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《心配事や不安、他人の視線、人間関係…》尽きない悩みを解消して気持ちが軽くなる10の方法を専門家が伝授

自然の中にいる女性
「クヨクヨしない10の練習」をレクチャー(写真/zon/PIXTA)
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身近な悩み事や更年期による自律神経の乱れ、老後の生活不安など、年齢を重ねてもストレスや心配事はなくなることがない。必要以上にクヨクヨしてしまうあなたに、心が軽くなる10のレッスンをご紹介。まずはこの中の1つから実践してみよう。

悩みは逃れようとすると大きくなるモンスター

「クヨクヨしやすい人ほど、嫌なことから逃れようとして、かえって何度も思い返してしまう傾向が強い」と言うのは、心理の専門家を育てる講師の宮川純さんだ。

「悪いことに、悩みを消そうとすればするほど、そのことばかりに感情が支配され、どんどん悩みが深くなってしまうのです」(宮川さん・以下同)

悩み事そのものより、「ネガティブという性格」に対する負の感情もあると宮川さんは推察する。

「世の中には『ポジティブ思考こそが最善』という風潮が長いことあり、啓発本もたくさん出ていましたから、『ネガティブ思考だから自分はダメなんだ』と、世間の風潮とのギャップに悩んでしまう人も多いと思います」

グラフの波に寝そべる女性のイラスト
落ち込みやすい人と、そうでない人の感情の波をグラフ化(イラスト/オオノマサフミ)
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メンタルコーチの一条佳代さんは、「落ち込みやすい人と、そうでない人にはある違いがある」と言う。

「悩んでいないように見える人は、基本的に感情の波が小さいと感じます。それは、問題が起きたら落ち込む前に考えを切り替え、次の行動に移すからです。一方で、落ち込みやすい人は感情の切り替えがなかなかうまくできず、浮き沈み(特に沈み)が大きくなります。実は、落ち込んでいるときほどネガティブなことが目につき、ますます落ち込むという悪循環に陥りがちなのです」

だが、「ポジティブであるべし」という考えは、昨今変化しているという。

「近年の臨床心理学では、『ネガティブな自分を否定せず、そのうえで、ネガティブもポジティブも両面持つようにしよう』という考え方が主流です。悩みを解決する前に、ネガティブな自分を受け入れる姿勢が重要です」(宮川さん)

以下に示した「クヨクヨしない10の練習」について、まずは臨床心理学の観点から宮川さんが【1】〜【3】を解説する。

【1】悩みを「コントロールできないこと」「できること」に分ける

「まずやっていただきたいのが悩みの選別。悩みのすべてを自分で何とかしようと思うかたが多いのですが、物事には『コントロールできないことと、できること』があります。あなたの悩みがどちらなのか見分けることが先決です」(宮川さん・以下同)

コントロールできないことの主な例は、天気・過去・他人だと宮川さんは言う。

「天気も過去の出来事も、私たちにはどうすることもできません。しかし、過去の失敗などコントロールできない悩みほど『消したい、解決したい』ともがいてしまいます」

「話せばわかる」「わかってもらえない」と平行線をたどる人間関係の悩みもまた、「コントロールできない物事」という原理を知らないがゆえに生まれる。

「他人を変えるのは難しい。それは、わが子も同様です。子供の未来を『こうあってほしい』と願うことはできても、完全にコントロールするのは不可能です。それを知らずに親御さんが悩むケースもあるようです」

手に負えない悩みは“棚上げする”に限る

コントロールできない悩みは、あえてほかのことを考えて「いったん保留」するのがおすすめだ。

「たとえば、おいしかったご飯や週末の予定、帰宅後の家事の段取りや家族のことなど、多方向に視点を向けてみましょう。すると、頭の中を100%占めていた悩み事の割合が薄められていきます」

それに対し、コントロールができるのは「自分の心や未来」。つまり、悩みを軽くするのは自分次第ということだ。

「悩みで悶々としそうになったら、いったん保留にしたり、予定を入れて忙しくするなど自分の心や行動を変えましょう。コントロールできない悩みは『考え方』を、コントロールできる悩みは『行動』を変えるのです」

そして、乱れた心を整えるセルフケアをひとつ持っておくことも有用だ。

【2】「食べる瞑想」などのセルフケアを行う

「不安定な体や心を整える『マインドフルネス』にはたくさんの種類があります。呼吸に意識を向ける瞑想法は代表例ですが、『食べる瞑想』というユニークな方法も。中でも、レーズン1粒をじっくりと観察し、触れ、香りを感じ、口に入れて噛みしめ、飲み込むまでを“全集中”で行う『レーズン・エクササイズ』は、意識をレーズンだけに向けることで気持ちの高ぶりを抑える効果がある。食事のときに心の中で『ひとり食レポ』をしてみるのもいいですね」

レーズンを見つめる女性のイラスト
意識をレーズンだけに向け気持ちの高ぶりを抑える『レーズン・エクササイズ』(イラスト/オオノマサフミ)
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そのほか、体の重さや熱を感じる「自律訓練法」などの方法も効果的だという。

YouTubeで「マインドフルネス」「自律訓練法」などと検索すると、レッスン動画がたくさんヒットする。まずは動画を見ながら試してみるのも手だ。

「できれば臨床心理士や公認心理師、心療内科医など、心理の専門家が提案する動画がいいと思います」

【3】親しい人に「私の長所」を5つ挙げてもらう

「親しい人に『私の長所』を挙げてもらう」という練習は、自己肯定感が低い傾向のある人におすすめだ。

「パートナーや家族、友人など気の置けない人とゲーム感覚で、お互いに言い合ってみましょう。『字がきれい』『気配りができる』『○○が得意』など、細かいことでいいんです。それを聞くと『私にもこんないいところがあるんだ』と気づいて心が軽くなります」
また、スマホの待ち受け画面を自分が元気になれたり、肯定的になれたりする画像にして、いつでも見られるようにするのも有効だ。

「昨今、『ChatGPT』のような生成AIに、人に言えない悩みや愚痴を聞いてもらう人が増えているそうです。AIは人間のように否定せず、寄り添ってくれ、いざとなったらいろいろな提案をしてくれる『ドラえもん』みたいな存在なのかもしれませんね。依存しない程度に利用するのも手だと思います」