
「腰やひざ、肩の痛みがマッサージでは全然改善されない」というあなた、まずケアすべきは「足首」かもしれません。足首は痛みやむくみ、冷えなど体の不調をはじめ、健康寿命にもかかわる重要な部位。足首が硬いままだと、全身の痛みにもつながる。足首をほぐして、転ばない、痛くない体をつくろう。
足首は体の土台 硬いと全身に不調が
まずは正しいしゃがみ姿勢をチェック。靴を脱いだ状態でしゃがんでみよう。

【1】地面にかかと〜足裏全体が接地している
【2】上体がふらつかない
【3】ひざや股関節に詰まりがない
【4】お尻につっぱり感がない
【5】すねに痛みや張りがない
【6】つま先が外に開かない

あなたは【1】〜【6】を完璧にクリアできただろうか?
「かかとや足指が浮いてしまう、体が後ろに傾く、そもそもしゃがめないというかたも多いでしょう。『正しくしゃがむ』って、実は難しいんです」と言うのは、整体師のとも先生だ。
「足首、ひざ関節、股関節をしっかり曲げ、さらにふくらはぎや太もも、腰、お尻、背中の筋肉が柔軟に伸び縮みすることで、初めてスムーズにしゃがむことができます。ここで重要なのが、体の土台となる『足首』。こり固まると足首に連なるふくらはぎやひざなど、主に下半身の柔軟性が失われ、痛みを引き起こす。さらに体のバランスが崩れ、姿勢のゆがみも悪化するため、『やわらかい足首』が必須なのです」(とも先生・以下同)
さまざまな痛みを抱えて来院する患者を施術するも、時間が経つとぶり返す現状に直面したとも先生は、足首に注目したという。
「痛みの場所が異なる患者さんの足首を触ると、ほとんどの人がガチガチに硬かった。そこで、足首を調整してみると、患部だけを施術していたときよりも痛みが改善していきました。腰やひざ、肩の痛みだけでなく、坐骨神経痛や脊柱管狭窄症、足底筋膜炎、こむら返りなどにも効果がありました」

また、足首をやわらかくすると、冷えやむくみの改善にもなるという。
「足首の上にあるふくらはぎの筋肉は『第二の心臓』といわれ、血液を全身に送るポンプの役割を担っています。足首が硬くなると、そこと連動してふくらはぎの筋肉も固まり、血液やリンパの流れが滞って冷えやむくみが起こります。血行不良が進むと、高血圧や脂質異常症のリスクも高まる。足首の柔軟性は健康寿命をも左右するといえます」

足首から下には、曲げ伸ばしにかかわる「距骨」や「距腿関節」、足首を内外に動かし、ひねる動作にかかわる「距骨下関節」などの骨や関節がある。

これらの動きがスムーズになることで、ふくらはぎやすねの筋肉もしなやかになり血行も促されるのだ。
3種のセルフケアで足首をしなやかに
足首を硬くする原因は、日常の習慣にあるという。
「ベッドや椅子など、しゃがむ機会が少ないライフスタイルに加え、足首を使った歩き方ができなくなっていることが大きな問題です。
人は、足首を曲げ伸ばし、足指で大きく地面を蹴るように歩くのが基本。しかし、靴下や靴で覆われると足指が自在に動かせなくなり、あわせて足首や足裏までも硬くなるという悪循環が起こります。すると、足裏を地面につけながら小さな歩幅でペタペタと歩く『ペンギン歩き』になるのです」

足首を使わないペンギン歩きはむくみやすく、転びやすい。健康にいいウオーキングも悪い歩き方をすれば、かえってひざや股関節の変形を招く恐れもあるというから、改善が必要だ。
「靴選びでは、ヒールのある靴は足首が伸びっぱなしになり、スリッパやサンダルなどかかとを覆わないものは脱げないように足首を硬直させるため、どちらもよくありません。足指で蹴って歩くには、ソールのやわらかい靴がおすすめです。室内では裸足が理想ですが、冬はかかとを覆う室内履きや5本指ソックスを」

さらに、毎日のセルフケアを重ねれば、足首はどんどんほぐれていくという。
「足首ほぐしに重要な部位は『ふくらはぎまわり』『すねの筋肉』『距骨』。
ふくらはぎの下にあるアキレス腱と、すねにある前脛骨筋の両方をほぐすと、足首が動きやすくなります。
そして『距骨』は、足首の動きの軸となり、全体重を支える重要な骨であるがゆえ、傾きやすい部位。傾くとあらゆる体の不調に影響を及ぼすため、位置を整えるケアが必要です。正常な位置に戻ると足首のむくみがとれ、スッキリします」
足首のストレッチを取り入れた患者の中には血圧(収縮期)が152mmから118mm に下がった例や、中性脂肪が177mg/dlから96 mg/dlに下がった例もある。いずれも血行促進の賜物だろう。
「マッサージ院や病院などでは、時間的・診療的な制限もあり、患部から離れた足首のケアまで行きつかないことが多いため、セルフケアが重要になってきます。
次からで紹介するセルフケアは、簡単で即効性があり、1セット行えば足先がポカポカしてくるのを実感できると思います」
血行が悪くなる冬場こそ、足首ケアの出番だ。
《実践1》足首を硬くしない習慣
足指で地面を蹴って歩く
かかとから地面につき、足の親指と人差し指の間に重心をのせ、足指で地面を蹴って歩く。背筋を伸ばし、お尻を締めて歩こう。
座りっぱなしが続いたら貧乏ゆすりを
本来は30分に1回は立ち上がり、動くのが好ましいが、難しい場合は10秒ほどの貧乏ゆすりでも筋肉や関節の硬直が防げる。特に、ひざ痛の人は、立ち上がる前に行うとスムーズに動き出すことが可能に。
すき間時間にしゃがむ
1日のうちに何度かしゃがむ動作を取り入れると、足首の柔軟性アップに効果的だ。物を取るときも、ひざからしっかり曲げよう。
すき間時間につま先立ち&かかと立ち
両足を少し開き、「つま先立ち」を10秒×3回。次に足先を浮かせ、かかとを地面につける「かかと立ち」を10秒×3回。上体が前傾しないよう、壁に手をついてもOK。これで足首の関節が安定する。
室内履きはかかとを覆うものか5本指ソックスを

