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《灰皿の水を飲まされて》伍代夏子「知ってほしい」飼い主に捨てられた動物たちの悲鳴「ガリガリで落ちているものを何でも食べる犬」も

保護動物の問題に取り組む伍代。左はMCの渋谷亜希氏。
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「大丈夫、大丈夫。いい子だね。そんなに逃げなくてもいいのよ。ね、大丈夫」

おびえて隠れたり、敵意を剝き出しに唸り、吠えまくる犬たちにそっと歩み寄り、声をかけ続ける伍代夏子――。その手には愛用のカメラがある。写真が趣味の伍代は“人と人、人と犬とをつなぎたい”と保護犬の写真展を開催してきた。

幼い頃から動物好きで実家では12匹もの犬を飼い、譲渡犬や野良犬を迎え入れたこともある伍代。社会貢献に身を捧げる杉良太郎と結婚して共に被災地支援に励むようになると、避難所からあぶれてしまう家庭犬の存在が気になった。大切な家族の犬を置き去りにできないと倒壊した家へ戻り、命を落とす被災者もいる。

ペットも人も同じ命。その想いで、災害時に人とペットが安心して同室に避難できる社会を目指す「りく・なつ同室避難推進プロジェクト」を2023年に立ち上げた。この活動や被災地支援を重ね、動物の保護活動をする人々とのさまざまな出会いがあった。伍代が語る。

「保護犬のシェルターを知り、保護犬を家庭犬にするために訓練する施設のお手伝いをしたいと思うようになったんです」

9月20~26日には動物愛護週間に合わせて東京・青山で「りく・なつプロジェクト×ピースワンコ Wan Dream Garden~保護犬猫と人の幸せな暮らし方~」を開催し、保護犬猫の譲渡会やトークショーを行った。

共催の「ピースワンコ・ジャパン」は、1996年から国内外の被災地や紛争地で人道支援活動を行ってきた認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンによる、保護犬のプロジェクトだ。伍代とは2024年の能登半島地震のペット支援の現場で出会い、伍代はピースワンコが運営する広島県の神石高原シェルターへ見学に訪れたこともある。冒頭の伍代の様子はその時の映像で、26日のトークショーで紹介された。

「レスキューの現場にぜひ立ち会わせてほしいとお願いして、シェルターがある広島県の動物愛護センターにも連れて行っていただきました。その施設では殺処分の機械を止めて、誰も迎えにこないワンちゃんたちを引き取ってくれる人や団体をずっと探していました。引き取り先が決まると、譲渡へ向け、犬たちの人なれ訓練が始まります。その訓練をするなかで犬たちが吠えてくるのは、自我が出てきた証拠です。よかったなと思いながら見ていました」(伍代)

保護犬も参加してのイベントとなった
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ピースワンコ広報の渡辺佳乃子さんによると、環境省の最新データでは動物愛護センターに収容される犬の1割が飼い主に連れて来られた犬で、残る9割が飼い主不明の犬、つまり野犬や“捨てられてしまった子”なのだそうだ。伍代が憤る。

「癒しとして犬がほしいからと、自分本位に飼うことに口は挟みません。だけど興味がなくなったらほったらかして、ワンちゃんを裏切ることだけは本当にやめてほしい。飼い主が突然死を迎えてしまった以外の放棄は、絶対にあってはいけません。安易に買えない規制も検討が必要でしょうし、ペットを迎えるならば、その子と“一生家族”の覚悟で添い遂げてほしいです」

この日のイベントには腸内細菌の重要性を熟知した消化器外科医が作ったヨーグルト『神グルト』(神楽坂乳業)のブースもあり、犬用も販売されていた。開発者の林和彦さんも保護犬を飼っているという。

「子犬を息子が歌舞伎町から保護してきました。たまたま訪れた店に灰皿に水を入れて飲まされている子犬がいて、聞けば、放置された子犬をどうすることもできず、とりあえず店においていると。最初はガリガリで落ちているものは何でも食べた。でも、水はなかなか飲もうとしない。おそらく灰皿で水を飲まされていたからでしょう。今でもあまり飲まない子なので、ヨーグルトを水に入れて、あげるようにしています」(林さん)

飼い主が手放すには、経済的以外にもどんな理由があるのか。ピースワンコで活動して5年目の上廣元基さんは、「病気や高齢で医療費がかさむケースや、気難しくて手に負えないからと手放すケースもあります。触ろうとすると噛みついてきたりして、虐待されて気性が荒くなったのだろうなと推測されます」と明かす。

虐待は心身への暴力だけでなく、ネグレクト(飼育放棄)も含まれる。神石高原シェルターを担当する芦塚望美さんは、“無意識の虐待”の怖さを挙げた。

「飼い主を噛んでしまって捨てられた子もシェルターへ来ますが、しっかり運動と食事をさせてあげるだけでも 、たいていの子は全然噛まなくなる。本来は噛まない子たちなんです。例えば、運動がたくさん必要な犬種なのに室内でずっと過ごさせていることを“ネグレクト”だと認識していない飼い主は、意外といると思います」

いまだ年間2000頭以上が殺処分されているという
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見た目がかわいい、ブームだから、といった理由で飼うことも問題だ。

「近年、柴犬などの日本犬は世界的にも人気が高いですが、ちょっと気難しいところがあり、実際に保護されることも多いんです。柴犬は繊細な性格で過度なスキンシップを嫌うので、噛まれた飼い主が“こんなはずじゃなかった”と、放棄するのでしょう。性格や特性はネットで調べればすぐ出てきますから、飼う前に調べて、その子と幸せに暮らせるか見極めて迎えてほしいですね」(芦塚さん)

飼い主の気持ちは犬たちに伝わる――。上廣さんもそう語り、「心に傷を負った動物でも、時間をかければまた人間に心を開いてくれる。保護動物を迎える選択肢が当たり前にある、そんな社会の実現を願っています」と加えた。

伍代は保護犬の撮影で「敵意、おびえ、寂しさ、愛を欲する目」を捉えようとしてきた。それは「人がそうさせてしまった」と訴えるため。ネグレクト、さらに踏み込み「殺処分」も伝える必要を感じている。

「ピースワンコさんは殺処分ゼロに取り組み、広島県内では2016年からゼロを継続しています。でも、全国的にはまだ残っている(2023年度の犬の殺処分数は2118頭)。

殺処分の撮影は簡単じゃありません。処理場へ部外者は入れていただけないし、私もいざ犬たちの遺体に直面したら撮れるかわかりません……それでも、残さないと、知らせないといけない。戦争をしてはいけないのと、同じことです」

保護動物の存在をまずは知ってほしい。その先で保護動物を取り巻く環境に関心を寄せてほしい。飼育を放棄しない、里親として迎える、預かりボランティアをする、保護活動を支える寄付をする。保護動物のために、誰もがやれることがある。まずは一歩踏み出してもらえたら――。その想いで保護犬活動を続けていくと、伍代は語った。

イベントの様子
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今後も伍代は保護動物の問題に取り組んでいく
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