【薬と賢くつきあうために】シニアが意識すべきは“減らすこと”…医師が解説「同じ量でも高齢者では“効きすぎる”ことも」「既往歴がないなら何種類も薬をのむ必要はない」

「健康診断で引っかかったから」「病気の予防のために」「処方されて、なんとなく」──年を重ねるにつれて増えていく薬。しかし、体調を改善するはずの薬が思わぬ不調を招いて新たな病気につながることもある。降圧剤、便秘薬、認知症治療薬など、身近な薬を「やめてよかった」人たちの体験談には薬と賢くつきあうためのヒントがあった。【全3回の第1回】
「重大な副作用」の追記
8月25日、厚労省が発出した医薬品の添付文書の改定指示には、「葛根湯」に皮膚や粘膜に発疹が現れる多形紅斑、吐き気や嘔吐などを抑える「ドンペリドン」や「メトクロプラミド」に重篤な不整脈といった「重大な副作用」が追記された。その1か月前にも胃薬のプロトンポンプ阻害薬(PPI)の添付文書に、重大な副作用として低マグネシウム血症が追加されたばかりだ。
All About「薬」ガイドで薬剤師の三上彰貴子さんが解説する。
「薬を服用して不調が出ても、副作用かどうか判断が難しい場合があります。複数の薬をのんでいて症状がわかりにくかったり、長期間服用して症状が現れることもある。
多くの人に使われて初めて判明する副作用もあり、長く使われている薬でも、まだ報告されていない副作用が潜んでいる可能性があるのです」
『薬のやめどき』の著者で、医師の長尾和宏さんも言い添える。
「‘絶対安心な薬”は存在しません。『クスリ=リスク』と考え、すべての薬に気をつけることが重要です」
薬ののみすぎで腸内環境が悪化
一方で、年齢を重ねるにつれて、病院を受診する機会が増え、服用する薬の量や種類は増えていく。複数の科にまたがって受診した結果、多くの薬を服用している人は少なくない。『死ぬときに後悔しない 医者とクスリの選び方』の著者で、新潟大学名誉教授・医学博士の岡田正彦さんは、こうした「多剤併用」に警鐘を鳴らす。
「各国の研究で、6種類以上の薬を併用している人は、作用が重複し眠気やふらつきが増し、転倒リスクやフレイルを誘発することがわかっています。さらに、さまざまな医薬品によって腸内細菌のバランスが崩れ、腸内環境を悪化させることも指摘されている。薬は多くても5種類以下に抑えることが大切です」

一度処方された薬を漫然とのみ続けることも、多剤併用につながりやすい。多摩ファミリークリニック院長の大橋博樹さんが言う。
「前回と同じ処方をそのまま繰り返す、という形で出すことを医師の言葉で『Do処方』といいます。例えば、貧血を訴えて薬を処方されたら、貧血が治まってものみ続ける。患者さん側はそれで安心するし、医師側も処方を変えると再び貧血が起こるリスクがあり、問題がなければこのままでいいかなと思ってしまう。その結果、症状はなくても薬をのみ続けることになるのです」
同じ薬、同じ量でも、シニアになると薬のリスクは上がっていくと話すのは、松田医院 和漢堂院長で「薬やめる科」医師の松田史彦さんだ。
「薬は年齢によって1回の量が細かく設定されていないものがほとんどで、30才でも80才でも同量の薬をのむことが多い。しかし、年をとれば肝臓や腎臓の機能が低下し、薬を分解したり解毒したりする働きが落ちてきます。若い人と同じ量をのんでいると、薬の成分がじわじわ蓄積する可能性が高くなる。その結果、薬が“効きすぎ”てしまい、不調を招くことも多くなります。
年をとればとるほど薬が増える人が多いですが、本来は減らしていくべきだと考えることが重要です」