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世界中で実例が検証されている“前世の記憶”を持つ子供たち 記憶に伴う感情や思考、スキルなどを一緒に備えているケースも 

世界中で“前世の記憶”を持つ子供たちがいる(写真/PIXTA)
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 人は死後、生まれ変わる。生前の行い次第で、死後は天国か地獄に行く──“死後の世界”への解釈は、古来さまざまな考えがめぐらされてきた。そして、エンタメの世界では「転生モノ」が人気となっている。死後の世界、前世、生まれ変わりなどといったものは、ファンタジーの世界のものなのか、それとも──。【前後編の前編】

「普通のサラリーマンが通り魔によって命を落とし、目を覚ますと、剣と魔法とドラゴンのいる異世界に転生していた」「愛する妻を交通事故で失った男の前に現れた女子小学生は、亡くなった妻の生まれ変わりだった」──近年、アニメ、ドラマ、漫画、小説と、あらゆるエンタメで「転生モノ」が大人気。「死後、異世界に転生」「亡くなった人が生まれ変わって再会」といった「転生」をテーマにしたジャンルでは、数え切れないほどの作品が生まれ続けている。

 そこには「さえないいまの人生をリセットしてやり直したい」「来世ではすべてがうまくいく主人公になりたい」「失った大切な人にもう一度会いたい」という人々の望みが反映され、大きなブームを巻き起こしているのだ。実際、「初めて見る場所や人のはずなのに、なぜか懐かしい」「来たことのない場所なのに地図がなくても歩ける」「夢で何度も見た風景が現実に広がっている」という経験のある人は少なくない。

 そんな中、「前世の記憶がある」という現象はファンタジーではないということが、最新科学で少しずつ明らかになってきている。

 人間の生まれる前の記憶、すなわち「胎内記憶」に詳しい、産婦人科医の池川明さんは「まったく何もないところから“転生モノ”の作品をつくり出すのは難しいはず」と指摘する。

「作者にその意識はなくとも、転生という現象へのイメージ、もしくはその人の前世の何かが記憶の断片にあり、それをもとに創作しているのではないでしょうか」(池川さん)

 事実、「転生」という現象は世界中でいくつも確認されており、その多くが「本物の記憶」としか言えないものばかりなのだ。

「前世の記憶」を持っているという子供たち

『「生まれ変わり」を科学する』などの著書を持つ、生まれ変わり現象研究国際センター学術評議会委員の大門正幸さんが、「前世の記憶」を持つ子供の忘れられないエピソードを明かす。

「ぼく、前はこのへんに住んでた。『えでぃんびあ』」。2003年、関西地方に暮らす3才のトモくんが世界地図を指さして言った。その指先はイギリスの「Edinburgh(エディンバラ)」を正しく示していた。1才になる前に、テレビCMで表示された「AJINOMOTO」のロゴを、「エー、ジェイ、アイ……」と、ひらがなよりも先に、教えてもいないアルファベットで読み上げたり、2才のときにカーペンターズのヒット曲『トップ・オブ・ザ・ワールド』を上手に歌ったりしたこともある。

 4才になる少し前、トモくんは突然母親に「にんにくをむきたい」と言い出した。理由を尋ねる母に、トモくんは「トモくんって呼ばれる前にしたことがあるんよ。イギリスのお料理屋さんの子やったんよ」と答え、普段は右利きのはずが、左手を使って上手に皮をむき始めた。さらに4才7か月の頃には、トモくんが知るはずのない、1997年に英ロンドンで起きた「サウスオール列車事故」の被害の様子を「テレビで見た。列車同士がぶつかって、火も出たし、8人くらい死んじゃった」と話したのだ。調べると、実際にその年の9月、トモくんが話した通りの事故が起きていた。

トモくんの記憶では「2階建てバスに乗り、お金はポンドだった」(写真/PIXTA)
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 トモくんの話を総合すると、彼の前世は1988年生まれの「ゲイリース」。左利きで、7階建ての建物に住み、1997年の10月、45℃近い高熱で亡くなったのだという。大門さんは一連の言動をこう分析する。

「トモくんの場合、その年齢の子が知っているはずのないことを知っていたり、できるはずのないことができているのです。さらに、本来は右利きのトモくんが、“ゲイリースだった頃”を思い出し、左手で上手ににんにくの皮をむいたという点も興味深い。

 前世の状況が今世に身体的な影響を与えているケースは少なくありません。以前、“正面から銃で撃たれて死んだ”という前世の記憶を持つ子供の額にあざがあったことがありました。銃弾が貫通した傷というものは、銃弾が入った傷より、出ていった傷の方が大きい。その子には、額のあざに対応する形で、後頭部にひとまわり大きなあざがありました。さらに調べていくと、死に方が一致する人、つまりその子の前世であろう人の死亡診断書も見つかりました」

 転生前の記憶、すなわち「過去生の記憶」を持っている子供たちの実例は世界中にあり、米バージニア大学の知覚研究所が調査しているだけでも2600人もの子供たちが「前世の記憶」を持っているのだという。

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