
厚労省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」によると、慢性的な睡眠不足は心血管疾患や糖尿病、うつ病、認知症などのリスクを高めるという。さらに、加齢とともに充分な睡眠をとっても疲れがとれなくなる傾向に。良質な眠りのために専門家が重視しているのは目覚めの習慣だ。名医たちが実践する食生活など“最強の朝活”を紹介する。
【目次】
【食生活】朝ごはんを食べることで体温が上がり、活動的になる
眼科医の森真依さんは「起床後にコップ1杯の水を飲む」と言う。

「私はミネラル豊富なアルカリ性温泉水を飲んでいます。電解質が体液バランスや消化機能を整え、代謝促進や腸の働きを助けてくれます」(森さん・以下同)
冷たい水を飲むことは、体の目覚めだけでなく脳も目覚めさせる。
「冷水を好んで飲むのは、朝、頭をスッキリさせたいという理由もあります。冷たさが刺激となり交感神経を刺激し、集中力が高まります。
ただし、基本的に常温水がおすすめ。胃腸に負担をかけず、吸収が穏やかなので体の内側から温まりやすく、代謝アップや美肌効果、ダイエット効果、便秘改善などが期待できるからです。そのため日常的な水分補給には常温が適しています」
さらに皮膚科医の慶田朋子さんは、「朝は目を覚ますために、カフェインを摂取している」と話す。

「私は低血圧で、朝起き抜けは上が80mm未満のときもあるほどです。そのためストレッチをして、コーヒーを飲みながら音楽を聴くなどゆっくり過ごし、その後、フルーツやヨーグルトなどを食べるようにしています」(慶田さん)
体内時計を整えるためにも朝食はとってほしいと久留米大学学長睡眠専門医・内村直尚さんは言う。

「消化器官にも『末梢時計』と呼ばれる体内時計があり、一定の時刻に食事をすることで消化器官が動き、体内時計も正しく動くようになります。
食べるものはおにぎりやパンなど、何でも構いません。とにかく食べ物が消化器官を通ることが重要です。体内時計が正常に機能すれば排便作用も起き、便秘も改善されます」(内村さん)
睡眠専門医・坪田聡さんの定番の朝食は、ご飯、みそ汁、野菜、目玉焼きと、和定食スタイルだ。

「卵に含まれるトリプトファンはセロトニンの材料となることが明らかになっています。目玉焼きのほか、卵かけご飯も手軽に食べられておすすめです」(坪田さん)
「朝食にみそ汁は欠かせない」と言うのは、婦人科医の松村圭子さんだ。

「朝、温かいものをいただくと体温が上がって目が覚めます。みそには、女性ホルモンに似た働きのある大豆イソフラボンも含まれるので、更年期世代にもおすすめです」(松村さん)

内科医の工藤孝文さんは、朝食で必ずコップ1杯のトマトジュースを飲むと言う。

「トマトに含まれるGABAは睡眠の質を高めます。また、リコピンには血糖値の上昇を緩やかにし、血糖値スパイクによる日中の眠気やだるさを防止する働きがあります。GABAは1日あたり100mgを摂取するのが理想ですが、手軽なのは濃縮タイプのトマトジュース。200mlでその量を補えます。
精神を落ち着かせる効果を持つGABAを含むトマトジュースを、朝と寝る30分前に飲むことで睡眠の質が向上されるため、翌朝スッキリと目覚められます」(工藤さん)

眼科医の森さんは目のためにも朝食で野菜や果物を積極的に摂ると言う。
「ビタミンC、E、ルテイン、ゼアキサンチンといった抗酸化栄養素は、目の網膜や黄斑部を酸化ストレスから守り、加齢に伴う目のトラブルを防ぐ働きがあります。亜鉛は抗酸化酵素の働きを助け、ビタミンAは光を感じるために欠かせない栄養素。朝食には緑黄色野菜、果物、ナッツ類を意識して摂るようにしています」(森さん)
【その他の習慣】スキルアップも兼ねて行えば一石二鳥!
朝の目覚めをよくするためには「室温も重要」と脳外科医のDrまあやさんは言う。

