「カロリーを意識した食生活をしている」と言いながら、朝からパスタとフライドチキンを食べ、夜は夜でしゃぶしゃぶ食べ放題を楽しみながら大酒を飲む。そんな行動が暴露されて、生活改善の指導をした医師に叱咤された経験のあるお笑い芸人・クロちゃん(42歳)。痩せたら元に戻らないダイエット法を、25kgの減量に成功したダイエット専門医の工藤孝文さんに聞いた。
第2回目の今回の相談内容は「終わりの見えないリバウンドは終わるのか?」について。ダイエットが成功しない理由に、メンタルの弱さを指摘されたクロちゃん。今度こそ、たるんだ体と心に“喝”を入れられるのか――。
* * *
工藤:クロちゃんは、いつごろからダイエットしてますか?
クロちゃん:ダイエットは好きで結構やってます。けど、ガチにやってたとしても、仕事で食べ物ロケとかあったりすると食べないといけないじゃないですか。そうなると、ちょっと気がそがれてやらなくなっちゃう。でも、それこそ学生時代108kgあったときから、どうしても痩せようと思って、毎日学校に行くふりしてジム通って。1日1時間くらい筋トレとかして、食事も、朝は味噌汁、昼も味噌汁、夜は煮干し、みたいな感じでの生活を続けたら、半年で66kgまで落ちたんですよ。
工藤:40kgも落としたんですか!
クロちゃん:ダイエット中ってお腹空くじゃないですか。空くんですけど、もっともっと空いてしまうと、かえって空腹を感じなくなる。空腹が苦しくなくなるじゃないですか。なので、苦しくなくなって、食べなくてもいいやぐらいな感じのところでキープして、ずっと生活してたんですね。
工藤:空腹を感じる手前の状態を保つってことですね。空腹を感じない状態で維持するという考え方は、ダイエットの基本ではあるんですけどね。
「40kgダイエットしたけど、体を壊してやめた」
クロちゃん:そうすると、栄養が足りなかったのか、肌が荒れたり、体調も悪くなって、筋トレして筋肉ついてるはずなのに、思ったよりも欲しいパーツに筋肉がついてこない。そして、体壊してやめたんです。
工藤:まさに、現代の若者に多い新型栄養失調の状態です。食事を抜いたり、カロリーが低いからと野菜ばっかり食べていると、筋力がどんどん落ちていく。そうすると、スタイルが悪いというか、グラマラスな体形にはならないんです。野菜だけではほとんどカロリーないですから。
クロちゃん:立ちくらみとかも結構してたんですよ。クラっと。お風呂にはいると、毎回立ちくらみしちゃってました。出るときは気をつけながら出ないと、クラっとして転んでイテーッてなってたから。そういうのもあってやめちゃいました。
工藤:そこまで続けるのが、ある意味すごい。
クロちゃん:やるって決めたらガツッてやっちゃうんですよね。“ダイエットします!”って宣言したら、カロリーをあんまり摂らないにように、ご飯もギリギリのほんとに少ない感じにしちゃうんです。そうすると、1か月で10kg以上落ちるんですよ。落ちるんですけど、その分、反動で食べちゃうからリバウンドを繰り返すんですよね。
工藤:リバウンドを繰り返してしまう人の特徴は、栄養不足がメンタルにも影響してるんですよ。ぼくも、中学のころ肥満児で、高校でモテようと思って、1日メロンパン1個で過ごしたんすよ。クロちゃんと同じような感じで…。結局、モテなかったんですけどね。
クロちゃん:同じような感じで、モテなかったってソコじゃないですからね。やめてくださいよ、ほんとに!
「たんぱく質、ビタミンB、ビタミンCは不可欠」
工藤:そうでした(笑い)。クロちゃんと同じように、立ちくらみするし、気分が落ちこむし、眠いし、ぜんぜん活力がなくなっていく。それでやめたんです。たんぱく質不足になると体が壊れます。肌も髪の毛をはじめ、たんぱく質は体を組成する重要な栄養素ですから。元気みなぎる体にするには、たんぱく質、ビタミンB(豚肉・レバー類)、野菜のビタミンCを十分に摂ることが不可欠。特に、肉とビタミンBの組み合わせがいいんです。ビタミンBは脂質や糖質の代謝を高めるのでダイエットにも効果ありますしね。
さらに、幸せホルモンのセロトニン、やる気を起こすドーパミンやアドレナリンなど、抗うつ効果のある物質は、すべて肉のたんぱく質から生成されています。ですから、肉をとらないと、元気も出ないし、うつ病なども発症しやすい。メンタルへのダメージも大きいんです。さらに、セロトニンが減ると、食べてもお腹が満たされていないと感じてしまう。過食やドカ食いになりやすい。
一方、セロトニンや脳内の快楽物質のβエンドルフィンが増えれば、心も整います。やりすぎてしまうのが悩みのクロちゃんにとって、心が安定するのはとてもよいこと。ダイエットも続けやすくなりますよ。
クロちゃん:でも、正直、メンタル面で言うと、ぼく別にメンタル弱くないと思うんですよ。ツイッターで文句1個書いただけで100、200個の罵詈雑言きますけど、クソだと思ってます。
人から何言われようが別に何ともないんですけど。結局、ぼくの場合、やりすぎちゃうんですよね。体重ガチで落とそうと思ったら、100%の気持ちで目標に向かってやるか、たいていある程度の結果出ちゃって、結果が出ると飽きてスパッ!とやめる傾向にあるんですよね。やめたとたん、たっぷり食べ始めるから、また太る。
”体重が落ちたら食べてまた太る”のはメンタルの弱さ
工藤:それ! それがまさにメンタルの弱さです。
クロちゃん:…。
工藤:でも、いいんです。ダイエットを繰り返すっていうのは、多くの人が陥ること。何回やり直してもいいんですよ。ぼくも93kgから68kgまで25kgも落としたのに、今は75kg。8kgも体重が増えてるんです。でも、また落とせばいいんで。
患者さん診てるといろんな人生に遭遇するんですが、家族が病気したり、仕事がなくなったり…。そうなったら、人間ロボットじゃないんで、心にも体にもダメージが出るんですよ。特に、メンタルはそのまま食事に反映されるので、体重の変動も大きい。だから、ダイエットにハマって、やり直して、ハマって、やり直してっていうのは、ある意味正解だと思います。
クロちゃん:体調が悪いときは、とにかく食べます。体調悪いな、風邪ひきそうだな、っていうときは、とりあえず体の内に食べ物を入れないと治らないと思うから。自分がハッピーだなと思えるように、今まで我慢してたアイス食べたり、チョコ食べたり。それは間違いではないんですね?
