
脳と体の健康維持に不可欠な睡眠。年を取るにつれ眠りに悩みを持つ人が増えているのも事実。「ぐっすり眠りたい」という人にいま必要なのは、1枚の「ばんそうこう」。貼るだけでOKというお手軽な快眠ケアで、深い眠りを手に入れよう。
筋肉をゆるめ、呼吸と自律神経を整える
「『睡眠時間は取れているのに寝足りない』と感じるときは、眠りの質を改善すべき」と理学療法士の山内義弘さんはアドバイスする。
「眠るには、自律神経を『交感神経(活動時に働く)』から『副交感神経(休息時に働く)』に切り替える必要があります。その切り替えがスムーズにいけば『寝つきがよい、深い、長い』の三拍子がそろった質の高い睡眠が取れます。
一方、スマホの見すぎやストレスで交感神経が働きすぎたり、日中の活動不足で交感神経が働かないと『寝つけない、浅い、短い』眠りになるのです」(山内さん・以下同)
睡眠障害は心身の不調や肌の老化を加速させ、心血管疾患や認知症のリスクも高まる。1日の3分の1を費やす充分な理由が、睡眠にはあるのだ。
「特に夏は要注意。自律神経は、夜に気温が下がることでも切り替わりますが、昨今の夏は夜も暑い日が多く、ますます眠りづらくなっています」
一度乱れた睡眠習慣を立て直すのは難しいが、その手助けとなるのが、1枚の「ばんそうこう」だ。
「睡眠を妨げる原因となる『自律神経の乱れ』や『無呼吸』に共通するのは、呼吸が浅いこと。浅い呼吸を続けると首や胸まわりの筋肉が硬くなり、ぐっすり眠れません。ばんそうこうを使えば硬くなった筋肉をゆるめ、呼吸と自律神経を整えて眠りやすい体に導くことができるのです」
ばんそうこうで体のセンサーを刺激
ばんそうこうで硬くなった筋肉をゆるめるメカニズムを、山内さんが解説する。
「筋肉や関節には体の伸び縮みを感知するセンサーがあり、その情報を脳に伝えることで手足をスムーズに動かすことができます。その伝達が正常な間は筋肉が正しく働いてくれるのですが、呼吸の乱れや同じ姿勢などが長く続くとセンサーが感知しなくなり、筋肉の動きがおかしくなって不調が表れてきます。
しかし、このセンサーは、“ばんそうこうが肌に触れる程度の刺激”で再起動できる。ばんそうこうを貼ることで、皮膚がほんの少し引っ張られて、そのわずかな刺激がスイッチとなってセンサーが目覚め、筋肉が本来の働きを取り戻せるのです」
貼る時間は、眠る前の1〜5分。センサーはすぐに刺激されるため、長時間貼り続ける必要はない。
「貼る方向だけ間違えないようにすれば、貼り方の技術も必要ありません。皮膚が弱い人は衣服の上から貼っても、刺激は届きます」
【原因別】睡眠の質を上げるばんそうこうの貼り方
自分の症状に当てはまる貼り方を選ぼう。ばんそうこうはレギュラーサイズ(19mm×72mm程度)が貼りやすい。
基本の貼り方
【1】起点と終点を確認し、片側の接着面の紙をはがし、起点となる部分に貼る。

【2】残りの紙をはがし、終点の方向に向けて貼る。ばんそうこうは伸ばしたり、たるませることなくまっすぐに貼ること。

【3】1〜5分おいてからはがす。
【1】自律神経の乱れ
【原因】
ストレスや強い不安感などが募り、交感神経から副交感神経へのスイッチが切り替わりにくくなっている。
【症状】
呼吸が浅く、首や肩まわりの筋肉がこわばり肩が上がりやすい。肩や首にこりがある。猫背でストレートネック気味。

首の下のくぼんでいるあたり(左右の鎖骨の内側)からおへそに向けて、2枚のばんそうこうがV字になるように貼る。胸鎖乳突筋がゆるみ、胸が広がる。
「自律神経が整っていると横隔膜を使った深い鼻呼吸ができますが、呼吸が浅い人は、横隔膜ではなく胸鎖乳突筋を使った『首呼吸』になりがち。そのために首がこり固まってしまいます。胸鎖乳突筋が硬くなると不安や緊張感が高まり、ますます眠りづらくなる。まずは首のこりをゆるめて胸郭を広げ、呼吸をしやすくすることから始めましょう」(山内さん・以下同)

【2】ホルモンの乱れ
【原因】
更年期で女性ホルモンの分泌が乱高下し、バランスが乱れることで心身に不調が出る。
【症状】
血圧の上昇、ほてり、発汗、息切れ、倦怠感、肩こりなどが起こって眠りに影響が及ぶ。

