
19才から小説執筆を始め、86才でミリオンセラーを記録した不世出の女流作家・宇野千代さん(享年98)。その生き方は多くの後進女性に影響を与えたが、なかでも特別な関係を築いたのがひとりの女優だった。朝ドラでは描かれない、2人の恋多き女性の友情の物語。
幻影と対峙しながら生に執着する演技
《私は一風変わった性格の父親と、その後妻である温和な性格の継母とに育てられた》(『悪徳もまた』新潮社)
自身の両親についてこう書き残したのは、明治から平成を駆け抜けた作家の宇野千代さん。彼女の波乱の生涯を題材にしたNHK連続テレビ小説(朝ドラ)『ブラッサム』が9月28日よりスタートした。
好発進したドラマの初週で話題をさらったのは、定職に就かず放蕩の限りを尽くしながら、家族には厳しいヒロインの父・清治だった──。
第1週は山口県岩国市を舞台に、4人きょうだいの長女として生まれたヒロイン・葉野珠の苦難の幼女時代を描いた。2週目から珠を演じる石橋静河(32才)の出番が本格的に始まったが、序盤で視聴者に強烈な印象を与えたのが、清治を演じた渡部篤郎(58才)だ。
「乗馬を好み、雨のなか、珠をはだしで買い出しに行かせるなどの描写は、宇野さんが書き残した父のエピソードを忠実に再現しているそうです。渡部さんはプライベートでも乗馬をたしなんでおり、乗馬シーンには共演者たちもほれぼれ。珠の継母・リョウを演じる国仲涼子さん(47才)とともに石橋さんを支える存在です」(芸能関係者)
朝ドラ出演2回目にして、ヒロインの大役を射止めた石橋も現場で存在感を増しているという。

「コンテンポラリーダンサーとしても活動していた石橋さんは、ドラマのオープニングでも華麗なダンスを披露。座長として明るく周囲を引っ張っています。役柄にちなんで彼女が考案した『珠ちゃん体操』が共演陣の撮影前のルーティンになるなど、現場の一体感も日増しに高まっているとか。
また、岩国の方言を使いこなすため、『おとと(父)』『おかか(母)』などの言葉をスマホに録音して、発声練習をする勉強熱心な一面もあります。そんな石橋さんに経験豊富な渡部さんも一目置き、『役柄の感情と石橋さん自身の感情がうまく一致している』とベタ褒めだそうです」(NHK関係者)
鮮烈な印象を残した清治だが、実は2週目にして亡くなってしまう。しかし、その死に際もまた秀逸だと関係者は口を揃える。
「粉雪の舞うなかで、幻影と対峙しながら生に執着する演技は、まさに圧巻。撮影現場では、周囲も息をのみ、渡部さんの一挙手一投足を食い入るように見つめていました」(前出・NHK関係者)
私生活では4度の結婚と離婚
父の死を乗り越え、たくましく生きる珠。
実際の宇野さんも明治・大正・昭和・平成という4つの時代を生き抜き、自伝的小説『生きて行く私』(毎日新聞出版)は100万部を超えるベストセラーを記録。さらに、私生活では4度の結婚と離婚を経験している。
「女学校を卒業後に小学校の代用教員となったものの、同僚教師との“熱病のような恋”を機に教師を免職に。18才にして単身、京城(現・ソウル)に渡り、2度目の結婚後は札幌へ移住します。当地で懸賞に応募した小説が『中央公論』に掲載されると東京に移り、作家として本格的に始動。
執筆の傍ら、作家の尾崎士郎、画家の東郷青児、元新聞記者の北原武夫らと結婚・同棲生活を送ります。北原とはビジネスパートナーとしての結びつきも強く、4度の結婚生活のなかでいちばん長い時間をともにすることになりました」(出版関係者)
また、文学以外にもマルチな才能を発揮した。
「岩国時代は、父に『色黒』と言われる野性的な少女でしたが、大人になるにつれてモダンガールの元祖として注目を集めるように。宇野さんは小説だけでなくファッション誌や着物のデザイン・販売なども手がけ、その美貌と才能は文壇のなかでも際立っていたそうです」(前出・出版関係者)