
「相続」はいずれ誰もが経験するもの。わかっているのに、いざそのときになると多くの人が慌てふためき、仲がよかったはずのきょうだいが揉めたり、相続税で大損したりしてしまうことも少なくない。トラブルを未然に防ぎ、後悔なく相続を終えるためには、前もって話し合っておくことが重要だ。相続手続きで失敗しないための「家族会議」はどう開き、何を決めればいいのか、専門家が解説する。【全3回の第3回。第1回から読む】
会議のメリットは家族全員の本音を知ることができる点
会議をスムーズに進めるためには、話し始める前に「相続で争わず、誰も損しないようにしたい」と、目的を明確に伝えること。そして、全員が発言できる空気をつくることだ。『円満相続のための家族会議の始め方』の著者で司法書士・行政書士の太田昌宏さんが話す。
「家族会議の最大のメリットは、家族全員の本音を知ることができる点にあります。外食時など、自宅ではない場所で行うなら、他人を気にしなくていいように個室を選んでください。
会議中は、誰か1人に発言が集中したり、一部の人間が独善的に仕切ることのないよう気を配りましょう。
“うちの家族はみんな仲がいいから”という楽観視は禁物。どんなに仲のいい家族でも、相続の場ではつい本音が出るもの。想像ほど円滑には進まないことを前提に臨んでください」

忘れてはいけないのは、親の財産はあくまでも親のものだということ。親子ともに共通認識としておこう。相続・終活コンサルタントで行政書士の明石久美さんが言う。
「子供側は、もらいたい主張ばかりしないこと。まずは両親の意向を聞くスタンスを貫いてほしい」(明石さん・以下同)
会議が終わったら、記録を残すこと。後から「言った、言わない」で揉めるのを防ぐためだ。誰が参加してどんな結論が出たか、積み残しの課題は何か、簡単な備忘録程度でもいいのでノートにまとめておこう。その上で、会議は一度で終わりにせず、必要に応じて2回目、3回目を開くことも大切だ。
「固定資産税の評価替えや税制改正のほか、体調や環境の変化などを受けて気持ちや考えが変わったタイミングで、都度見直しを。状況が変われば、考えも変わるのが当たり前です。
意見がどう変わったか、なぜ変わったのか、みんなが納得する説明ができれば大丈夫です」
病気が判明した、身近で相続トラブルの話を聞いた、本や雑誌を見たなど、きっかけは何でもいい。
「1回目の会議では、財産の概要と相続人の確認、懸念事項の洗い出し、各自の意見と要望の把握までできれば理想的です。
2回目以降は、1回目で出た問題や疑問を専門家に相談した結果の報告や、その後の変化による方針変更、具体的な対策の決定などに進むといいでしょう」(太田さん)
「まさかわが家が」「大きな資産がないから」という考えは禁物。事前の綿密な準備とコミュニケーションが、円満な相続への足がかりになるのだ。


※女性セブン2026年6月25日号