<1>手の甲側を起点に、手のひら側を終点にして、親指と人差し指の間の水かき部分にやや浅めにばんそうこうを貼る。このとき、ガーゼ部分は皮膚に触れないように、少し余白を残して二つ折りにしておく。

<2>二つ折りにしたガーゼ部分を優しく、5〜6回引っ張る。両手ともに行う。
「女性ホルモンの分泌量が減少すると交感神経が優位になり、自律神経が乱れて緊張が高まる傾向があります。この状態では無意識に手に力が入ることが多いため、親指と人差し指の間にある『水かき』をやさしく刺激すると皮膚が伸張し、手の関節のセンサーが再起動されます。不調を感じたときは、まずここをほぐしてみると緊張がほぐれることが多いですね」

【3】舌いびき
【原因】
女性は、更年期以降の筋力低下で舌が落ち込みやすく、それにより起こりやすい。
【症状】
大きないびきや無呼吸。起床時に口や喉が渇く、イガイガする。

耳たぶの前側を起点、後ろ側を終点にばんそうこうを貼る。ガーゼ部分は、イヤリングのように耳たぶの下に来るようにして、ばんそうこうの先端(ガーゼ部分)を優しく、5〜6回引っ張る。もう片方の耳も同様に。

「仰向けで寝たときに舌が奥に落ち込む人は、気道が狭くなるためガーガーという『舌いびき』をかきやすくなり、睡眠時無呼吸症候群のリスクも高まる。舌の落ち込みには自律神経の乱れも関係しているため、自律神経のツボが集まる耳を刺激しましょう。『眠りに入りやすくなった』『呼吸がしやすくなった』という体験者の声もあります。貼ったまま眠ってもOK」
【4】夜間頻尿
【原因】
下半身に水がたまる、血糖の乱れ、浅い睡眠、冷えや脱水などで起こる。
【症状】
頻尿のほか、足のつり、足の痛みが起こることもある。

ふくらはぎの真下のへこんだ箇所(くるぶしの下あたりから指4本分くらい上)を起点とし、まっすぐ下に向けてばんそうこうを貼る。ふくらはぎの外側、内側の両方に貼る。左右ともに行う。

医学的には「2回以上」で夜間頻尿と診断される。
「原因は、【1】『第2の膀胱』ともいえるふくらはぎの働き不足で、下半身にたまっていた水分が夜間に体の中心に戻る、【2】血糖が乱れる、【3】睡眠が浅く夜中に起きる、【4】筋力不足や冷え、脱水で足がつって目が覚める、の4つに分けられます。そこでふくらはぎの筋肉に働きかけましょう。効果を狙うためには、寝る3時間前までに貼ること」
特に、【4】は夏に起こりやすい。日中の水分補給や冷房対策もあわせて行おう。
【5】脳疲労
【原因】
常に不安やイライラが募り、交感神経が優位になった緊張・興奮状態が続き、リラックスできないことで起こる。
【症状】
寝ているのに疲れが取れない、夢を多く見る、朝から頭が重い、眠りが浅くなるなど。

ひざの内側にある骨の上あたりを押して、痛みを感じる箇所を起点とする。ひざを伸ばし、起点からまっすぐ下に向けてばんそうこうを貼る。左右とも行う。

「ストレスがたまると、ひざの内側にある『内転筋』が緊張することがあります。ひざの内側のくぼみを押して強い痛みを感じたら、ここの緊張をゆるめると太ももの緊張もほぐれ、寝返りが打ちやすくなります」
【6】歯ぎしり・食いしばり
【原因】
ストレスや緊張、噛み合わせの悪さ、更年期によるホルモンバランスの乱れ、飲酒・喫煙など複数の要因が組み合わさって起こる。
【症状】
顎関節症、歯のすり減り、えら張りなど。

Sサイズのばんそうこう(レギュラーサイズでも可)を用意。えらの下側に指を入れて押すと痛みを感じる箇所を起点に、やや斜め上を終点として、あごに巻きつけるように貼る。左右とも行う。

「女性に多い歯ぎしりや食いしばりは、顎関節症を発症する恐れも。下あごの奥にある『内側翼突筋』をゆるめればフェイスラインが引き上がり、小顔効果も期待できます。貼ったまま寝ても大丈夫です」
◆教えてくれたのは:理学療法士・山内義弘さん
解剖学・運動生理学・脳科学にもとづいた「山内流」健康術を発信中。YouTube「腰痛・肩こり駆け込み寺【山内義弘】」は登録者150万人超え。著書『絆創膏を貼るだけ整体』は売り上げ10万部超えの人気。新著に『絆創膏を貼るだけ快眠』(いずれもKADOKAWA)がある。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2026年7月2日号