健康・医療

《名医が選んだ本当に頼れる病院》肝胆膵がん編「肝不全リスクを回避するために術前に血管を詰める」

医師と患者
名医たちが選ぶ、患者の思いに耳を傾ける病院とは?(写真/イメージマート)
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がんの治療中も治療後も生活は続く。女性特有のがんなら、なおさら「治ればいい」というわけではない。患者の思いに耳を傾ける病院を、名医たちは知っている。ジャーナリスト・鳥集徹氏と女性セブン取材班が取材した。

難度の高いがんでも患者に寄り添い根治を目指して併走してくれる“いい病院”の見つけ方

「頼れる病院」といっても、どんな病気の治療を受けるかによって意味合いは異なる。同じ「がん」でも、高難度手術の評価が高い病院もあれば、女性特有のがん治療に力を入れている病院もある。ほかの持病を抱える場合には、その治療にも対応できる専門医が在籍している総合病院が“頼り”になる。

このように、間違いのない病院選びをするには、その病院の得手・不得手を理解し、病状に合った施設を選ぶことが重要だ。しかし、一般の人がそれを見極め、選択するのは簡単なことではない。

そこで、過去に本誌に登場した名医を中心に「もし自分や家族が自分の専門とする病気になったら、どの病院で治療を受けたいか」についてのアンケートを実施し、疾患別にリスト化した。加えて、最新治療や頼れる病院の選び方を教えてもらった。

今回は「肝胆膵がん」を取り上げる。いずれも治療の高度化が進んでいる。この記事を参考に、後悔のない病院選びをしてほしい。

肝胆膵がん:“術前”の散歩と筋トレで治療成績が向上

「肝臓」「胆道(胆管や胆のう)」「膵臓」のがんをまとめて「肝胆膵がん」と呼ぶ。これらの中でも、近年増えているのが「膵がん」だ。女性の部位別がん死亡数では、大腸がん、肺がんに次ぐ3位となっている(男性は4位)。増加の最大の要因は高齢化だが、食生活の欧米化なども関係があるといわれている。また、糖尿病、慢性膵炎、肥満、大量飲酒、喫煙の習慣がある人、膵がんに罹患した家族や親族がいる人は要注意だ。

早期発見の難しいがんだが、お腹や背中の痛み、体重減少、黄疸などで見つかるケースが多く、早めの検査が早期治療につながるといえる。

また、この領域で特筆すべきは手術の難度の高さ。たとえば膵がんの手術でもっとも注意すべき合併症は縫合不全による「膵液漏」だ。強力な消化液である膵液が漏れると炎症や膿瘍を起こし、命にかかわることもある。

「安全に手術を受けるには、ある程度の治療実績のある病院を選んだ方がいい。それに肝胆膵といっても、肝臓、胆道、膵臓と専門が分かれている。私は胆道の専門ですが、膵がんの場合はほかの専門医を紹介します。それくらい各分野とも専門性が高く、治療が難しい。ですから、病院を選ぶ際には担当医がどの分野が得意なのかを確認する必要があります」

そう話すのは、名古屋大学医学部附属病院消化器・腫瘍外科(肝胆膵)科長で教授の江畑智希医師だ。

江畑医師
江畑医師
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手術できる病院を集約化して安全性を高めるため、日本肝胆膵外科学会は、2008年に「高度技能修練施設」制度を設けた。高難度肝胆膵外科手術の年間実績が50例以上を「修練施設(A)」、30例以上を「修練施設(B)」に認定。また修練施設で技術を磨き、審査に合格した医師を「高度技能専門医」に認定している。

「高度技能専門医や指導医の資格を持つ医師が所属する修練施設であれば、肝胆膵がんの治療に慣れているはずです。同学会のホームページには都道府県別の修練施設と専門医・指導医のリストが掲載されていますので、病院探しの参考にするといいでしょう」(江畑医師)

肝胆膵がんの治療には「総合力」も不可欠だ。北海道大学病院消化器外科Ⅰ教授の武冨紹信医師は肝臓が専門で、肝がんの治療だけでなく、肝移植にも取り組んできた。

武冨医師
武冨医師
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「肝がん患者は肝炎や肝硬変など慢性の肝疾患を患っていることが多く、治療したと思っても、また新しいがんができることがあります。その場合、何度も切開手術を行うと負担が大きいので、多様な治療法が検討される。たとえば、腫瘍が1~3個で3cm以下の場合には、超音波で腫瘍を焼く『ラジオ波焼灼療法』が可能ですが、これは主に消化器内科で行っています。

これに対し、腫瘍が4個以上の場合や3cmより大きい場合、腫瘍に栄養を送る血管を詰めて腫瘍を壊死させる『肝動脈塞栓術』を行うことがありますが、これは放射線科が担当している。腫瘍の状態に応じて治療法が変わるので、内科、外科、放射線科などが協力して治療することが不可欠なのです」(武冨医師・以下同)

もちろん、腫瘍の位置や大きさによっては切開手術が適している場合もある。同院では内科、外科、放射線科がほぼ同じ割合で肝がん治療を行っているという。また肝移植に取り組んできた歴史もあり、肝不全に陥った場合にはその選択肢も視野に入る。さらに分子標的薬の治療も進歩した。

「難しい症例については、週に一度、各科の医師が集まる『キャンサー・カンファレンス』で治療方針を決めています。診療科を超えて協力できる体制があるかどうも、肝胆膵がんの病院選びには重要なのです」

この総合力の重要性は、江畑医師が専門とする胆管がんでも同じだ。

「私どもが得意とする肝門部胆管がんの手術は肝臓を大きく切るので、肝不全になるリスクが高い。これを回避するために、事前に放射線科医の協力で肝臓の血管(門脈)を詰めて、腫瘍のある側の肝臓を小さくし、腫瘍のない方の肝臓を大きくする処置を行います。

また、術前に5000歩歩ける人は合併症率が低いこともわかっているため、当院ではリハビリ担当のスタッフが、手術予定患者の散歩や筋トレに付き添います。そうした多職種の連携があるからこそ、私たちの術後成績も向上したのです」(江畑医師)

他院では難しいといわれた患者が、両院では治療ができ、延命につながった例も多いという。肝胆膵がんは病院選びが命を左右するといっても過言ではないだろう。

名医が選んだ「肝胆膵がん」で頼れる病院
名医が選んだ「肝胆膵がん」で頼れる病院
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協力いただいた全国の名医
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セカンドオピニオンを嫌がる医師は避ける

後悔しない治療を受けるためには、「相性や人柄が自分に合っていると思える医師のいる病院を選ぶべきだ」と馬場医師はアドバイスする。

さらに、病院の良し悪しはこんな場面にも表れる。北海道大学病院乳腺外科長で教授の高橋將人医師が話す。

「ただ専門医であればいいのではなく、ほかの施設の専門医と連絡を取り合い、常に知識をブラッシュアップしているかどうかも重要です。自信のある医師であれば、患者さんから『セカンドオピニオンを受けたい』と言われても嫌がりません。自分の診療内容をほかの医師に見られても困らないからです。逆にセカンドオピニオンと言われて怒り出す医師のいる病院は、避けた方がいい」

どんながん治療を受けるべきか。それは患者自身の価値観や生き方にもかかわってくる。治療成績や最新医療はもちろん重要だが、どんな考えで治療しているかを知ったうえで、病院選びをすることも大切だ。

◆ジャーナリスト・鳥集徹

とりだまり・とおる 同志社大学大学院修士課程修了(新聞学)。新著『妻を罵るな』が2025年12月に発売。

※女性セブン2026年1月8・15日号