
血液と血管は、若さと健康の要。同時に、24時間365日、私たちの体に酸素と栄養を絶えず届けてくれている「無休の臓器」でもあり、人生100年時代のいま、血液と血管は100年=87万6000時間ものハードワークをこなしている。血液と血管を長持ちさせられれば、いつまでも若く、元気に長生きできるのだ。そのためにすべきことを専門家に取材した。【全4回の第1回】
シミ、しわ、白髪が増え、健康診断の数値も年々悪くなっていく──年齢を重ねれば誰もが「老い」のサインを感じ取る。だが、老化の速度は一人ひとり異なる。同じ年齢でもいつまでも若々しく元気な人もいれば、早くに筋力や認知機能が衰え、重篤な病にかかってしまう人もいる。この差を大きく左右すると考えられるのが「血管」と、そこを流れる「血液」だ。
池谷医院院長で循環器専門医の池谷敏郎さんは、血管を桜の木に例える。
「心臓に直結する大動脈を幹として、血管は全身の末端に向けて次第に枝分かれしていきます。花が咲く枝の先端に当たるのが、細い末梢血管や、さらに細い毛細血管です。年老いて末端まで栄養が届かなくなった桜の木にきれいな花が咲かないように、血管が衰えて先端の細い血管の血流が悪くなると、肌や髪に栄養が行き届かなくなり、シミやしわ、白髪、薄毛のほか、手足の冷え、肩こり、腰痛といった老化現象が起こります。さらに、脳卒中や心筋梗塞などの致死的な血管事故まで引き起こすことになるのです。
裏を返せば、血管年齢を若く保つことで、若々しく元気に、健康寿命を延ばせるということです」
100才まで長持ちする「長生き血管」「長生き血液」を手に入れることこそ、健康長寿の秘訣なのだ。
血管の内側にプラークがたまっていくことで動脈硬化が進む
「長生き血管」のもっとも大切な条件は「動脈硬化がないこと」だと、医師たちは口を揃える。動脈硬化とは、血管のしなやかさが失われ、硬くなっていくこと。循環器専門医の渡辺尚彦さんが説明する。
「加齢やそれに伴う高血圧の影響で血管の弾力は少しずつ失われていきます。さらに血管の内側に『プラーク』と呼ばれるコレステロールなどの脂質がたまって血管が狭くなると、血液の流れが滞りやすくなり、動脈硬化が進んでいくのです。
この状態が続くと全身の血流が悪くなって心臓への負担が増し、やがて脳梗塞や心筋梗塞などの重大な血管性疾患を引き起こすほか、脳の血流が悪くなれば認知症リスクも高まります」

動脈硬化を悪化させるプラークのリスクが上がるのは40代からだと話すのは、東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信さんだ。
「血管の内側には、若い頃から少しずつプラークがたまり始めます。20代のうちは血管が柔軟なので、大きな問題になることは少ない。ですが、40代を過ぎると血管が硬くなりやすいので、一気に動脈硬化が進む傾向にあるのです」
特に注意が必要なのは、50才前後の女性。閉経後に女性ホルモンの「エストロゲン」が急激に減少するためだ。東丸さんが言う。
「エストロゲンには悪玉コレステロールを減らす作用があるため、減少するとLDL(悪玉)コレステロール値が上がりやすくなり、動脈硬化のリスクが高まります。事実、閉経後の中年女性は約3分の1が脂質異常症といわれています」