体内の水は常に全身をかけめぐり、細胞や臓器に栄養を届け、老廃物とともに排出される。この循環がスムーズであれば体は健全で健康といえるが、ひとたび内臓や血管、自律神経などに乱れが生じると水分の代謝異常が起こり、さまざまな不調(不定愁訴)となって表れる。
自粛生活が長引く中、普段以上に体にも心にもストレスや疲れなど負担がかかりがち。そんな今こそ、体内の循環をスムーズにするために重要な役割を果たす水の正しい飲み方を実践しよう。
飲むべき水の適量、タイミングは?
目標は1日1.5リットル。大切なのは、1日の中で一定量をまんべんなく飲むこと。帳尻合わせの“一気飲み”は体に毒! 絶対にやってはいけません。 では、1日のうちでいつ、どのようにどんな水を飲んだらいいのだろう?
心療内科医の森下克也さんは、「午前中、日中、夜に分け、4:5:3を“ちびちび”と飲みましょう」とアドバイスする。
◆寝る1時間前までにコップ1杯の水をちびちび飲む
これまで水を飲む習慣がなかった人が、1.5リットルの水を毎日無理なく飲み続けるためのコツはあるのだろうか。
「一度に大量の水を飲むと腎臓が処理しきれず、逆に滞りの原因になってしまいます。極端な例では、けいれんや呼吸困難を伴う『水中毒』が起こり、死亡することもあります。そこで、午前中(起床後から昼食前)・日中(昼食から夕食)・夜(夕食後から就寝前)の3つの時間帯に分けて、量としては4:5:3くらいの割合で、水を飲んでいくのが理想です。
寝る直前に飲む人も多いですが、寝る1時間前までにコップ1杯の水を飲んで、ゆっくりと筋肉をほぐす方が副交感神経が優位になり、よい睡眠がとれます」(森下さん・以下同)
飲み方としては、コップ1杯(180~200ml前後)をちびちびとこまめに飲むのがポイント。
◆朝起きたときはコップ1杯を一気に飲む
ただし、起床時や運動中は水分を大量に排出し、軽い脱水症状になっているため、一度に飲んだ方がいいようだ。
「1.5リットルは一般的な基準で、絶対にこの量を飲まなければいけないということではありません。体格差もあるので、『体重×30ml』と覚えておき、ご自身で適量をつかんでください」
1日の「水を飲むスケジュール」
上の図は、専業主婦が1日に水を飲むスケジュール例(合計で1.5リットル以上となっているが、量は適宜調整可能)。起床時と入浴前はいっぺんに飲むとして、それ以外は、水を手元に置いて時間をかけて少しずつ飲んでいくイメージだ。働いている人や外出する場合はマイボトルを持参するとよい。
◆1日に飲む水1.5リットルを7~9回に分ける
「1日の飲水量を7~9回に分けるといいですね。慢性脱水症にならないように、のどが渇いていなくてもこまめに飲むことが重要です。また、運動をする日や夏は水の量を増やし、お酒を飲むときは、水も同時に飲むよう心がけてください」
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水の選び方は?おすすめの温度は常温?
この“ちびちび飲み”は、疲れにくい体をつくるためにアスリートも実践している飲み方だ。では、種類や温度はどう選べばいいのだろうか。
◆軟水、硬水の違いとは?むくみ解消には…
「不足しがちなミネラルが効率よく摂れる“硬水”は、体質改善や熱中症にも役立つのでおすすめですが、独特のくせがあり、好き嫌いが分かれるところです。その場合、日本の軟水や水道水などでもかまいません。
ただ、軟水はむくみやすいので気をつけましょう。温度は、腸内環境を整える作用のある常温がベストです。冷たい水は、内臓の機能を低下させ、自律神経のバランスも乱れてしまうので控えてください」
ちなみに硬水はミネラルの量が多いほど独特のくせがあり、日本人には飲みにくいと感じられることも多いが、不調の解消や体質改善などに役に立つ。
水を飲み続けるのがつらいという人は、麦茶や黒豆茶など、カフェインの入っていないお茶であれば代用可能だ。
「麦茶にはミネラルがありますから、水道水で作ってOK。ミネラルウオーターで作ると、むしろおいしくないですよ」
教えてくれた人:もりしたクリニック院長・森下克也さん
/浜松医科大学にて漢方と心療内科を研究。現在は自身のクリニックにて、原因不明の不調を訴える患者に対して、東洋医学の観点から「水飲み」を促し、効果を上げている。『不調が消えるたったひとつの水飲み習慣』(宝島社)ほか著書多数。
イラスト/コナガイ香
※女性セブン2020年5月7日・14日号
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