《肌老化の原因に》皮膚科医らが指摘する【間違った日焼けケア】、「日焼け止めは汗をかいたら塗り直す」「日焼けしたらすぐに美白化粧品」「長袖で肌を隠せば大丈夫」はNG

東海地方以西では、観測史上まれにみる早さで梅雨明けし、本格的な夏へ突入。強い日差しを浴びる期間が例年以上に長ければ、それだけ日焼けによるダメージを受けるリスクが高まる。日焼け対策が間違っていれば老化は進むばかり。紫外線から肌&体を守り、老化を防ぐ正しい対策を紹介!
- 肌老化の原因の8割は紫外線によるもの
- しわ・たるみを生むUVA、シミを誘発するUVB
- いますぐ実践!間違った方法ではシミ・しわ・たるみを助長…100才まで美肌を維持する紫外線対策
- 熱中症のリスクも考え、臨機応変に対応を!
- 【1】外出しない日は日焼け止めを塗らなくていい
- 【2】室内で過ごす日の日焼け止めは「SPF30・PA++」ぐらいがよい
- 【3】UVカット効果のある化粧下地なら日焼け止めは不要
- 【4】塗り直しは手軽で化粧くずれしにくいスプレータイプが◎
- 【5】日焼け止めは汗をかいたら塗り直す
- 【6】昨年の残りを使っても大丈夫!
- 【7】日焼け止めは湯で洗い流せる
- 【8】顔に塗る日焼け止め1回分の使用量は五百円玉1個分くらい
- 【9】くもりや雨の日は日焼け止めを塗らなくてもよい
- 【10】日焼けをした肌にはフェイスパックで潤いを!
- 【11】日焼けしたらすぐに美白化粧品をたっぷりつける
- 【12】若い方が日焼けしやすい
- 【13】昔、日焼けしたから、いまさら何をしても手遅れ
- 【14】UVカットガラス搭載の車内は安心
- 【15】日焼け対策には「ビタミンC」
- 【16】長袖など服で肌を隠せば大丈夫!
- 【17】サングラスのレンズの色は濃いほどよい
- 【18】UVカットアームカバーは通気性のいいメッシュタイプが◎
- 【19】日傘は熱を吸収しない「白」が◎
- 【20】日焼け対策にはサンバイザーが有効
肌老化の原因の8割は紫外線によるもの
「シミ、しわ、たるみといった肌の老化は加齢が原因と思われがちですが、実は紫外線の影響の方が大きく、原因の8割を占めます」
とは、銀座ケイスキンクリニック院長の慶田朋子さんだ(「」内、以下同)。太陽光を長期間浴びることで肌が老化する現象を「光老化」という。
「太陽光には、紫外線(UV)、可視光線、赤外線が含まれています。このうち、光老化に最も影響を与えるのが紫外線です。紫外線は波長の長さによって3種類に分類され、波長の長い順にA波(UVA)、B波(UVB)、C波(UVC)と呼ばれ、人体に悪影響を及ぼすのはA波とB波です。C波はオゾン層に吸収されて地表には届かないため、人体に影響がありません」
しわ・たるみを生むUVA、シミを誘発するUVB
波長の違いによる肌ダメージは下記図の通り。波長が長いほど皮膚の奥まで入り込みやすく、それぞれがもたらす肌ダメージも異なる。

