健康・医療

《医師が選んだ本当に頼れる病院 心臓弁膜症編》“人工弁”に取り替える『弁置換術』では「ライフステージに応じた治療戦略を考えてくれるかどうか」がいい病院の見極めポイント

心血管疾患において“本当に頼れる病院”の見極め方とは(写真/PIXTA)
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 日本人の死因第2位は「心疾患」。ひとたび心臓が動くのをやめてしまえば、待っているのは死だ。しかし、心臓の声に耳を傾け、わずかな異変を見逃さない病院との出会いが、運命を大きく変える。あなたの“生涯のパートナー”を守る病院は、こうして見つけられる。ジャーナリスト・鳥集徹氏と本誌・女性セブン編集部が、心血管疾患において“本当に頼れる病院”の見極め方を取材。第2回は心臓弁膜症についてお届けする。【全3回の第2回。第1回を読む

気づかぬうちに進行して突然死を招く心臓弁膜症

 心臓は4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)に分かれているが、それぞれの部屋の出口に、血液の逆流を防ぐ「弁」がついている。

 その弁がしっかり閉じなくなるのが「閉鎖不全症」、石灰化して硬くなり開きにくくなるのが「狭窄症」だ。これらを総称して「心臓弁膜症」と呼ぶ。

 心臓弁膜症になると、体を動かしたときに息切れ、動悸、胸の痛み、失神などの症状が出る。ただ、高齢になると息切れや動悸をしないよう無意識に運動量を減らしたり、「年のせい」と勘違いしたりするために、病気に気づかないことも多い。放置していると急激に心臓の機能が低下し、突然死することもある。

 軽症から中等症の場合には利尿薬、血管拡張薬、抗不整脈薬、抗凝固薬などによる薬物治療が行われるが、症状が重い場合には、手術が必要になる。4つの弁のうち、特に手術の対象となることが多いのが、左心房と左心室の間にある「僧帽弁(そうぼうべん)」と、左心室の出口にある「大動脈弁」だ。

「僧帽弁閉鎖不全症」の場合には、自分の弁を残して修復する「弁形成術」が第一の選択肢となる。また「大動脈弁閉鎖不全症」の場合も、弁形成術が行われることがある。一方、「僧帽弁狭窄症」と「大動脈弁狭窄症」の場合には、自分の弁を取り除いて「人工弁」に取り換える「弁置換術」が行われる。

 中でも、特に高齢者の治療対象となりやすいのが、動脈硬化にともなって進行する「大動脈弁狭窄症」だ。この治療に関して、2013年に大きな技術革新があった。心臓カテーテルを利用して人工弁を取り付ける「経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI/TVARともいう)」が保険適用となったのだ。

豊橋ハートセンター副院長で、心臓血管外科医の大川育秀医師
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 これは足の付け根の動脈からカテーテルを挿入し、硬くなった弁をバルーンで押し広げるとともに、折り畳まれた人工弁を広げて弁のあった位置に植え込む治療法。豊橋ハートセンター副院長で、心臓血管外科医の大川育秀医師が解説する。

「弁置換術は胸骨を大きく切り開くだけでなく、心臓を止めて手術する必要があり、人工心肺が不可欠です。そのため、高齢者には負担が大きい。一方、TAVIは体への負担が小さく、次の日には歩くことができます。そのため、弁膜症の場合は手術だけでなくTAVIも選択肢に入れて、治療戦略を考える時代になったといえます」

 ただし、TAVIもいいことばかりではない。川崎幸病院副院長で心臓血管外科医の高梨秀一郎医師が話す。

川崎幸病院副院長で心臓血管外科医の高梨秀一郎医師
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「当初、TAVIは開胸手術のリスクが高い患者さんに限って行われていましたが、普及とともに適応は次第に拡大していきました。一方で、10年後、15年後といった長期的な成績については、まだ充分なデータが得られていません。

 また、TAVIは狭窄した弁を残したまま押し広げる治療法であるため、血流の出入り口は本来より狭くなります。体力が低下していて開胸手術のリスクが高い高齢の患者さんにとっては有効な選択肢となりますが、若年層の患者さんにおいては、開胸手術によって人工弁を確実に取り付ける弁置換術を選択した方が望ましいと考えられます」

 前出の大川医師も同じ考えだ。TAVI一辺倒ではなく、若い人ほど手術と組み合わせて治療選択をするべきだと話す。

「たとえば、60才未満の患者さんのケースを考えてみましょう。一般的に若い患者さんは、炭素繊維やチタンでできた『機械弁』を使用することが推奨されています。機械弁は耐久性が高く、30年、40年と持つからです。ただし、機械弁は血栓症を起こしやすいので、生涯、抗凝固薬のワルファリンをのまなくてはいけない。そのため、年を取るほどけがや病気による出血のリスクが上がります。

 それを防ぐために、劣化はしやすいけれど薬の不要な『生体弁(ウシやブタの組織で作った人工弁)』で手術をしておいて、それの働きが悪くなったらTAVIをするという方法も考えられます。このように、ライフステージに応じた治療戦略を考えてくれるかどうかも、いい病院を見極めるひとつのポイントと言えるでしょう」

名医が選んだ「循環器内科」で頼れる病院
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