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《「減塩」「糖質制限」「1日3食」も》医師が「老化を加速させている」と指摘する食生活と生活習慣

頭を抱える女性
よかれと思ってやっていたことが逆効果の可能性も…知識をアップデートしよう(写真/PIXTA)
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同じ年齢なのに、ずいぶん老けている人、若々しく見える人の差は毎日の食事や運動、睡眠といった生活習慣にある。では“老け見え”する人が「食べすぎ、飲みすぎ、運動しない」人ばかりかといえばそうではない。いつまでも若々しくあろうとやっているアンチエイジング習慣が間違っていることもある。それは老化を早めるばかりか、健康を損なうことに直結するのだ。

加齢に伴って見た目や体は老化するが、そのスピードは人によって大きく変わる。「老化は生活習慣や環境の影響が大きく、ある程度はコントロールすることが可能」と指摘するのは、イシハラクリニック副院長の石原新菜さんだ。

「遺伝子がほぼ同じ双子でも、生活環境によって見た目も健康状態も大きく変わります。実際、1000人以上を約20年にわたって調査した世界的に有名なニュージーランドの『ダニーデン研究』でも、人の老化スピードは大きな個人差があると報告されています。

個人の健康状態や病気のリスクは、食事、運動、睡眠、ストレス、社会的つながりなどの生活習慣の積み重ねで大きく変わります。日々の食事やルーティンで老化のスピードは速くも遅くもできるのです」

健康長寿が目指される中で、すでにより長く元気でいられるように気をつけている人は多いだろう。ただし、よかれと思ってやっていることがかえって老化を加速させていることがある。

NG習慣をまとめたリスト
実は老化を早める健康知識の落とし穴
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糖質が不足して筋力低下

高血圧気味の夫のために減塩に気を配っていたら、予想外のことが起きたと話すのは都内に住むYさん(62才)だ。

「高血圧の薬も処方されていましたが、食事で少しでも数値を下げられたらと思って味つけは薄く、外食はしないように気をつけていました。数値自体はだんだん改善してきたのですが、夫がよくボーッとするようになり、社交的だったのに外にも出たがらなくなってしまって。まさか認知症かと慌てて病院に行ったら、低血圧になっていると言われました。

かかりつけ医と相談し、薬も減らし、料理に使う味つけも少しだけ濃くしたら夫に生気が戻ってきたような気がします」

Yさんの夫のように、年を重ねてからの減塩はかえって老化を促し、死期を早めかねない。医学博士で新潟大学名誉教授の岡田正彦さんが言う。

「たしかに塩分の摂りすぎは高血圧や血管の老化を招きますが、逆に塩分が不足すると、めまいや頭痛などが起こる危険性がある。時には意識障害やけいれんが生じるなど命にかかわるリスクもあります」

老化の原因となる「糖化」を予防しようと糖質制限するのも考えものかもしれない。

ナビタスクリニック川崎で院長を務める内科医の谷本哲也さんが指摘する。

「余分な糖が体内のたんぱく質と結びついて細胞を劣化させ、AGE(終末糖化産物)をつくり老化を促すといわれます。

ただし、糖質が不足すると体は筋肉を分解して自ら糖をつくります。筋肉量が減ると基礎代謝が下がるので、内臓脂肪が増え、糖尿病やフレイル、転倒、骨折から寝たきりリスクが上がるケースもあります」

血糖値の上昇を防ごうと、低GI食品を選ぶのも注意が必要。低GIだからと白米よりも玄米をメインにする人もいるが、胃腸が弱い人やシニアにとっては消化に負担がかかると指摘される。また玄米にはわずかながら残留農薬があり、ミネラルの吸収を阻害するともいわれており、玄米ばかりでなく白米とのバランスが大切だ。

同様に老化の大敵とされるのが「酸化」。抗酸化食品を摂ることはアンチエイジングにつながるといわれるが、そこにも落とし穴がある。

「抗酸化物質としてあげられる亜鉛やポリフェノールを多く含む食品は、果物やナッツ類など。市販のスムージーや野菜ジュースには、抗酸化物質が少なく糖分が多く含まれているものもあり要注意です。

また、ナッツ類はたしかに体にいいとされる不飽和脂肪酸が多く、ミネラルなども豊富ですが消化がよくないため、ほどほどにしましょう」(岡田さん・以下同)

カロリーゼロで糖尿病リスク上昇

「糖質ゼロ」「カロリーゼロ」をうたう食品も、果たして本当に健康に寄与するのかは疑わしい。

「糖質ゼロ、カロリーゼロといった食品や飲み物には多くに人工甘味料が使用されています。糖質摂取量を抑えられ、血糖値の上昇を防ぐといいますが、腸内細菌叢への悪影響やインスリンの分泌が促されることが指摘されている。カロリーゼロ製品に含まれる人工甘味料飲料の摂取量が多い人は、肥満や2型糖尿病の発症率が高いと示す観察研究も報告されているのです」

同様に、「無脂肪」「低コレステロール」を意識しすぎることは禁物だ。石原さんが言う。

「体全体の細胞膜やホルモンは脂肪でできているので、その材料として体に必要不可欠な栄養素です。脂肪や油そのものが体に悪いのではなく、問題なのは悪玉コレステロールを増やすトランス脂肪酸や、揚げ物をつくる過程で酸化した質の悪い油など。特に酸化した油は動脈硬化を引き起こしたり、がんの原因になるなどさまざまな健康被害をもたらします。

