
古今東西、家族関係の悩みはなくならず、とりわけ嫁姑問題は時代が変わってもなお永遠だ。実際の事件を紐解くと、深い憎しみが、一線を越えてしまう悲劇が明らかに──。
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古い町並みが残ることから「北陸の小京都」として、観光客が引きも切らない石川県金沢市。インバウンド旅行者も多く訪れる古都を騒然とさせた“強盗事件”が起きたのは、2008年11月26日の昼下がりのことだった。
市内で菓子店を営む高橋幸一さん(仮名・47才)の自宅の居間で、家業を手伝う母の康代さん(仮名・70才)が何者かに腹や背中など数か所を包丁で刺されたのだ。重傷を負ったものの一命をとりとめた康代さんは、駆けつけた警察官に「犯人は男だった」と証言。室内には荒らされた形跡があることから、石川県警は強盗傷害事件として捜査員140人を動員し、緊急配備を敷いた。
しかし、事件は意外な方向へと展開する。事件翌日、幸一さんの妻・みどり(仮名・42才)が「私がやりました」と出頭したのだ。
「みどりは事件が起きた夜、家から突然いなくなり、警察は行方を捜していました。出頭時、手首や首に傷痕があり、犯行後に自殺を図ったようです。その後、みどりは警察の取り調べに応じ、自宅近くの空き地からは犯行に使用された包丁や変装用の野球帽、マスク、かっぱなどが発見されました。康代さんに“犯人は男”と誤認させるために変装し、強盗犯に見せかけるため部屋を荒らしたそうです」(全国紙社会部記者・以下同)
みどりは事件発覚直後、病院に向かう康代さんの長女(50才)に対し、深刻な表情で「よろしくお願いします」と頭を下げるなど被害者家族として気丈に振る舞っていた。
「嫁姑という関係ですが、仲よく一緒に買い物に出かけるなど、近隣住民は2人が良好な関係にあると思っていました。幸一さんも事件後、“突然のことすぎてよくわからない。信じられない…と絶句していたそうです」
みどりは警察の調べに対し、「義母とうまくいかず、死のうと思っていた」と自殺を考えたと話す一方、変装用の帽子やサングラスを2か月前から準備していたなど、捜査が進むにつれて計画的な犯行であることが暴かれていく。
動機について「義母がいなくなればリセットできるのではないかと思った」と話したという。みどりが言う「リセット」とは何を指すのか──。
「みどりは夫の菓子店の業績不振から将来を悲観していたようです。そんな中、“義母の遺産や保険金が手に入れば危機を切り抜けられる”と考えたとみられます。当初は自らが命を絶てば保険金が入ると考えたようですが、子供がいることから思いとどまった。“遺産が目的で恨みはない”と供述したそうですが、いずれにせよ短絡的で身勝手な動機であることに変わりはありません」
けがが治った康代さんは、裁判の証人尋問で「事件によって家庭がぐちゃぐちゃになった。許せない感情を抑えられない」と実刑判決を望んだ。
裁判長は「犯行は執拗で残忍。極めて短絡的な動機に酌量の余地は乏しい」と断罪した。
※年齢は事件当時。
※女性セブン2026年3月26日・4月2日号