「地表に降り注ぐ紫外線の約9割を占めるのがUVAです。波長が長いため、肌の深部の真皮層まで届きやすく、蓄積すると皮膚のハリと弾力を生むコラーゲンやエラスチンなどをつくる細胞を傷つけ、しわやたるみの原因となります。
一方、UVBは肌の表面に近い表皮にダメージをもたらしやすく、赤くヒリヒリした炎症を引き起こしたり、表皮内のメラノサイトを活性化して、シミのもとになるメラニン色素の生成を促したりします。皮膚がんの発生に関与していることもわかっています」
こうした紫外線の影響に加え、近年では可視光線に含まれる「ブルーライト」が肌をくすませ、赤外線の一種である「近赤外線」がたるみの原因になることも判明している。
このように太陽光による肌へのデメリットは多々あるが、さらに、間違った対策で光老化を助長している人も多いのが問題だという。正しい方法は次から詳述。すぐに実践を。
いますぐ実践!間違った方法ではシミ・しわ・たるみを助長…100才まで美肌を維持する紫外線対策
「とりあえず、出かける前に日焼け止めを塗っています」など、自己流対策で満足している人は必読。専門家が間違いを一刀両断!
日焼けのダメージは髪・目・疲労にも影響
紫外線による悪影響は肌に表れるだけではない。
「紫外線により髪の表面にあるキューティクルが傷むと、手触りが悪くなり、老けた印象に。水分や脂質も失われやすくなるので、髪はパサつき、ツヤもなくなってしまいます。
一方、目が日焼けすると、角膜の炎症や充血、痛みなどを引き起こすほか、白内障といった深刻な病気のリスクも高まります」
それだけではない。体内に疲労物質がたまり、いつも以上に疲れを感じやすくなるという。
「紫外線を浴びると体内で活性酸素が生成されます。長時間浴び続けて過剰に生成されると、増えた活性酸素を除去するのにエネルギーが使われ、疲労を感じやすくなるのです。多くのプロスポーツ選手は、夏場でも半袖のウエアの下に長袖を着ていますが、あれは日焼け対策だけでなく、紫外線による疲労で運動のパフォーマンスを落とさないためでもあります」
熱中症のリスクも考え、臨機応変に対応を!
紫外線から肌を守るには、日焼け止めを塗るのが基本となる。
「太陽光は一年中降り注いでいるので、日焼け止めは季節や天候に関係なく毎日塗るのが必須です。特に夏場は日差しも強く、汗で流れてしまうのでこまめに塗り直すことが重要です」
紫外線の量は4月頃から増え始め、6~8月がピーク。一日の中では10~14時が最も多く降り注ぐ。
「直射日光から肌を守るという意味では、UVカット機能がついたウエアを着用するのがおすすめ。ただし40℃近くまで気温が上昇するような猛暑日に、長袖を着用すると体に負担がかかります。紫外線対策だけでなく暑さ対策も併せて考え、風通しのいい素材を選んだり、日傘や帽子で直射日光を避けたりと、臨機応変に対応しましょう」
下記の正しい日焼け対策を参考に、猛暑の夏を乗り切ろう。
【1】外出しない日は日焼け止めを塗らなくていい
《NO!》室内にいても紫外線の影響は受けている
「直接太陽光を浴びない室内なら安心、と油断してはいけません。紫外線の中でも、波長の長いA波(UVA)は、窓ガラスを透過する性質があるので、たとえ家の中に居ても紫外線の影響を受けます。ですから、一日中家で過ごすときも日焼け止めは塗った方がいいでしょう」
【2】室内で過ごす日の日焼け止めは「SPF30・PA++」ぐらいがよい
《NO!》天候・場所に関係なく「SPF50・PA++++」を塗るべし!
「UVAの防御レベルを示すのがPAで、UVBの防御レベルを示すのがSPF。それぞれ『+』の数が増え、数字が大きくなるほど効果の度合いが上がります。UVAは屋内にも差し込むのでPA値も高い方が安心。常時『SPF50・PA++++』を選び、外出の際は重ね塗りを。一日室内で過ごす日は一度塗りでOK」
【3】UVカット効果のある化粧下地なら日焼け止めは不要
《NO!》日焼け止めの効果を高めるためにも重ね塗りした方がよい

「化粧下地のUVカット機能は補助的であり、日焼け止めの方が効果は高いので、両方使いがおすすめです。日焼け止め→化粧下地→ファンデーションの順で重ね塗りしましょう」(美容家・飯塚美香さん、以下同 )
【4】塗り直しは手軽で化粧くずれしにくいスプレータイプが◎
《NO!》メイクの上からでも使えるクッションタイプがおすすめ
「密着度はクリームタイプがいちばんですが、メイクの上から塗り直すのは難しい。手軽に使えるスプレータイプの日焼け止めも便利ですが、密着度にむらが出やすく、薄づきになりがち。しっかり密着し、肌をきれいにみせられるクッションファンデタイプが◎」 。スプレータイプは髪などにぴったり。
【5】日焼け止めは汗をかいたら塗り直す
《NO!》汗をかかなくても2~3時間おきに塗り直す
「海やプールなど炎天下でのレジャーのときは、1時間に1回の塗り直しが理想。日常生活なら、日焼け止めの効果を保つためにも、2~3時間おきに塗り直すのがおすすめです。汗をかいたり、水に濡れたりした場合は、時間が経っていなくてもその都度塗り直すようにしましょう」
【6】昨年の残りを使っても大丈夫!
《NO!》肌トラブルの原因になる恐れが!1年で使い切るようにケチらず使う

「日焼け止めの使用期限は、開封後1年、未開封で3年が目安。一度開封したものは成分が劣化して品質が落ちている可能性が高いので、もったいないからと昨年の残りを使うのは控えた方がいいと思います」
【7】日焼け止めは湯で洗い流せる
《NO!》ボディーソープや石けんを使ってやさしく洗い流す
「日焼け止めを落とさないまま放置していると、毛穴が詰まり、肌トラブルの原因になります。湯だけでは完全に落ちないので、専用のクレンジング剤か、指定がなければボディーソープや石けんを使うこと。日焼け後の肌はデリケートなので、こすったりせず、いつも以上にやさしく洗って」
【8】顔に塗る日焼け止め1回分の使用量は五百円玉1個分くらい
《NO!》五百円玉2個分が目安。ケチらず首までしっかり塗る
「顔に塗る量だけで、1回に五百円玉1個分、二度塗りするべきなので2個分が目安です。額・両頰・鼻・あごの5か所にのせて均一に広げ、耳や首の後ろなども忘れずに塗りましょう。腕やデコルテ、足など全身にも塗った方がいいので、服を着る前に塗るようにしましょう」 (慶田さん、以下同)
【9】くもりや雨の日は日焼け止めを塗らなくてもよい
《NO!》くもりでも約7割の紫外線が降り注いでいる
「晴れの日の紫外線量を100%とすると、くもりや小雨の日で約70%、雨の日でも約30%の紫外線が降り注いでいるとされています。紫外線を浴びた瞬間から肌の炎症は始まるので、天候に関係なく毎日塗りましょう」
【10】日焼けをした肌にはフェイスパックで潤いを!
《NO!》ヒリヒリするほど肌を焼いたら冷やすのが優先
「フェイスパックは肌への刺激が強いので、普通の日焼けなら通常の保湿で充分。ヒリヒリと痛むほど焼けた場合は、肌が炎症を起こしている証拠なので、保冷剤をハンカチで包んで患部を冷やしてからしっかり保湿を」
【11】日焼けしたらすぐに美白化粧品をたっぷりつける
《NO!》美白ケアは肌の状態が落ち着いてから

