
すべて想像の逆を行く男、高須克弥の破天荒な人生を描く連載『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』! 読めば悩みが全て吹き飛ぶ、そんなパワフルすぎる人生を、どうぞご堪能あれ。
第8話:逆張りで作ったアイスホッケー部の話【中編】
──メンバーをどうしようか…。
当時のナンパスポットと言えばダンスパーティか品川スケートセンターが2大聖地で、そこには必ず昭和医大生がいた。つまりスケートに心得のある奴はいる。そいつらをどうやって引き込むか。克弥はチラシにこう書いた。
「当学理事長の肝いりでアイスホッケー部が新設。入部すれば留年なし!」
大嘘である。が、単位ギリギリのナンパ連中が押し寄せた。
いざ練習してみると、ホッケー靴のブレードはスケートのそれとは全く違い、ヨタヨタとしか滑れない。これでは到底試合にならない。試合は数日後に迫っている。
──点が取れないなら入れさせなければいい。
克弥はゴールキーパーとして野球部からキャッチャーを借りることにした。ところが借りてきたキャッチャーは、滑るどころか氷上に立つことさえ出来ない。聞けば鹿児島出身で、スケートもしたことがなければ雪も見たことがないという。連れてきた克弥を見る部員たちの冷めた視線が痛い。
「と、とりあえず君はゴール前に座ってくれてればいいや」
試合当日。キーパーの両脇を数人で抱えてゴールまで連れて行き、そこに置くところから試合は始まった。会場は失笑である。

しかしいざ試合が始まると、そのキーパーは座りながらもパシッ、パシッと空中を飛んでくるパックを器用にキャッチしてみせる。まさかの活躍に盛り上がる会場。慌てた相手が作戦を変更して、パックを滑らせる。浮く球は得意だが、滑る球は野球には無い。
──どうする!?
万事休すかと思った瞬間、キーパーが前のめりに倒れた。そしてそのまま動かない。静まる会場。克弥たちがヨロヨロと集まり、キーパーを起こすと、その体の下にパックがあった。覆い被さって止めたのである。倒れたはいいが、立つことが出来なかったのだ。会場はその日一番の盛り上がりをみせた。
その後もパックが滑ってくる度に、倒れ、それをチームメイトが起こすのを繰り返すと、キーパーの目が虚ろになり、遂には動かなくなった。流石に審判が心配する。
「大丈夫か? もうやめた方が…」
「大丈夫です!」
克弥が大声で打ち消した。
結果、昭和医大の初めてのリーグ戦は3位だった。途中で東京医大が怪我で棄権したので、3チーム中3位の、つまりビリ。そりゃそうである。滑るのが前提の競技で、立つことさえ出来ない選手がいるのだから当然だ。しかしその後もこの冗談のような部活は存続し、リーグ優勝する程に成長し、今に至っている。そして当時のこの詳細は誰にも語られないまま、「初戦でベスト3を達成した初代主将」として、克弥の名は歴史に刻まれているのだ。(後編につづく)
最新話は発売中の女性セブン本誌に掲載!
バックナンバーはWEBにて週2回、木曜・月曜AM8:00に更新中!!
<<エピソード一覧はこちら>>
【プロフィール】
家守鷹主(いえす・たかす)/テレビ局プロデューサーとして高須克弥氏と出会い、十数年来の友人。今回、その人生を小説として描きたいと依頼したところ、高須氏は一言“YES”と快諾し、ペンネームも命名。かくして、希代の人生物語が幕を開けた。
高須克弥(たかす・かつや)/1945年、愛知県生まれ。医師(美容外科、整形外科、形成外科。学位は医学博士)。2018年に自身の全身がんを公表(発病は2014年)。
※女性セブン2026年7月30日・8月6日号