
小・中学生を対象にした実証実験では、AIカウンセラー(対話型AIサービス)への満足度は9割以上。相談件数も、学校に所属する人間のカウンセラーより10倍以上多かった(※)。いまや相談事はAIにするのが、若者を中心に浸透しつつあるが、実際にはどう答えてくれるのか――。
※AIにチャット形式で悩みを相談できるサービス「悩みチャット相談システム」を展開しているZIAIが、千葉県柏市内のパイロット校に通う小学5年生~中学3年生に同サービスを開放(2024年10月21日~2025年2月10日)し、実証実験を行った。
人間らしい会話なら「ChatGPT」
「“対話型AIサービス”とは、人工知能を使って使用者の質問や相談に、人と会話をしているかのように返答したり、提案したりするサービスです。膨大な学習データを基に、どのような質問に対しても精度の高い回答をしてくれます。そのため、日常生活からビジネスまで、幅広いシーンで活用されています」
とは、中央大学国際情報学部教授の岡嶋裕史さんだ。
対話型AIサービスで主に知られているのは、「ChatGPT(チャットジーピーティー)」「Gemini(ジェミニ))「Claude(クロード)」の3つ。なかでも「ChatGPT」は人のような自然な会話を早期から実現し、人気を誇る。
ほかの2つも実力は拮抗しており、Googleが開発した「Gemini」はメールやカレンダーなどのGoogleサービスと連携させて使える。たとえば、「今日届いた重要なメールを教えて」といった指示にも対応可能だ。「Claude」は安全性が重視されており、企業での魅力を訴求している。
「人間らしい会話を手軽に始めるなら、ChatGPTが使いやすいかもしれません」(岡嶋さん・以下同)
“嘘”をつくこともあるので過信は禁物
では具体的にどのようなことができるのか。
「相談や検索を会話形式で行えるのはもちろん、ボイスモード(音声会話)を使って外国語会話の練習などができます。イラストや文章の作成、アイディア提案なども可能で、大学では論文作成に活用する学生もいるほどです」

とても便利なサービスだが、注意点もある。
「ChatGPTは、人の気持ちに配慮した回答をするよう設計されています。たとえば、『友達にこういうことを言われたんだけど、嫌みだと思う?』といった感情面に関する質問をすると、攻撃的な発言や傷つけるような表現を避け、心に寄り添うような対応をしてくれます。ただし、必ずしも正しいことを言っているわけではありません。質問内容が曖昧だったり、学習データが少ない内容だったりすると、嘘の話を捏造し、間違った情報を提示することがあります。ですから、AIに言われたことを鵜呑みにせず、情報の真偽について確認する必要があります」
AIはあらゆる言語データを基に、もっともらしい回答を導き出しているだけなので、過信は危険だ。しかし、その点さえ気をつければ、便利なサービスであることは間違いない。しかも無料で使える。
「月20ドル~の有料版では、イラスト作成などの制限が緩和され、会話履歴の記憶機能も拡張されます。とはいえ、プライベートで相談や検索をメインに使うのなら、無料版で充分だと思います」
百聞は一見に如かず。まずは試してみよう。

【基礎編】登録方法から技ありな質問方法まで「ChatGPT」はじめ方ガイド
「ChatGPT」の使い方は簡単。ただし、より精度の高い回答を導き出すには質問の仕方にコツがある。その方法を前出の岡嶋さんに聞いた。
【1】新規登録でアカウントを作成
●アカウント登録で会話履歴が保存可能
パソコンの場合、ChatGPT公式サイトから登録不要ですぐに始められるが、アカウント登録をした方が会話履歴などが保存できて便利。スマホの場合はアプリをインストールして「新規登録」すればOK。
●一時チャット
会話の履歴を保存せずにチャットが利用できる機能。後で見返すことのないちょっとした調べものや、プライバシーにかかわる個人的な相談をする場合などに便利。
●イラスト作成や文書解説など
作成してほしい内容を文章で打ち込むとイラスト化してくれる。長文テキストの要約、ブログやメールの文章なども作成してくれる(無料版の場合、イラスト作成数には制限がある)。
●ボイスモード
話した言葉を聞き取り、音声で返答してくれる機能。料理中や運転中など手がふさがっているときでも質問できる。AI音声の種類も選べる。
●音声入力
話した言葉を聞き取って文章で入力してくれる機能。入力の手間が省けるため便利。回答は音声ではなく文章で返ってくる。

【2】質問・相談する
まずは献立の相談に挑戦。具体性が肝!
献立を相談する場合、(1)食べる人(人数や体調)(2)材料(旬の野菜を使う、食材を指定する)(3)ジャンル(和・洋・中)(4)調理時間や品数(何分以内で、何品以上)を指示すると下記のように詳しく教えてくれる。
質問「以下の材料を使って、30分以内で作れる夕食のメニューを2品考えて。材料をすべて使う必要はなし。2品は和食か洋食で統一して。材料:豚肉、玉ねぎ、にんじん、キャベツ」
以下ChatGPTの返答
以下の材料:豚肉、玉ねぎ、にんじん、キャベツを使って、30分以内に作れる洋食の夕食メニュー(2品)をご提案します。
洋食2品メニュー
(1) ポークソテー ~キャベツのソテー添え~
所要時間:25分
《材料》(2人分)
・豚肉(厚切りまたは薄切り)…200g
・キャベツ…2〜3枚
・にんにく(あれば)…1片
・オリーブオイル、塩、こしょう…各適量
・しょうゆ、バター(ソース用)…各小さじ1〜2
《作り方》
【1】豚肉に軽く塩・こしょうをふる。
【2】フライパンにオリーブオイルとスライスしたにんにくを入れて熱し、豚肉を焼く。
【3】仕上げにバターとしょうゆを回し入れ、軽く煮からめる。
(後略)
内容は具体的に!長文でしっかり説明を
「ChatGPT」を使いこなすには、質問の仕方、つまり“指示”の出し方が重要だと、岡嶋さんは言う。
「過去の『アレクサ』や『Siri』のような従来型AIは、簡潔な指示の方が適していましたが、解析能力の高い『ChatGPT』では、長文になっても構わないので、伝えたい内容をできるだけ具体的かつ詳細に入力するのがおすすめです。その方が、精度の高い回答を得られます」(岡嶋さん)
回答が気に入らないときは、質問内容をより具体的にするか、表現を変えて同じ質問を何度もしてみよう。深掘りした答えを提示してもらえる。また、「簡潔に説明して」「結論から話して」「推測ではなく事実で」といったひと言を質問に加えることで、回答精度が高められるという。複雑なトピックの場合は、「まず概要」「次に具体例」と順を追って質問するのもおすすめだ。
【実践編】不倫・嫁姑問題・セックスレスまで──AIの“寄り添い力”がすごい!ChatGPTが回答する大人の悩み相談室
誰にも言えない悩みに耳を傾け、労いの言葉をかけてくれるAIとのやりとりを一部抜粋して紹介。「ChatGPT」の回答は?
※相談内容と回答は一部編集・省略。AIの回答は法律に則った専門的な助言ではない。使用したのは2025年8月上旬時点の「ChatGPT(無料版)」。ChatGPTの画面やイラストは、見やすいように編集部で作成したもので、実物とは異なる。








◆中央大学国際情報学部教授・岡嶋裕史さん
『趣味どきっ!』(NHK Eテレ)ではスマホシリーズの講師も務める。主な著書に『知識ゼロからのChatGPT入門 生成AIに何をしてもらうと便利なのか』(幻冬舎)。
取材・文/番匠郁
※女性セブン2025年9月4日号