「寝ている途中で汗をかいて起きたくないので、エアコンはかけっぱなしにしています。室温を一年中22〜24℃に保っているため、布団も一年中、同じものを使っています」(まあやさん・以下同)
いかに起きている時間に充実した時間を過ごすかを考えることが、快眠のために必要と、まあやさんは続ける。
「日中たくさん活動するとよく眠れるようになりますから、一日をなるべく忙しく過ごせるように、さまざまな予定を考えています」
小説家としても活動する神経内科医の米山公啓さんは、起床後にSNS投稿をしているという。

「ネットでニュースをチェックし、気になることがあれば、自分の考えとともにFacebookに投稿します。書くことで脳が目覚め、頭の中が整理できます」(米山さん)
松村さんは朝にスキルアップのために勉強をしているという。
「朝は集中力が高まり、ものを覚えるのに適しているため、資格修得のための勉強は朝に行うようにしています。そのお陰でファイナンシャルプランナー2級や、食生活アドバイザー2級も取りました」(松村さん)

一方、内科医の近藤千種さんは、あえて朝に何もしない時間を5分つくるという。

「ストレスホルモンのコルチゾールは朝に多く分泌されるので、静かに呼吸を整えるだけで心拍も落ち着き、肌の調子まで整いやすくなります」(近藤さん)
身支度の際に好きな音楽を聴いて気持ちを高めるというのは森さんだ。
「一日の活力を与えてくれる音楽を聴いています。心地よい音楽を聴くことでドーパミンやセロトニンの分泌が促され、脳の報酬系ホルモンも活性化される。これでストレスホルモンのコルチゾールが減少し、自律神経のバランスが整って集中力の向上につながります」(森さん・以下同)
さらに、森さんは好きな香りを身にまとい、気持ちを整えると言う。
「その日の気分で好きなパフューム(香水)を選び、シュッとひと吹きしています。医学的には、香りが嗅覚を通じて脳の感情や記憶を司る辺縁系に作用し、ストレス軽減や気分の安定、集中力向上に寄与するとされています」

朝起きるとすぐにスマホをチェックしたり、テレビをつける人は多いだろう。できればその習慣は控えた方がいい。
「長時間、画面を見続けることで瞬きの回数が減り、涙が蒸発するため角膜の表面が乾燥してしまい、ドライアイの原因となります。また、ブルーライトも眼精疲労の一因となることがあります。画面を見る際には、20分ごとに6mほど先を見る、『20-20-20ルール』がおすすめです」
朝から活動的に過ごすことは質の高い睡眠につながり、気分よく翌朝を迎えて、一日を始められる。さっそく、快眠生活を始めよう。
最強の朝活!名医たちのお目覚めルーティンまとめ
眼科医・森真依さん
・カーテンを開けて朝日を浴びる
・ミネラル豊富なアルカリ性温泉水を飲む
・好きな香水をつける
・一日の活力を与えてくれるような音楽を聴く
皮膚科医・慶田朋子さん
・起きてすぐに朝日を浴びる
・簡単なストレッチをする
・コーヒーを飲む
・朝ごはんにフルーツとヨーグルトを食べる
内科医・工藤孝文さん
・朝起きてすぐに朝日を浴びる
・朝の散歩を日課にする
・トマトジュースを飲む
・起床後1時間以内に朝食を食べる
婦人科医・松村圭子さん
・起きてすぐに朝日を浴びる
・熱めのお風呂に10分入る
・みそ汁を飲む
・朝から勉強をする
脳外科医・Drまあやさん
・一年中、室温を22~24℃に保つ
・日中たくさん活動する
神経内科医・米山公啓さん
・空腹で起きるようにする
・アラームより先に起きる
・起きてSNSに投稿する
・バナナを食べる
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2025年11月27日号