣病の予防効果があります。
またレモン特有の酸っぱい香りは、柑橘系の果物の皮に多く含まれるリモネンという成分によるもの。香りそのものにリラックス効果やリフレッシュ効果があるため、猛暑で疲れた体だけではなく心も元気にしてくれます。皮ごと食べることで、血行促進や免疫力向上などの働きも期待できるでしょう」

酢の種類によって効果が変わる
体を元気にする栄養素が盛りだくさんなレモンに酢を加えてレモン酢にすることで相乗効果が生まれ、梅雨と猛暑を乗り切る強い味方になるという。
「酢の主成分である酢酸やアミノ酸、クエン酸などの有機酸にはレモンに含まれる成分と同様に、血流の改善や血糖値の上昇を抑える働きがあります。そのほかにも内臓脂肪の燃焼や生活習慣病の予防にも効果的です。
また有機酸は腸内の善玉菌の餌になって、悪玉菌を減らして腸内環境の改善に一役買ってくれる。大腸を刺激してぜん動運動を促す作用もあるので、便秘解消につながります。腸活の面からも美肌効果が期待できますね。
レモンに含まれるビタミンCは加熱によって失われてしまいますが、酢と組み合わせればビタミンCの破壊を防ぐことができる。互いの栄養素を効率よく吸収することができるのです」
レモンと組み合わせる酢の種類を変えれば、自分の体調に合わせてお好みのレモン酢を作ることができる。

「黒酢や玄米酢はほかの酢よりもミネラルやアミノ酸が多く含まれているため、血流改善、血糖値上昇の抑制、美肌効果を期待したい人にぴったりです。ダイエットやアンチエイジングが気になる場合は、りんご酢がおすすめです」
最強の調味料ともいえるレモン酢の作り方はいたってシンプル。材料はレモンと酢、氷砂糖の3つだけだ。
「レモン1個(約100g)を洗って皮ごと輪切りにし、耐熱性の保存容器に入れます。そこに酢を400ml、氷砂糖を150gほど加えて電子レンジで加熱すれば出来上がり。600Wなら30秒、500Wなら40秒程度が目安です。加熱によって氷砂糖が溶けやすくなるので、加熱後に全体を軽く混ぜ合わせましょう。
上白糖や黒糖、はちみつなどでも代用できますが、おすすめは氷砂糖です。氷砂糖が重しとなり、レモンのエキスを効果的に引き出します。保存方法は常温、冷蔵どちらでも問題ありません。1か月を目安に使い切るようにしましょう」
より効果を高めるためにも、主役となるレモンの選び方には気を配りたい。
「手に取ったときに、表面がツルっとしてハリやツヤがあるものを選びましょう。新鮮なレモンは色むらが少なく、見た目よりもずっしりとした重みがあります。
レモン酢ではレモンを皮ごと使うので、できれば無農薬のものがおすすめ。輸入品は強い毒性のある防カビ剤を使用している場合が多いので、国産レモンを選ぶ方が安心です」

外国産レモンなら塩洗いして
国産の無農薬レモンが手に入らない場合は、「塩洗い」で対処する方法も。
「レモンの皮を塩で軽くなでるようにして洗うと、表面の農薬が取れやすくなります。“野菜洗いもOK”と表記のある食器用洗剤を使うのもいいでしょう。
表面を傷つけない程度に洗って、最後は冷水でさっと流してください。お湯で流してしまうとせっかくの栄養素が一緒に流れてしまう可能性があるので気をつけてください」
レモン酢は食材を選ばず、どんな料理との相性も抜群だという。
「肉や魚、野菜にもよく合うので、ソースやドレッシングとして使えるまさに万能調味料です。そのまま使っても充分おいしいですが、レモンを細かく刻むことで食感と風味をさらに楽しむことができます」
飲み物として活用すれば、より手軽にレモン酢を楽しむことができる。
「炭酸水で割れば、爽やかな酸味と甘みでスッキリおいしくいただけます。お茶に入れてレモン緑茶にしたり、白湯に入れてレモン白湯にしたりするなど、いろいろな飲み物に合うのもレモン酢の特徴です。ヨーグルトと合わせてラッシーのようにして飲むのもいいですね」
ただし、いくら健康にいいからといって「摂りすぎは禁物です」と望月さんは注意を促す。
「砂糖が入っているので、1日に15~30cc、大さじ1~2杯程度を目安にしましょう。飲み物として摂取する場合、酸が強いので空腹時に飲むと胃への負担が大きくなります。食事のお供として飲むことで、血糖値の上昇を抑えて糖尿病の予防に役立ちますよ」
大切なのは「毎日継続的に摂取すること」。レモン酢のある暮らしで、猛暑に負けない体を手に入れたい。

レモン酢の作り方
レモンの輪切り…100g(1個)、酢…400ml、氷砂糖(はちみつなどでも代用可能)…150g
電子レンジ600W30秒でレモン酢の完成!
※女性セブン2025年7月17日号