《医師が解説》“薬をやめてよかった”ケース「認知症の薬をやめたら徘徊がなくなった」「PPIをやめたら胃痛が改善」…対症療法として漫然と服用するのではなく、原因を見極めることが重要

年齢を重ねると、さまざまな体の不調を感じるようになり、その結果、服用する楠井も増えてくる。しかし、体調を改善するはずの薬が思わぬ不調を招いて新たな病気につながることもある。降圧剤、便秘薬、認知症治療薬など、身近な薬を「やめてよかった」人たちの体験談には薬と賢くつきあうためのヒントがあった。【全3回の第2回】
予防のためとのみ始めた認知症治療薬が原因
高齢になると服用機会が増え、効果を期待する人も多い認知症治療薬は、かえって認知症の症状を悪化させることがある。85才の母親と同居中のKさん(56才女性)が話す。
「ある夜、母がふらふらと外に出て、そのままいなくなってしまったんです。パニックになって必死に捜すと、近所の公園で呆然と立ち尽くす母を発見。いつの間にか徘徊するほど認知症が進んでしまったのかと、ショックで言葉が出ませんでした」
不安になって、翌日急いで病院を受診すると、1週間前から予防のためとのみ始めた認知症治療薬が原因だったという。
「のみ始めで薬効が強く出すぎたことで、かえって認知機能に影響を及ぼしたとのことでした。そもそもそこまで認知症が進んでいたわけでもないのに、これじゃあ逆効果だと、すぐに認知症の薬はやめました。以降は徘徊もなくなり、認知症の症状も治まって安心しています」(Kさん)

『死ぬときに後悔しない 医者とクスリの選び方』の著者で、新潟大学名誉教授・医学博士の岡田正彦さんは、そもそも認知症治療薬は意味がないと話す。
「認知症を抑える薬は現時点でひとつもありません。にもかかわらず、認知症治療薬は一度のみ始めるとやめるどころか量や種類を増やす医師が多い。薬によって症状が悪化している可能性もあり、やめたら改善したという例もある。認知症治療薬を保険で認めていない国もあるほどです」
さらに、高齢になると思わぬ薬が認知機能の低下を招くこともある。『薬のやめどき』の著者で、医師の長尾和宏さんが説明する。
「便秘薬としてシニアのかたに多く処方されている酸化マグネシウムですが、高マグネシウム血症になって認知機能が低下することがある。認知症だと判断され、薬の副作用が見過ごされている例もありますが、きちんとマグネシウム濃度を測定し、薬の服用を中止することで認知機能が改善することがあります。薬をのんでいる人は、副作用で予期せぬ症状が現れることを認識しましょう」
PPIをやめて“体質”が改善
薬を見直すことで、それまでの体質が改善されることもある。パート勤務のSさん(63才女性)は健康診断がきっかけで、長年手放せなかった胃薬から解放されたという。
「もういい年だからと、市の健康診断を受診したところ、胃の再検査になり胃炎と診断されました。50代の頃から胃痛に悩まされ、PPIをお守り代わりに毎日のんでいましたが、胃が張って食欲がなく、調子の悪い日が続いていたんです。胃炎が続くと胃がんのリスクが高まると医師から言われ、PPIをやめて漢方薬に変えました。
すると、体質だと諦めていた胃痛はすっかりよくなり、減退していた食欲も回復。ご飯をもりもり食べられるようになりました。大きな病気になる前に、早めに薬を見直せてよかったと心底思います」

Sさんのように、ちょっとした胃の不調で処方されるPPIも、「やめてよかった」と感じる人が多い薬のひとつだ。All About「薬」ガイドで薬剤師の三上彰貴子さんは、こう話す。
「PPIをのんでいても、お腹の張りや食欲不振が続くなら、薬を足す前に原因を確かめた方がいい。ピロリ菌が原因なら、除菌治療で改善する人もいます。
服用中のほかの薬も含めて原因を確認することで、薬を見直したり減らしたりできる場合があります」
対症療法として漫然と薬を使用するのではなく、原因を見極めて治療することが重要だ。
また、不調はできるだけ自分の力で治そうと努力することも不可欠。松田医院 和漢堂院長で「薬やめる科」医師の松田史彦さんが言う。
「食事を改善する、20~30分ウオーキングをする、環境を変えるなどのセルフケアで症状を緩和し、不眠や生活習慣病を改善させることは充分可能です。薬はあくまで“期間限定で最小限”に抑えるものだと認識し、普段の生活を試行錯誤しながら見直していきましょう」

(第3回につづく)
※女性セブン2026年10月5日号