日焼け直後は肌が敏感になっていて、有効成分が刺激になることも。「まずは保湿が大切。ケアは肌の状態が落ち着いてから」 。
【12】若い方が日焼けしやすい
《NO!》むしろ逆! 年をとるほどダメージを受けやすい
「日焼けによるダメージを抑える抗酸化力は、加齢とともに低下。特に、閉経あたりからどんどん低下します。抗酸化力が落ちてしまうため、若い頃と同じ紫外線量を浴びても、昔よりダメージの出方が大きくなります」
【13】昔、日焼けしたから、いまさら何をしても手遅れ
《NO!》洗う→保湿→光対策で何才からでも改善する
「一度浴びた紫外線の影響をなかったことにはできませんが、正しいケアで肌は変わります。スキンケアの基本は、洗う→保湿→太陽光の防止。続けるうちに肌表面の水分量が増えてバリアが整い、肌の調子も変わります」
【14】UVカットガラス搭載の車内は安心
《NO!》車内用ラッシュガードを用意しておくとよい
「車のフロントガラスはUVカット率が高いのですが、サイドや後部座席のガラスはそれほど高くない場合も。また、UVAの一部や有害なブルーライトは素通りです。車内でも日焼け止めを塗り、ラッシュガードを着るのが◎」
【15】日焼け対策には「ビタミンC」
《NO!》ビタミンCだけでなく、ビタミンA、Eも必須!
「抗酸化力の高いビタミンA(レバーやうなぎなど)、ビタミンC(パプリカ、キウイなど)、ビタミンE(アボカド、アーモンドなど)を積極的に食べて。老化の原因となる酸化ストレスヘの抵抗力を高めてくれます」(飯塚さん、以下同 )
【16】長袖など服で肌を隠せば大丈夫!
《NO!》紫外線は衣類も透過!体にも日焼け止めを塗ろう
「私の父は、紺と白のボーダー柄Tシャツを着て一日外に居たら、体がシマ模様に日焼けしてしまいました。紫外線は衣類を透過し、特に白地は透過しやすいんです。体にもしっかり日焼け止めを塗りましょう」
【17】サングラスのレンズの色は濃いほどよい
《NO!》薄茶やグレーなどの方が目の日焼けを防ぎやすい
「紫外線の目への影響は大きく、夏はUVカット加工のレンズを使ったサングラスが必需品に。レンズの色が濃いと瞳孔が開き、目に入る紫外線の量が増えるので、レンズの色は薄茶やグレーなどの薄い色を選んで」(慶田さん)
【18】UVカットアームカバーは通気性のいいメッシュタイプが◎
《NO!》透過して網目状に焼ける。冷感素材がおすすめ

「メッシュは通気性に優れていますが、網目から紫外線が透過します。とはいえ厚手だと暑いので冷感素材のものがいいでしょう」(飯塚さん)
【19】日傘は熱を吸収しない「白」が◎
《NO!》暗い色の方が遮光効果に優れており日焼け対策向き
「日傘の裏面は黒などの濃い色がおすすめ。濃い色は光を吸収するため、紫外線を通しにくく、地面から照り返す光の対策もできます。表面が白い場合は完全遮光の布地を選び、傘を差したときに黒い影ができるかチェックを」(慶田さん)
【20】日焼け対策にはサンバイザーが有効
《NO!》頭皮が日焼けをして毛根にダメージを与えるかも
「サンバイザーは通気性がよく、顔への紫外線を防ぎますが、頭皮がさらされるので、毛根や頭皮にダメージを与える可能性が。それを防ぐためにも、通気性のよい生地で、つばの広い帽子をかぶりましょう」 (飯塚さん)
◆銀座ケイスキンクリニック院長・慶田朋子さん
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医。「切らないハッピーリバースエイジング」をかなえる美容皮膚科医として、多くの患者から厚い信頼を得ている。著書に『女医が教える、やってはいけない美容法33』(小学館)など。
◆美容家・飯塚美香さん
アイアール代表取締役。美容情報サイト「キレイナビ」を運営するほか、通販番組出演や商品開発、メイクレッスン講師など幅広く活躍中。著書に『45歳から始める「10歳若見え」メイク』(ワニブックス)など。
取材・文/鳥居優美
※女性セブン2025年7月31日・8月7日号