それらを避けて、青魚やえごま油に含まれるオメガ3脂肪酸を摂るのがおすすめです。炎症を抑える効果があり、現代の食生活では不足しがちな脂質です」

体に必要な栄養素はサプリメントなどに頼らず食事から摂るのが大切である。その食事について、朝昼晩の3食をしっかりとる習慣は、食べすぎになる場合もある。

「昔の日本人の質素な食事とは違い、現代の食生活は高脂質で高たんぱくです。生活習慣病になる人が増えている原因は、その食べている量と運動量が見合っていないこと。

運動量が少ない日や、お腹がすいていないのに3食しっかり食べると、むしろ食べすぎになってしまいます」(石原さん・以下同)

年を重ねるにつれ、たんぱく質は健康長寿につながるため積極的な摂取が推奨される。ただし、過ぎたるは及ばざるがごとし。

「たんぱく質を摂ろうと、ささ身や赤身のお肉も食べすぎれば肝臓や腎臓に負担をかけます。未消化のたんぱく質は腸内で悪玉菌のえさとなってしまい、便秘の原因にも。市販のプロテインをのむことを習慣にしている人も増えてきましたが、実は高カロリーで体重増加や、腎臓・肝臓の機能不全を招く可能性があります」

気にするべきは食事だけではない。適度な運動が必要なのは自明だが、体に負荷をかけすぎる運動を習慣にしている人はむしろ老化を早めているかもしれない。

「マラソンや筋トレなど体に負荷が大きい運動をすると活性酸素が発生するので、細胞が酸化してむしろ老化が進んでしまいます。高齢者はウオーキングのしすぎで変形性関節炎になることもありますし、1週間に合計で2時間半以上筋トレをすると、むしろ病気や死亡リスクが上がるというデータもあります。体力や年齢など、自分に合った運動量を考えて少しずつ増やしていくのが大切です」

ふくらはぎはもみすぎない

家でも簡単にできる運動をするため、通販などで健康器具を買ったことがある人もいるだろう。しかし岡田さんによれば、これらの器具を使った動きは人間にとって不自然であり、かえってけがを招く危険があるという。

「昔から時代によってさまざまな健康器具が流行り、廃れていっています。ぶら下がり健康器は肩を痛めるし、バランスボールは腰を痛める。電気で腹筋を鍛えるマシンは効果が見込めずやけどなどの事故のもとになることもあります」

バランスボールに座っている
流行りの健康器具に飛びつくのは考えものだ(写真/PIXTA)
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運動のなかでも「第二の心臓」とも呼ばれるふくらはぎが持つ、血液のポンプ機能を生かした健康法を実践している人は多い。歩行やかかとの上げ下げによるポンプ作用は血流をよくするが、無闇にマッサージすることで同様の効果を狙うのは逆効果になる。

「ふくらはぎの静脈は血栓ができやすく、もむことで血栓がはがれてしまい、血流にのって肺に詰まる『肺塞栓血栓症』になる危険性があります。時には呼吸困難になり、命の危険も。日頃から運動不足の人、あるいは長時間座っていた後などに起こりやすいので要注意です」(岡田さん・以下同)

人間にとって不可欠であり、老化を防ぐためにも重要項目である睡眠。日本人は世界的に見て慢性的な睡眠不足だとする報告は多く、加齢とともに睡眠の悩みを抱える人は多い。かといって「22〜2時のゴールデンタイム」にしっかり寝る、早寝早起きするなど“寝すぎる”のは考えもの。

「新潟大学で約2000人の追跡調査をした結果、毎日6時間睡眠の人がいちばん血管の中がきれいで健康的だったというデータがあります。むしろこれ以上寝すぎている人は、かえって病気のリスクが上がっているのです。

いろいろな理由があると思いますが、まず睡眠時間が長ければ、体を動かさない時間が長くなる。そのため血流が滞ったり、運動不足で代謝が低下するのもよくないです」

“毎日決まった時間に寝なければ”という思い込みこそ、体にストレスを与え老化を加速させることになりかねない。

健康やアンチエイジングを意識することは大切だ。だが時に“やりすぎ”てはいないか見直そう。

実は老化を早める健康知識の落とし穴

・栄養補助はサプリメントで

「エビデンス不足の製品が多い。有名どころでは関節が若返るというヒアルロン酸やコンドロイチンは効果が証明されていない」(岡田さん)

・血圧対策で減塩

「塩分は神経伝達、筋肉収縮にも必要。不足すると骨がスカスカになることも」(石原さん)

・体の「糖化」予防で糖質制限

脳は1日約120gのブドウ糖を使うので、糖質が少なすぎると疲労感や集中力の低下を感じてしまう。

・「糖質ゼロ」は血糖値急上昇を防ぐ

世界保健機関(WHO)が「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」と分類したアスパルテームなど、人工甘味料が有害と示す研究が増えている。

・「無脂肪」食品は脂肪を減らせる

味を補うために、有害と考えられる人工甘味料が使われることも多い。

・消化のため夕食は軽くする

「スープだけなど極端に軽い食事は夜間の空腹感や低血糖を招く場合があり、睡眠の質を下げる可能性がある」(谷本さん)

・朝に果物ジュースを飲むといい

「空腹時に大量に飲むと血糖値が急上昇するリスクがある」(谷本さん)

・「低GI食品」は血糖値の上昇をゆるやかにする

「たしかに血糖値は上がりづらいが、ナッツ類やチョコレートなど高脂質で高カロリーな食品もある。大切なのはGI値ではなく食品の質」(谷本さん)

・ふくらはぎマッサージで血流アップ

高齢者は筋肉や皮膚の弾力が低下し、強い指圧で内出血や炎症が起こりやすいので注意。

・睡眠時間は長いほどいい

長時間同じ姿勢でいることで、筋肉の血行不良が起き、肩こり、腰痛になることも。

※女性セブン2026年3月26日・4月2日号