
すべて想像の逆を行く男、高須克弥の破天荒な人生を描く連載『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』! 読めば悩みが全て吹き飛ぶ、そんなパワフルすぎる人生を、どうぞご堪能あれ。
第7話:デリカシーのない初夜の話【後編】
当時は学生運動が全盛で、全ての大学生は熱く燃えていたが、昭和医大の学生は学生運動よりもナンパや麻雀にしか熱が入らない。
東大紛争の時は東大生がやって来て、昭和の学生を強制的にデモに参加させた。皆が脅されて仕方なく参加する中、シヅは面白がってハイヒールに日傘を差して現れた。
「昭和の学生はノンポリだから、最前線に並べて、その後ろに青竹を渡して逃げないようにすべし!」
拡声器でデモ首謀者が叫ぶ。克弥もシヅも最前線に並べられ、後ろから青竹で押されて行進する。数十メートル先には機動隊が盾を並べて壁を作っている。デモ隊と警察官、合わせて数百人が対峙している。怖い。昭和医大生の足は遅くなるが、後ろから押されるので前に出ざるを得ない。その時、前方から「前進!」の号令と共に一斉に盾の壁が動いた。それを見た昭和の学生の一人が叫ぶ。
「逃げろー!」
ワーッと青竹の前の学生が散っていく。数メートル進んで止まる機動隊。睨み合う両者。克弥とシヅはデモ隊の後ろの方までなんとか逃げおおせた。肩で息をする克弥にシヅが言う。
「ねえ、克弥くん、あれ見て」
シヅが指さす方を見ると、デモ隊と機動隊の睨み合う真ん中に赤いものが落ちている。克弥は目を凝らすが何かは分からない。
「あれ、私の靴」
シヅの足を見ると、片方しかヒールを履いていない。顔に目を移すと恥ずかしそうに片目をつぶった。
「取ってきてくれる?」
──マジか。
当然行きたくないが、行かざるを得ない。
「よ、よし、取ってくるか」
克弥がデモ隊をかき分けて前に出る。それを見たデモ参加者たちがざわつく。「誰だ」「昭和の学生だ」「一人で行くのか」「すげえ」など、英雄視する声がさざ波のように押し寄せる。

克弥が最前線から前に進むと、「火炎瓶でも持っているんじゃないか?」と機動隊に緊張が走る。盾がガチャガチャと音を立て、その間からは催涙弾の銃口が克弥に照準を合わせた。
克弥はさらに一歩前に出る。デモ隊の喉がゴクリと鳴る。さらに一歩。その瞬間、ザッザッザッと機動隊が前進した。
──やられる!
高須克弥と星野シヅ、共に20歳。高須クリニック開業の11年前の話である。(第8話につづく)
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【プロフィール】
家守鷹主(いえす・たかす)/テレビ局プロデューサーとして高須克弥氏と出会い、十数年来の友人。今回、その人生を小説として描きたいと依頼したところ、高須氏は一言“YES”と快諾し、ペンネームも命名。かくして、希代の人生物語が幕を開けた。
高須克弥(たかす・かつや)/1945年、愛知県生まれ。医師(美容外科、整形外科、形成外科。学位は医学博士)。2018年に自身の全身がんを公表(発病は2014年)。
※女性セブン2026年7月23日号