
鹿の骨で吉凶を占っていた弥生時代から約2000年。科学が発達し、かつて神秘とされた現象の多くが解き明かされてきた。それでも“非科学的”とされる占いは消えることなく、時代ごとに姿を変えながらいまも私たちの毎日に息づいている。私たちを魅了し、時に未来を託されてきた占いの歴史をたどる。【全4回の第3回。第1回から読む】
占いをカウンセリング代わりにして決断を後押ししてもらう
かつて天皇のまつりごとを支えた日本の占いは、時代とともに政治から切り離されて大衆化が進行し、現在の巨大市場に発展した。
占いのエンタメ化が進んだとされる現在、私たちは占いに何を求め、なぜ夢中になってしまうのか。
公認心理師の山名裕子さんは「4つの理由がある」と指摘する。
「まずは安心感です。漠然とモヤモヤしていることを占いにより言語化して道筋を示してもらうことでスッキリして安心できる。2つめは意味付けで、自分がつらかった事柄に対して“それにも意味があったんです”と意味付けしてもらうことで、納得感を得られます」
3つめは自己理解とアイデンティティーの確認だ。
「“あなたはこういう人です”と言われることでアイデンティティーを確認でき、“私はこれでいいんだ”と自己肯定感が回復します。最後は決断の後押し。何となく答えは決まっているけどあと一押しほしいケースで、占いに背中を押してもらえて何かを決断できるんです。
日本にはカウンセリング文化がまだまだ根付いておらず、第三者に悩みや不安を吐き出す場所が少ないです。占いがそうした役割を担っていることも、日本で占いが人気の理由だと思います」(山名さん)

さらに占いは「偶然性」を発生させると東京大学大学院人文社会系研究科教授の堀江宗正さんは指摘する。
「占いで自分が思ってもいなかった言葉に出くわすと、“そうか。そういう考え方もあるのか”と刺激を受けて、自分の選択や判断に変化が生じることがあります。もちろん、自分の考えに合わない言葉を無視することもあるでしょう。しかし、占いに慣れている人たちは、意外な言葉をおもしろがる傾向がある。占いを強く信じていないのに、おみくじなどを好むのも、そんな偶然性を期待しているからだと思います」
では、実際に占いをしている側はどう考えるのか。会員約400名のいる日本占術協会のトップに立つ栗原里央子さんは「占いは人助けです」と語気を強める。
「私たちは人の気持ちに寄り添い、助けるために占っています。確かにスピリチュアルな能力を持つ人もいるでしょうが、私たちの占いはスピリチュアルとは違って学問であり、古代から脈々と続く研究に基づいて日々研さんを重ねているもの。しかもひとつの分野に特化するのではなく、気学と人相などの東洋占術、タロットなどの西洋占術と、複数の占いを勉強して身につけています。それが人様を鑑定する占術家たるゆえんで、占いはネットで少し学んだからといってできるものではありません」
「新宿の母」と呼ばれた栗原すみ子さんの息子で新宿の母を受け継ぐ達也さんは、「占いのデータを用いた人生相談だ」と語る。
「占い師は何でも知っていると思う人もいるだろうけど、それは大間違い。占い師はこれまで学んだことに加えて自分の経験則から相手を見るわけで、将来が予言できるものではありません。
ただし物事は大きく分けたら右か左か、上か下か、白か黒かしかなく、それほど多くの方向性があるわけではない。そこで相談者にとって最適と信じる方向性を示すのが占いであり、相手を脅かしたり苦しめたりするのは本当の占いではありません。相談者を助ける気持ちで占い、笑顔で帰ってもらうのが占い師の仕事だと私は思っています」
古代より深く日本に根付いている占い。現代ではカウンセリング代わりともなっているが、海外ではどう許容されているのだろうか。
「中国、韓国、香港、台湾など東アジアの国々は、日本と同様に占いがとても盛んです。それに対して、欧米のキリスト教圏では占いに根強い批判があります。占星術やタロットなどは人気ですが、カジュアルな娯楽と真剣な占術・魔術的な実践とに二極分化しているように見えます」(堀江さん)

(第4回に続く)
※女性セブン2026年6月25日号