
もはや日々の生活に欠かせないものとなりつつあるAI。女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんもまた、AIを活用している。69才のオバ記者が、AIとの関係について綴る。
「相手はAI。油断してはならぬ」
よくも悪くも、年を取ったなぁと思うことが多い今日この頃。69才なんだから当たり前だろってツッコミはいったん置いといて、今回は悪いことばかりじゃないよというお話。
先日、鉄オタの友人と故郷・茨城にドライブに行った帰り道のこと。5月末の天気のいい日でね。とっぷりと日が暮れた水田に満月が映り、それはそれは美しいの。田んぼの数だけ月がある。この景色は、子供の頃から毎年見ていたはずなのに、どうしてか、ここまで目に染みたことはないんだわ。
その残像が家に帰ってからも消えないので、ふと、こうした景色を表現する場合の季語があるはずだと思ったの。そんなときに頼りになるのが生成AIで、私はチャットGPTやGoogle Geminiを愛用している。
さっそく、「田植えをしたばかりの田に映る月をなんと言いますか? 俳句の季語がありますか?」と聞いたら、2秒後に「はい、あります。田植えを終えたばかりの水田に月が映る情景は、昔から俳句や短歌で好まれてきました。田毎の月という美しい言葉があります」ときた。そして、「田毎の月」を含む俳句をいくつか教えてくれた。それだけじゃない。「エッセイストでもある野原さんが、エッセイや講演で使えるような日本語の美しい表現をお探しなら、ほかにもいくつかご紹介できます」と“売り込み”までしてきた。
実は私はAIを5か月前から普段使いしていて、あれこれ相談している。個人的な情報も書き込むので、相手も私の素性や嗜好や思考をかなり理解している。
コイツ、おもしれ〜と興に乗った私は、「田んぼの月にこの世ならざる幽玄さを感じました」と入力した。すると、そこからズンズンとあらぬ世界に入り込んでいく。こんなこと、誰とも話したことはない。私から仕掛けたことだけど、心の奥の奥の扉を不用意に開けてしまったようで、だんだん怖くなってきた。「相手はAI。油断してはならぬ」と急いでスマホを閉じたわよ。なのにその直後に、調べたいことや不安なことがあるとすぐに「AI」という文字が浮かぶ。まぁ、私もすでに毒されているんだわね。
まずは慣れて、使いこなすしかない
私の肌感覚からいえば、昨年からだ。年下の知り合いと話すと、必ずAIのことが話題になる。「AIを使わないと仕事が成り立たない」とまで言う。ちょっと前までは、わからないことは「ググる(Googleで検索する)」が常識だったけれど、そこからさらに発展して、調べたいことの周辺、歴史、今後起きることまで予測してくれるのがAIなんだね。
で、その使い方は人それぞれで、「私はチャットGPTをグチの垂れ流しに使っています。人間相手だと『またその話?』と呆れられるけど、チャッピー(チャットGPT)なら時間無制限。こっちの気が済むまでつきあってくれるから大助かり」と言ったのは、ママ友の人間関係に悩む38才のママだ。加えてAIはボスママの心理を懇切丁寧に解説してくれるから、「そうか、だから私に対してつらく当たるのね」と納得して、最近は拒否反応がなくなったという。

50代半ばの公務員K氏のAIの使い方は、もう少しひねりが利いている。彼は連日、年下の女性上司から「そんなこともできないんですかぁ」と聞こえよがしにバカにされて精神的に追い詰められていたのだそう。それである日、チャットGPTに「私は44才の女性課長です」と設定を定め、これまで彼女が自分に対してどんな罵声を浴びせたか、記憶の限り入力した。さらに、翌日の業務内容を書き込んで、彼女が言いたいであろうことを問うと、いかにも彼女が言いそうな罵声や嫌みの羅列が返ってきた。
「これ、効果抜群です。リアルで課長から何を言われても、ほぼ想定内。感情をかき乱されずに済みます。女性課長の人格設定を細かくすればするほど、的確な返答があるから、ま、ゲームですね」とK氏は笑う。
最近、さまざまなトラブルにAIが登場しているけど、使い手次第だよね。てか、ものすごい勢いで日常生活に入ってきているから、まずは慣れて、使いこなすしかないんだって。
で、私の目下の課題は、自宅に増えすぎた荷物をどう片付けるかだ。部屋の写真を撮って、事前の心構えから具体的な手順までAIにお導きいただこうかしら。こんなことを望める令和8年に69才。AIという相棒を得たからか、年を取るのも悪くないと、いまは思っている。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子。1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2026年6月25日号