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「駆け落ちしようか?」家業よりも大事なもの【第8話後編】『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』

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すべて想像の逆を行く男、高須克弥の破天荒な人生を描く連載『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』!  読めば悩みが全て吹き飛ぶ、そんなパワフルすぎる人生を、どうぞご堪能あれ。

第8話:逆張りで作ったアイスホッケー部の話【後編】

 ちなみにだが、シヅは「克弥くんがスケートするなら私もしよう」という能天気な理由で、フィギュアスケート部を作った。部員はシヅとその友達の二人きり。指導者もいなければ練習もしないという、部としての体を全くなさない部だったが、これも医科系大学では日本初のフィギュアスケート部であった。

* * *

 話は少し遡る。

 二人は初めての夜に結婚を意識していた。時代の価値観のせいか、二人とも初めて体を許した相手と結婚するのが当然だと思っていた。学業には不真面目なくせにこういうことには真面目な克弥は、早速シヅの実家に挨拶に行くと言い出した。すると克弥の部屋で向かい合って座るシヅが目を伏せた。

「でも、私たち、結婚できるかな?」

 シヅは長女で、実家の病院を継ぐために医学部にいる。克弥が高須家の医業を途絶えさせてはならないように、シヅも星野家の医業を継ぐ使命があった。

 二人の間に珍しく沈黙が流れる。

「いっそ、二人で駆け落ちしようか?」

 あの真面目なシヅが人生を投げようとしている。克弥は熱いものがグッと込み上げて、「それもいいな」と思ったが、その時ふと、祖母、母、父、そして家康の顔が浮かんだ。それは医者の遺伝子を繋いできた道であり、自分が閉ざしてはいけないものだと感じた。きっとシヅさんの家にも同じように道がある。克弥は静かに言った。

「僕には4つ下の妹がいるんだ。妹が医者になるって言ったら、僕がシヅさんの家の婿養子になるよ」

 これはシヅの想いに対する、克弥の最大限の覚悟だった。

幼少期の克弥と、4歳年下の妹。(本人提供)
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「私にも3つ下の弟がいるけど…」

「え? そうなの? 医者にならないの?」

「聞いたことは無いけど…挨拶の時に弟に聞いてみよう」

 実家への挨拶で、克弥はシズの両親にとても気に入られた。星野病院は経営がしっかりとしており、シヅの数字に関する才能はこれを経営する父親から継ぎ、浮世離れしたお嬢様気質は山林王の娘だった母親から継いだことを知った。

 そんな両親のもとで育ったおぼっちゃまの弟に、シヅが直球で質問を投げた。

「医者になって家を継ぐ気はあるの?」

 当時中学3年生だった弟が答える。

「ないね。絶対に医者にはなりたくない」

 とりつく島もない答えにシヅと克弥はお互いに見つめ合った。高須クリニック開業の13年前の話である。(第9話につづく)

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【プロフィール】
家守鷹主(いえす・たかす)/テレビ局プロデューサーとして高須克弥氏と出会い、十数年来の友人。今回、その人生を小説として描きたいと依頼したところ、高須氏は一言“YES”と快諾し、ペンネームも命名。かくして、希代の人生物語が幕を開けた。

高須克弥(たかす・かつや)/1945年、愛知県生まれ。医師(美容外科、整形外科、形成外科。学位は医学博士)。2018年に自身の全身がんを公表(発病は2014年)。

※女性セブン2026年7月30日・8月6日号