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厚労省が美容医療クリニック約3800を全国調査、「公的報告制度」創設に向けた動き本格化 2024年の検討会を踏まえてまずは実態を明らかに

厚労省が美容医療クリニック約3800を全国調査(picturedesk.com/時事通信フォト)
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 厚生労働省は2025年11月18日、美容医療の安全性確保に向けて、美容クリニックを対象とした全国規模の実態調査を開始する。

 2025年11月5日、同省が学会に対して協力依頼を行い、関係学会がその情報を公表した。

制度創設へ向けて、国の動きが本格化

・背景→厚生労働省は2024年、「美容医療の適切な実施に関する検討会」を開催し、安全性と質の向上を目的とした対策を検討。
・今回の調査の目的→報告内容・公表項目を決めるための基礎データを得ること。
・厚労省の対応方針→回答数が少ない場合には、報告・公表の範囲を拡大する可能性を示唆。

 ヒフコNEWSで2024年に継続的に伝えたが、厚労省は同年に「美容医療の適切な実施に関する検討会」を開催し、美容医療の安全性と質を高めるための対策に乗り出すことにした。

 その柱の一つとなったのが、美容医療を手掛ける医療機関が、定期的に情報を報告する制度を作ることだ。この制度では、年に1回、美容クリニックなどが国などに医療施設の情報を提供するという、頻度については示されていたが、何を報告するか、公表されるかなどは明確にはなっていない。

 厚労省によれば、報告内容と公表内容を決めるための検討材料を得るのが、今回の調査と位置付けられる。

 同省は、11月18日~12月26日の間に、美容医療を実施している約3800の医療機関を対象に調査を実施すると示している。医療機関の基礎情報から、実施状況、質を担保する取組など、幅広い情報を調査では得たい考えだ。

 美容クリニックの調査をめぐっては、従来、厚労省が調査を実施しているが、回答率の低さが課題と指摘されている。

 今回、調査開始にあたり、厚労省は回答数が少ない場合、報告や公表の範囲を広げざるを得ないという方向性を示している。

 調査の協力が得られなければ、美容クリニックは、より多くの情報を公表するような制度になる可能性もある。

 回答内容は統計処理され、個別の医療機関が特定されることはないと示している。将来の制度に直接影響することから、業界にとっては重要な調査になるのは間違いない。

美容医療の情報公開進む方向

・今後の見通し→今回の調査を踏まえ、美容医療に関する情報が一定範囲で公開される仕組みが整備される方向。
・情報公開の意義(利用者側)→どのような施術を行っているか、安全性・質の確保体制などの情報が増えることで、 施術を受ける側にとって有益な判断材料となる。
・懸念点(提供者側)→美容クリニック間の競争がある中で、診療実態の公表に慎重な姿勢を取ることも想定される。

 今回の調査を受けて、今後、美容医療の情報が、一定の範囲で公開されるような仕組みはできる方向と考えて良いだろう。

 美容クリニックが、どのような施術を手掛けているのか、また、安全性や質を高めるための体制はどうなのかなど、施術を受ける側からすると情報は多いほど、施術を受ける側にとって有益だと考えられる。

 一方で、美容医療を提供する側からすると、例えば、医院同士の競争がある中で、診療実態の公表に慎重になるのも自然なことだと予想される。

 今後、調査の結果を踏まえて、どのような情報公開の仕組みができるのかは注目される。今回の調査は、美容医療の質の底上げやトラブル抑制に向けた第一歩ともいえる。

参考文献

令和7年度 地域医療基盤総合推進調査事業 『美容医療の適切な実施に係る公的報告制度』の 検討に向けた美容医療の実態調査 ご協力のお願い

直美の問題は美容医療の枠にとどまらない対応注目、「医師偏在対策」関連会議に議論のバトン渡る、「美容医療の適切な実施に関する検討会」より【編集長コラム】


【プロフィール】 星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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