
古今東西、家族関係の悩みはなくならず、とりわけ嫁姑問題は時代が変わってなお永遠だ。実際の事件を紐解くと、深い憎しみが、一線を越えてしまうことも──。
2016年2月10日、神奈川県葉山町の山道で遺体が発見された。身元は同町在住、81才の西川ミチさん(仮名)と判明。頭部挫傷による出血性ショックが死因と診断された。
「妻は誰かにやられた」
夫の英男さん(仮名・83才)は周囲にそう言っていたという。実際、夫妻にはここ数年にわたり、不可解な“災厄”が続いていた。
「遡ること2010年11月午前、自宅が原因不明の火災に見舞われ、翌年には転居先のマンションで2人組の不審者から現金を奪われ、けがをしました。県警は当時、強盗致傷事件とみていましたが、すぐに解決には至りませんでした」(全国紙社会部記者・以下同)
そして2012年2月、火災跡地に新居を建てた西川さん夫妻は、次男夫婦とその息子と新生活をスタートさせた。しかし…。
次男(59才)の妻・麗子(仮名・50才)は2009年、次男との結婚を機に前夫との息子・秀(仮名・27才)と葉山町で暮らし始めた。
「それ以降、西川さん宅で相次ぐ“トラブル”が起きましたが、事態が急変したのはミチさんの遺体が発見された1か月半後です」

2016年3月22日、西川さん宅で不審火が起き、英男さんがやけどを負い入院。2日後の24日午前2時頃に再び自宅で不審火が発生し、隣家も巻き込んで全焼した。
「神奈川県警の火災調査で火の気がない内部から出火していることがわかり、何者かが意図的に火を放った可能性が強まった」
そこで神奈川県警が捜査の目を向けたのが次男一家だった。生前のミチさんと麗子の関係が良好ではなかったことが理由の1つで、実際、当時の新聞の取材で近隣住民らはこう証言している。
《しゅうとめに文句を言う声がよく外まで聞こえていた》
《「嫁にたたかれて、入院した」と聞いたことがある》
《怒鳴り合うような声は、日常的に聞こえていた》
捜査の結果、火災前に麗子が自宅からアルバムなどの思い出の品を搬出したことや、全焼から9時間後に保険金3000万円の支払いを請求していたことが判明。
「火災が起こる前に麗子が不動産業者に、保険金でまかなえる範囲の3000万円程度で購入できる住居の相談をしていたこともわかり、県警は一連の出来事が麗子を中心に起きていると判断。2017年11月、麗子と秀、夫、そして知人の中国人女性の4人を詐欺未遂及び現住建造物等放火などの疑いで逮捕した。加えて麗子にはミチさん殺害の容疑もかけられました」
放火事件の公判で麗子は「夫の親族からの嫌がらせに苦しみ、パニックになって放火した」と、保険金目的ではないと主張。しかし、犯行前後の行動が明らかとなり「保険金をだまし取る目的であまりにも身勝手」と断罪され、麗子に放火と保険金詐欺未遂の罪で懲役12年が言い渡された。
しかし、麗子のミチさん殺害容疑については不起訴となった。義母が亡くなったいま、“真実”は闇の中に。“疑惑の嫁”はいまも牢獄で罪を償っている。
※年齢は2016年の事件当時。
※女性セブン2025年9月18日号