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《寿命があれば、どこまでも》杉良太郎「特殊詐欺撲滅」訴え警察施設200か所訪問「若い警察官の悩みも聞く」節目を迎えてなお「倒れるまでやる」

麹町署の職員たちと話をする杉
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一度一度の訪問で交わしてきた言葉が、少しずつ互いの距離を縮めた。その手応えが、いまの杉を支えている。

「視察では、一人ひとりに、とにかく時間をかけます。この人と話せるのは、一生に一度きりかもしれない。だからこそ、丁寧に、心を込めて向き合いたい。話すことで少しでも力になれたら嬉しいし、私にとっても貴重な機会なんです。“あぁ、現場の人たちはこういうことで悩んでいるのか”と、特別防犯対策監として、いい勉強をさせてもらっています。

視察で必要だと感じたことは、実行に移す。暑さ対策をはじめとした職務環境の改善もそうですし、令状のIT化にも5年ほどかけて取り組んできました。現場は、少しは仕事がしやすくなってきたんじゃないかな、と思います」

警察官はこれまで、逮捕状や捜索令状が必要になるたび、書類を携えて裁判所へ出向かなければならなかった。その負担を減らす仕組みが、いよいよ動き出そうとしている。昨年5月に成立した改正刑事訴訟法などにより、施行後は請求から発付までがオンラインで完結し、令状そのものも電子データで届くようになる。施行は、2026年度末までの予定だ。

職務環境を整えることは、未来への布石でもある、と杉は言う。

「いま日本では、警察官を志す人が少なくなって、問題になっています。働きやすい環境をつくることは、現場に立つ警察官を救うだけじゃない。日本の未来に種をまくことでもあるんです。警察官の仕事は“きつい”“大変”“厳しい”――そんなイメージが植え付けられてしまった現状を、なんとか打ち破りたい」

目指すのは、特殊詐欺の撲滅。所轄署での視察では、「どんな対策が最も効果的なのか」をめぐって、署員たちと議論を重ねてきた。

その問いは、年ごとに重みを増している。警察庁によると、今年上半期(1~6月)の特殊詐欺の被害額は、暫定値で1816億2000万円。前年同期より618億8000万円(51.7%)多く、上半期としては過去最悪となった。1日あたりに直せば、およそ10億円が奪われている計算だ。

「これはね、国民の皆さんにぜひ分かってほしい。登録していない番号からの電話には、出ないでください。AIの進化とともに、特殊詐欺の手口はますます巧妙に、多様になっています。けれど、被害に遭わないためには、あやしい電話に出なければいいだけ。だって、電話からくる犯罪なんですから。出てしまうから、特殊詐欺がなくならない。『私は大丈夫』と思っている人ほど、だまされるんです。申し込めば無料で登録していない番号をシャットアウトできます。どうか面倒くさがらずに、申し込んでください。

『+1』や『+44』から始まる国際電話番号が悪用されるケースも多い。国際電話の着信を止めておくのも、大いに効き目があります。固定電話であれば『国際電話不取扱受付センター』へ連絡すれば、すぐに手続きできますから」

昨年4月には、神奈川県横須賀市の住宅街を一軒一軒訪ね歩き、国際電話を使った詐欺への警戒を、自ら住民に呼びかけた。自分の足で出向き、顔を合わせて語りかける。それが杉の流儀だ。

全国の警察署だけでも、1140か所を超える。ゴールは、まだはるか先にある。それでも82歳は、気負う様子もなくこう言ってのけた。

「寿命があれば、どこまでも。生きている限り、続けますよ」

いまは月に4日ほどのペースで、各地の署で視察を続けているという。

「明日は、五日市警察署へ向かいます」

そう言い残し、杉は201か所目へと歩みを進めていった。