女性と“ホルモン”のバランスは密接な関係にある。脳、胃腸、子宮…すべての臓器は、ホルモンでつながっている。さまざまなことが困難な状況にある昨今、そのバランスをとることが難しくなりつつあるが、コントロール術を身につければ大丈夫。
心と体を好転させてストレスフリーな生活を手に入れたいもの。“ホルモンが喜ぶ生活”を心がければ、全身にたちまち気力が満ちるはず!
女性ホルモンが減少するとどんな症状が?
生理の不調や更年期障害には、女性ホルモンが影響している。成城松村クリニックの院長で婦人科医の松村圭子さんが言う。
「排卵後はプロゲステロンが急激に増え、生理前にかけてエストロゲンとともに減少します。『PMS(月経前症候群)』といわれる生理前のイライラや不安感、眠気といった症状は、この変動に体が追いつけずに起こるといわれています」
特に、ストレスフルな環境にいる人や、日頃からマイナス思考に陥りやすい人は、女性ホルモンのバランスによる影響を受けやすい。
「更年期になると、加齢によって女性ホルモンが急激に減ることでほてりや不眠、怒りっぽくなるなどの症状が表れます。生理前の症状が重い人は、更年期の症状も強く出る傾向にあります」(松村さん・以下同)
◆女性ホルモンの減少は緩やかにできる
女性ホルモンの変動・減少そのものは避けられないが、減っていくのを緩やかにすることで症状を和らげることはできるという。軽い運動をしたり充分な睡眠を取ったり、エストロゲンに似た化学構造を持ち、似た働きをするイソフラボンを含有する大豆製品を積極的に摂るのが有効だ。
加齢により女性ホルモンが減ると見た目の女性らしさは減少するが、心身の快活さは男性ホルモンの「テストステロン」やほかのホルモンがカバーしてくれると松村さんは言う。年を取るほど活動的になっていく女性が多いのは、男性ホルモンのおかげということだ。
心を司るホルモンの種類と”暴走”とは?
充分にエストロゲンが働けば、女性の魅力を底上げする作用が期待できる。恋愛体質の女性なら、ぜひエストロゲンの力を借りたいと思うかもしれない。恋のドキドキは「ドーパミン」の分泌を増やし、快感を得られるのだ。ドーパミンは恋愛のほか、欲しいものを手に入れるなど、「ドキドキ」「ワクワク」したときに働くホルモンで、やる気を引き出す作用もある。もりしたクリニック院長で心療内科医の森下克也さんが言う。
「ドーパミンが分泌されると快感を覚えますが、それは一時的なもの。ギャンブルなどの依存性のあるもので得るドキドキ感も、ドーパミンによるものです。ドーパミンが多い状態が続くと攻撃的になったり、イライラしたりします」
さらに、ドーパミンから作られる「ノルアドレナリン」「アドレナリン」が増えると、落ち着きがなくなり、ミスをしやすくなる。
「興奮した状態が続いて、ちょっとしたことで怒りやすくなるなど、精神的に不安定になります」(森下さん・以下同)
ノルアドレナリン、アドレナリンが出続けると、自律神経が乱れて免疫力が下がる。
「自律神経は免疫と密接にかかわっているので、かぜをひきやすくなったり、下痢や便秘、腹痛を起こしたりします」
ノルアドレナリン、アドレナリンはスマートフォンやパソコンの画面から出るブルーライトやストレスによって増加する。こうした強い刺激は「コルチゾール」の分泌を促す作用もある。コルチゾールが増えると、睡眠に関係するホルモン「メラトニン」「セロトニン」の量が減って、眠りが浅くなる。
睡眠によってホルモンの働きを整える
ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、コルチゾールなどの“暴走”を止めるにはどうしたらいいか。睡眠障害に詳しい雨晴クリニック副院長の坪田聡さんが解説する。
「日中に分泌されたセロトニンは、脳の中央にある『松果体(しょうかたい)』という部分を介してメラトニンに変化します。メラトニンには体温を下げて眠りを促し、体内時計を整える働きがあるため、日中にセロトニンが充分に分泌されるように整えることが大切です。朝起きたらすぐに日光に当たるようにするのがいいでしょう」
”幸せホルモン”の原料トリプトファンを食品から摂取
セロトニンの原料となるトリプトファンが多い食品を摂るのも効果的だ。
「朝食に大豆製品、肉、乳製品、バナナ、アボカドなどを摂ると体内でセロトニンが作られます。睡眠導入剤を使った眠りは体内時計を乱すため、あまりおすすめできません」(坪田さん・以下同)
◆運動、泣くことなども効果的
ウオーキングや自転車、フラダンス、ゴルフや野球のスイングなど、一定のリズムのある運動や、ガムを噛むなどしてあごを動かすこと、泣くことも有効だ。
「セロトニンは“幸せホルモン”呼ばれ、心を落ち着かせる働きがあると同時に、リラックスすることでも分泌が増えます。“ハイになっているな” “ストレスがたまっているな”と感じたら、ペットと触れ合うとか、親しい人と電話をするとか、リラックスできることをして、できるだけ気持ちを落ち着かせることも大切です」
女性は男性よりセロトニンの分泌が少なく、うつになりやすい傾向があるという。
「更年期になってエストロゲンが減ると、それに伴ってセロトニンも減少します。子供の巣立ちや孤独、老いなどの環境要因もあり、セロトニンで対処しきれないほどのストレスを感じてうつになるケースが多いようです」(森下さん)
セロトニンが少ないと、睡眠と覚醒のリズムが乱れやすくなる。坪田さんによれば、うつ病患者の多くはセロトニンが少なく、そのうち9割ほどの患者には睡眠障害が見られるという。セロトニンは95%が腸で作られるため、腸内環境を良好に保つようにしよう。
ストレス軽減にはβ-エンドルフィンを増やす入浴、運動を
ストレスを軽減するには、「β-エンドルフィン」の分泌を促すのもいい。おいしいものを食べたり、運動や入浴をすると分泌され、快感をもたらす。ドーパミンによって得られる快感とは違い、ゆったりとした“幸せ感”が得られるといわれており、それによって、免疫力アップやアンチエイジングにも役立つとされ、頻繁に分泌されることでその効果が高まるといわれている。
「β-エンドルフィンは“脳内モルヒネ”ともいわれ、モルヒネの数倍の鎮痛効果があり、マラソンなどで少し苦痛を感じた後にも分泌される。例えば、腹筋運動を50回した後の解放感や達成感は、β-エンドルフィンの快感に近いといえます。また、いい香りを嗅いだときにも分泌され、特にバニラエッセンスの香りを嗅ぐと増えるといわれています」(森下さん)
※女性セブン2020年4月30日号
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