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和田秀樹氏が「終活せずに好きなことをして自分らしく過ごせばいい」と語る理由 本音で生きる反骨の医師が“理想の最期”にために重視する「いまを充実させる」こと 

理想の最期を話す精神科医の和田秀樹さん
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いま、「うまく死にたい」という人が増えている。私たちはみな、いつかは命が尽きる日がくる。それはいつなのか、どこでなのかは誰にもわからない。常に生と死の間にいる私たちが思うのは「元気に長生きしたい」ということと同時に、「後悔のないように死にたい」「苦しまずに死にたい」という願いだろう。患者に寄り添い、最期を看取り、いくつもの「死」に触れてきた名医が思う理想の最期と、その迎え方を聞いた。

がん検診には意味がなく、老人こそ肉を食べるべきだ。そしてコレステロール値が高いほど長生きする──“逆説的”健康法でベストセラーを連発する精神科医の和田秀樹さん(65才)は「どちらかといえば家で死ぬのが幸せかな」と話す。

「死が迫ると病院では点滴などを強制されて心身ともに弱ってしまっているのに、面会制限などで人と話ができなくなります。しかも家なら好きなものを食べてお酒も飲めるけど、病院は味のしないまずい食事ばかりで飲酒も喫煙もできないのが何よりつらい。いまだに面会制限している病院が多いのも困ったものです。そう考えたら家で死ぬ方が幸せでしょう。ただし終末期医療ができない分、早く死ぬかもしれないですね」(和田さん・以下同)

がんなら治療せず自宅で死にたい

自宅、病院と並んで第三の選択肢である「老人ホーム」にも否定的だ。

「いまの老人ホームはどれだけ高価なところでも自分が好きなものを食べられないことがほとんど。『入居者の健康が第一です』とうたう施設で、健康のためにおいしくない食事を死ぬまで食べさせられるのは勘弁してほしい」

高齢者医療に35年以上従事する和田さんは、自らを死に追いやるのは「がん」が望ましいと語る。

「心血管系や脳血管系の症状などで突然死したら、片付けるべきところを片付けられずに死んで、さまざまな禍根を残してしまう。がんはだいたいの死ぬ時期がわかるので、生前に死ぬ準備ができます。しかもがんは見つかるまではピンピンしていることが多く、発見後も治療を受けなければ苦しまないともいえます。ぼくはがんを治療せず、緩和ケアを受けて自宅で死にたい」

生きている「いま」を充実させてこそ、理想の最期につながる(写真/PIXTA)
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本音で生きる反骨の医師が理想の最期を迎えるために重視するのは、「いまを充実させる」ことだ。

「どれだけ健康を気遣っても明日死ぬかもしれないし、高齢だからもう死ぬと思っていても5年、10年と生きることもある。90才まで長生きしても6割は認知症になるわけです。だから終活なんてする必要はなく、自分の好きなものを食べて、好きなことをして自分らしく過ごせばいい。自分の感情に素直になり、いま生きている時間を充実させることこそが、理想の最期を迎えるための秘訣でしょう」

【プロフィール】
和田秀樹/東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、国立水戸病院、浴風会病院の精神科を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。著書に『80歳の壁』など多数。

※女性セブン2025年7月31日・8月7日号

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