工藤:まったく間違いではないです。
「負のスパイラルから抜け出すにはどうしたらいいの?」
クロちゃん:けど、すっごい太るんですよね。結局、食べた1~2日で、風邪は抑え込んだぞ!と思うんですけど、体重測ってみたら2~3kg太ったりします。
工藤:ぼくもまったく同じですよ。夜中に原稿書いてて、『かるかん』ていう九州のお菓子があるんですけど、1度に10個くらい衝動的に食べて3kg太るっていうのがよくあるんで。けど、それが人間なんで、それはそれで認めてあげていいと思いますね。
クロちゃん:でも、せっかく胃が小さくなってすぐ満腹になって、お腹もあんまり空かなくなってたはずなのに、ドカ食いしてしまった時点が基本になって、ドカ食いの量で食べ続けるから、さらに太ってくことが多いんですよね。
工藤:負のスパイラルですね。
クロちゃん:食べて風邪が治ったなら、また元の体重に戻そうと頑張ればいいんですけど、許してくれないんですよ、腹が。腹が許してくれないからぁ~。
工藤:でも、肉から食べる「ミートファースト」ならできると思いますよ。
クロちゃん:ほんとですか?
工藤:だって、新日の棚橋(弘至)さんの体になりたいんでしょ。
クロちゃん:なりたいです!
工藤:そしたら「ミートファースト」は一生続けられますよ。ぼくはね…クロちゃんは70%の確率で成功するかも、と思っています。
クロちゃん:100%じゃないんですか。ちょっと待って! 70%ってリアル的な感じだけど、70%でも嬉しいんですけど、先生が考え込んでた時間は何%にするかっていう時間だったんですね。できない30%は何ですか?
「食事はカーボラストを基本にしましょう」
工藤:食事は「ミートファースト」でできるとして、合間にお菓子とか食べちゃうでしょ。糖質で血糖値が上がるので、どうしても脂肪がつきます。お菓子は食べていいんですけど、お菓子もご飯と同じ炭水化物なので、食間じゃなくて「カーボラスト」(糖質を含むものを最後に食べる)にしましょう。
クロちゃん:肉食べて、ご飯食べて、お菓子食べる。デザートみたいな感覚でお菓子食べるってのは、アリですか?
工藤:そうすれば、血糖値が上がりにくいのは上がりにくいですね。徹底的に体を絞るなら、お菓子は食べない方がもちろんいいですけど。ぼくのおすすめのお菓子は、『SOYJOY』とかプロテインバーとか、糖質が急激に上昇しない低GI値(グライセラミック・インデックス、食後血糖値の上昇を示す指標)の商品です。
クロちゃん:それ、お菓子っぽくないもん! それに練乳とかぬっちゃダメなんですかぁ~。
工藤さん:練乳は糖分が多いのでダメです。
クロちゃん:練乳おいしいし、食べたいし! 先生、ぼくは甘いお菓子が食べたいんです。もう~!(次回に続く)
お笑い芸人:安田大サーカス クロちゃん
タレント。1976年12月10日生まれ。広島県出身。趣味・特技はピアノ、社交ダンス、詩を書く、アロマ、カポエイラ。『熱血BO-SO TV』(千葉テレビ)、『オレたちやってマンデー』(MBSラジオ)、『クロちゃんのもっと海パラダイス!』(海日和×ジャンバリTV)、『クロちゃんのアイドル紹介するしん!』(K’sStation)、現在放送中。オフィシャルブログ『クロちゃんのアロマ研究所』https://ameblo.jp/kuroaroma-dayも好評。
医師:工藤孝文さん
福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。帰国後、大学病院、地域の基幹病院を経て、現在は、福岡 県みやま市の工藤内科で地域医療を行っている。ダイエット外来・糖尿病内科・漢方治療を専門とし、『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)減量外来ドクター、『ガッテン』(NHK)『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)漢方治療評論家・肥満治療評論家など、メディア出演多数。日本内科学会、日本糖尿病学会、日本東洋医学会、日本肥満学会、日本抗加齢医学会、日本女性医学学会、日本高血圧学会、日本甲状腺学会、小児慢性疾病指定医。
撮影/浅野剛
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