
病気を患った際、最初に頼れる存在が「かかりつけ医」だ。日頃から気軽に受信できるかかりつけ医であれば、患者の状態を把握しており、不調について的確な判断ができる。また、患者のストーリーを知っているかかりつけ医だからこそ、患者のどこに異変が生じているかを見つけることもできるのだ。あなたと家族の健康と命を守ってくれる「理想のかかりつけ医」と「選んではいけない医師」の見極め方を徹底取材した。【前後編の後編。前編から読む】
大きな病院には不安もある
では、どんな医師をかかりつけ医にすればいいのか。ティーズ内科クリニック院長の土山智也さんが条件としてまず挙げるのは、「総合内科的な存在」であること。
「いろいろな病状に対する知識を最低限持ち、症状を聞いたときにどんな病気か多くの可能性を考慮して、対応できる。そして場合によっては、ほかの専門の医療機関に送ることができる。バランス感覚や柔軟性が大切です。逆に、自分の考え方に固執している人は、かかりつけ医には向いていないかもしれません」(土山さん・以下同)
求められるのは、専門性に加えた幅広さ。それゆえ、知識だけでなく、地域との連携もポイントになる。多摩ファミリークリニック院長の大橋博樹さんが語る。
「かかりつけ医ひとりですべてをマネジメントすることはできません。地域の各病院はもちろんのこと、高齢者であればケアマネジャーさんや訪問看護師さん、薬局の薬剤師さんなど、地域のさまざまなリソースと連携が取れていれば安心。さらに訪問診療をしてくれる先生かどうかも、重要な視点になってきています。
患者さんは“この病気だったらあの大病院がいい”などと思ってしまいがちですが、私たち医師は“あの病院なら、教授よりもその下の先生の方が腕がいい”といった情報まで持っていますから」(大橋さん)
連携の大切さについて、くるみクリニック院長の西村知香さんも続ける。
「医師会にはその地域のいろいろな専門の医師が集まっていて、情報を交換し、連携をとり合っている。小さなクリニックが大病院に劣るわけではありません」
大きな病院の内科医をかかりつけ医にしようとするのは考えものだ。
「大きな病院は転勤が多く、担当医がころころ変わったり、診ている患者数が多いことから忙しくて話をちょっとしか聞いてもらえなかったり。それではかかりつけ医としての役割を果たせない」(西村さん・以下同)
身を乗り出す熱心さがあるか
さらに医師たちがかかりつけ医に必須の条件として挙げるのが、「コミュニケーション能力」だ。
「患者さんの話をよく聞いて、訴えを的確に理解してくれる。そのうえでいろいろな検査を提案してくれたり、“これまでの経過から、心配ないですよ”とアドバイスしてくれたり。生活習慣についても指導してくれる先生ならなお安心です。逆に、話をしてもあまり返事をしてくれなくて、“じゃあ、薬ね”みたいな先生では会話が成り立たない。新たな症状が出たときに、身を乗り出して聞いてくれるような熱心さが、かかりつけ医には必要だと思います」
患者と熱量をもって対話できる重要性を土山さんも話す。
「かかりつけ医に頭のよさや学歴はあまり重要視されません。たとえトップクラスの大学を出ていても、目の前の患者さんのタイプに合わせて適切なコミュニケーションを取れない医師はかかりつけ医には不十分です。個々に柔軟に対応する能力があるかどうかが大切です」(土山さん)

かかりつけ医の条件は、“個人の能力”だけではない。医師たちが声を揃えるのが「通いやすさ」だ。きくち総合診療クリニック理事長の菊池大和さんが語る。
「何か相談しようと思ったときに遠くまで通わなければいけないのでは大変です。大事なのは、近くにあって、予約なしで気軽に行けること。特に高齢者にとって、身近に自分の命を預けられる医師がいることは心強いと思います」
自宅から少し遠くのクリニックに相性のいい医師を見つけた場合、「それでもいいと思える医師であれば」と話すのは土山さんだ。
「少し遠くのクリニックで直接受診できない状況でも、オンラインなどで診察や紹介など、すぐ対処してもらえるならありです。いまは、マイナ保険証があれば薬の処方歴が確認できますから、ほかの病院で出された薬との悪いのみ合わせがないか、まったく同じ薬を出していないかがわかります。そういった医療のデジタル化が進んでいるからこそ、オンラインで診てもらうのはひとつの選択肢としてありでしょう」(土山さん・以下同)