スリッパは足指を浮かし、足首が使えなくなるため、かかとのある履き物か、指が動かせる5本指ソックスを履こう。
次からは、足首をほぐす「超カンタンストレッチ」に挑戦!
《実践2》1回30秒!足首をほぐす超カンタンストレッチ
《実践1》習慣化できたら「ふくらはぎ」「すね」「距骨」にフォーカスした基本のストレッチに取り組もう。座り姿勢・立ち姿勢編と寝姿勢編のうち、やりやすい方を1つ行えばOK。やりすぎると筋肉を硬くしてしまうため、1回30秒以上はNG。1日1セット、多くても3〜4セットまでにとどめよう。
【基本1】アキレス腱伸ばし
「ふくらはぎの下から踵骨につながるアキレス腱(約5cmのスジ)を伸ばして柔軟性を高めるストレッチ。ふくらはぎの筋肉が働くと、足首がやわらかくなるうえ、血液・リンパの流れもよくなります」(とも先生・以下同)
座り姿勢編
【1】床にしゃがみ、背筋を伸ばした状態で右足を前に出し、左足のひざと足指はしっかりと床につける。右腕を右太ももの上に置き、左手を添える。

【2】右腕で右太ももの前面を押し、すねをぐっと前に倒す。これに合わせて上体を自然に前傾させ、右のアキレス腱を伸ばす。「ひざは内側・外側に倒れないよう、つま先と同じ方向に曲げます」。この姿勢を30秒キープし、反対側の足も同様に行う。

寝姿勢編
【1】仰向けに寝て右足を上げ(ひざが曲がってもOK)、足指の付け根のふくらんだ部分にタオルを引っかける。

【2】両手で上体の方にタオルを引き寄せる。「少しひざを曲げるように引き寄せるとアキレス腱を正しく伸ばせます」。アキレス腱が伸びていることを感じながら30秒キープし、反対側の足も同様に行う。

【基本2】すね伸ばし
「足首を曲げるのに必要な前脛骨筋(すねの筋肉)。ここが硬いと上体が前傾しやすくなり、太ももの前の筋肉も硬くなって腰痛が生じます。この筋肉をゆるめれば、姿勢と血流の改善が期待できます」
立ち姿勢編
【1】両足をこぶし1個半くらい開いてまっすぐ立つ。

【2】右足を大きく一歩前に出し、左足の甲を地面に近づけるイメージで左の足指を押しつける。「重心は右足(前足)8:左足(後ろ足)2くらいの割合をイメージしましょう」。左足首の前が伸びていることを感じながら30秒キープし、反対側の足も同様に行う。

寝姿勢編
仰向けに寝たら、右足のかかとで、左足のひざ下から足首までの範囲を30秒間、押したり、さすったりする。反対側の足も同様に行う。

【基本3】距骨押し込み
「足首の動きをなめらかにする距骨は、まわりに筋肉がないため不安定でズレやすい。ヒールの靴などで足首が伸びたままになると、距骨が前に出てしまい、足首が曲がらなくなります。距骨を正しい位置に戻すと、体中の痛みの改善につながるほか、むくみや脚やせにも効果が!」
座り姿勢編
【1】しゃがみ姿勢になり、右足を前に出して左足のひざをつく。左の足指も、ひざと同様にしっかりと床につける。

【2】距骨(足首を曲げ伸ばしすると、足首の前面に出てくるくぼみあたり)を押し込みながら、すねをゆっくりと前に倒し、後ろに戻す。この動作を30秒繰り返す。「肩に力を入れないようリラックスしましょう」。反対側の足も同様に行う。

寝姿勢編
仰向けに寝て、右足のかかとを左足首のくぼみ(距骨)に当て、かかとの重みで距骨を刺激する。これを30秒行い、反対側の足も同様に行う。

【応用1】冷え症に効く「足指伸ばし」

【1】床に足を伸ばして座り、左足のひざの上に右足をのせる。
【2】右手の親指で、右足の親指側の土踏まず(真ん中より指1本分親指側)を押さえる。左の手指で右足指を組み、足指をそらしながら足裏を刺激していく。「押して痛いところ、硬いところを見つけて刺激しましょう」。30秒行ったら反対側の足も同様に行う。
【応用2】足首太りに効く「アキレス腱つまみ」

【1】床にあぐらをかいて座り、右足のひざを立てる。
【2】アキレス腱を親指と人差し指でつまみ、1か所につき5秒×6か所、じんわりと押さえるようにつまんでいく。反対側の足も同様に行う。
◆ストレッチ整体師・とも先生
柔道整復師、鍼灸師。滋賀県草津市の腰痛専門「整体院 智-TOMO-」院長。YouTube『ストレッチ整体師とも先生』はチャンネル登録者数63万人超。著書に『高血圧、中性脂肪、腰痛がみるみるよくなる! 30秒速効!足首やわやわストレッチ』(KADOKAWA)ほか。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2025年12月4日号