《後悔しない最期のために「60才ではじめること」「70才でやめること」》60才から意識したい“貯筋”と“たん活”、健康診断で“数値”ばかりにとらわれるのはNG

人の一生=100年を1日に置き換える「人生時計」の考えでは、70才はまだ「午後5時」にあたる。仕事や家事をようやく終えて、自由時間を迎えたばかり。悔いのない最期のために、誰とどこへ行くか、何をするか、そして何をしないか、すべて自分で選び取ろう。そこで医師や専門家に「60才ではじめること」「70才でやめること」を取材した。【全3回の第1回】
健康診断はもう気にせず好きなように食べて、飲んで、動く
男女ともに平均寿命が80才を超えた現代では、60代、70代ではまだまだ「人生の終盤」には早すぎる。むしろ最期を迎える瞬間に「もっとこうすればよかった」「あんなこと、しなければよかった」と後悔することなく、「いい人生だった」と思えるための“第二の人生”のはじまりだ。
とはいえ、体が衰えているのは事実。だが、健康でなければやりたいことも満足にできない。70才になってからは、定期的な健康チェックの重要度が増す。だが、血圧や血糖値などの「数値」にばかりとらわれるのはやめるべきだ。高齢者専門の精神科医である和田秀樹さんが解説する。
「そもそも“血圧や血糖値を下げれば健康に長生きできる”という証拠はありません。欧米で行われた大規模比較調査では、血糖値は『ゆるく』コントロールした方が、厳しく管理した場合に比べ20%も死亡率が低くなりました。数値を保つためのがまんはむしろストレスになり、健康を害する恐れがあります」
70才以降に気にするべきは、がん検診のみ。医師・作家で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實さんが言う。
「70才以降は、健康診断や人間ドックの結果はあまり重要ではなくなります。しかし、がん検診は大切。がんは初期で見つかれば完治の可能性が高い一方、進行してから見つかると治療が苦しく、医療コストも増すからです。女性の5大がんといわれる大腸、肺、胃、乳、子宮のがん検診は毎年受けてほしい」
60才からはそれまでと比べて体力や健康状態のリスクが上がる。
「60才からは貯金ならぬ“貯筋”をはじめましょう。文字通り、体に筋肉を蓄えることです。何才になっても自分のやりたいことを続けるには、お金以上に筋肉が必要なのです」(鎌田さん・以下同)
現在77才の鎌田さんは10年ほど前からプライベートジムに週2回通い、貯筋に励んでいるという。
「ウエイトトレーニングとともに趣味のスキーも続けています。貯筋は、80代になっても楽しく生きるための投資です。とりわけ肝心なのは下半身の強化なので、まずはスクワット(図参照)からはじめてみてください」

呼吸法もおすすめだ。帯津三敬病院名誉院長で医師の帯津良一さんが言う。
「おへその下の『丹田(たんでん)』に力を込めて深く長く息を吐き、鼻からゆっくりと吸う腹式呼吸をはじめましょう。10分行うだけで全身の緊張が解けてリラックスでき、代謝と血流が整う。呼吸は最高の健康法なのです」
年を重ねるとどうしても食が細くなりがち。だからこそ、60代からはとにかく“たん活”を意識すべきだ。
「たんぱく質は、筋肉や骨の材料になる大切な栄養素です。高齢者は肉類を控えるべきだと思われがちですが、私は高齢者こそ、たんぱく質をしっかり摂るべきだと考えます。特に朝食でたんぱく質をたっぷり摂ることを意識してください」(鎌田さん・以下同)
60才を超えてからこそ「過度な節制をやめて、おいしいものを好きに食べた者勝ち」ともいえる。
「とんカツでも焼き肉でもラーメンでも、まったく食べずに節制するよりも、好きなときに食べる方がずっと元気でいられます。70才を過ぎたら、食事の量が自然と減るのだから“食べたいものを食べる”ことがむしろ効率的に栄養を摂るポイントになります」
年齢を重ねるほど増えていく薬も、ストレスになるくらいならやめたり、減らしたりする選択肢もある。
「70代にもなると高血圧や高コレステロール、便秘や不眠などは当たり前。日本ではそうした症状一つひとつに薬が出て多剤併用になりやすく、かえって健康を害する恐れもある。過剰な薬は断薬、減薬を検討すべき」(和田さん)
ただし、自己判断でいきなりすべての薬を断つのはもちろんリスクがある。
「薬をやめるなら、まずは医師に相談を。やめた後も定期的に血液検査などを受け、影響を見極めながら進めていきましょう」(帯津さん)
(第2回に続く)
※女性セブン2026年4月30日号