なんとなく体調が悪い…と思っても、「更年期だろう」と放置していませんか? 家事や育児、仕事に忙しい40代・50代女性は自分の体をおろそかにしがち。「更年期の症状は300以上あり、そのなかには、怖い病気が潜んでいることも」とは、婦人科医の松村圭子さん。学校できちんと教わらないため、間違った知識や勘違いで対処しがちな閉経と更年期について、改めて基本から学びませんか?
更年期の症状、一覧
まずは、更年期の症状リストをチェックしてみて。こんなにあるんです!
「更年期+コロナ禍」で心身に変調が?
閉経はすべての女性に訪れる生理現象とはいえ、心と体にあまりにも多様な変化をもたらす。どんな症状が自分を襲うのか。
日本の女性が閉経を迎える平均年齢は50才。その前後約10年の間に生じる各種症状が日常生活に支障を来すほどの状態を更年期障害という。
「更年期障害は、女性ホルモン・エストロゲンの減少によって起こりますが、その症状は300以上あるとされています。それ自体放っておくべきではありませんが、何より怖いのは、症状が多いせいで、更年期障害だと思っていたら別の病気だったというケースです」
とは、成城松村クリニック院長の松村圭子さん(「」内、以下同)だ。更年期障害か別の病気か、見分けるにはどうしたらいいのか。
「生理が不順になったり、なんらかの更年期症状が出たタイミングで、まずは婦人科を受診してください。最近の患者さんは、インターネットなどで調べた閉経や更年期に関する知識をお持ちです。ただし、情報が古かったり、勘違いしていることも多い。病気の発見が遅れるのは、そういった間違った知識をもとに自己判断してしまうからです」
◆信頼できるドクターを探そう
可能であれば、なんでも相談できるホームドクターを決めておくといい。
「自治体が行う住民検診では、20才になると子宮頸がん検診が、40才になると乳がん検診が受けられるようになります。そうした定期検診や健康診断をきっかけとして、“この人なら”という医師を見つけておくと、いざというときに慌てずにすみます」
カルシウムだけでなくたんぱく質も意識して摂る
更年期には、体だけでなく心のトラブルも増える。特に多いのが気力の低下で、これがなかなか侮れない。
以前は難なくできていたことが思うようにできなくなる。しかし、「やる気の問題だ」「怠けちゃいけない」などと自分を責めたり、あるいは家族に注意されたりして自己嫌悪に陥る。このささやかな不調がきっかけで、心だけでなく体のバランスまで崩してしまうのだ。コロナ禍による鬱屈した日々がこうした不調に拍車をかけ、悩む患者は多いという。どうしたらいいのか。
「まずは、できない自分を責めないでください。できることに目を向けてみましょう。興味のあることに新たにチャレンジするのもおすすめです。これまで家族のために尽くしてきた人こそ、更年期に入ったら、自分のために生きることを信条としてみてください。このように考え方を変えるだけでもグッと楽になります」
◆住環境や食生活の見直しでスッキリ
これまでの住環境や食生活を見直すのもいい。たとえば、不要なものを捨てて背負うものを減らす。これで掃除が楽になって探しものが減り、心がスッキリする。食生活では、たんぱく質を充分に摂れるメニューにすることが大切だ。
「多くの人が、閉経後はカルシウムばかりを多く摂ろうとしますが、それだけでなくたんぱく質も不足しがち。筋肉や内臓、ホルモンなどを作る材料となるので、1日50gは意識して摂ってください」
更年期の症状はつらい。しかし、人生の折り返し地点に立ったことを意識し、これまでの生き方や考え方を見直す絶好の機会でもある。心の持ち方と事前の準備で、更年期は“幸年期”に変えられる。ぜひ、参考にしてほしい。
更年期症状に潜んでいる病気
こんな症状が出たら注意。自分で判断せず必ず受診を。どこに行けばいいか迷ったらまずは婦人科へ。
◆不正出血したら…子宮体がんかも
子宮は奥にある「子宮体部」と入り口にあたる「子宮頸部」に分けられ、子宮体がんは子宮体部の内膜に発症する。出産経験がなかったり、肥満も発症の要因に。
◆疲れやすい、冷えなどが続いたら…甲状腺の病気かも
甲状腺ホルモンの分泌量が低下すると、疲労、肥満、冷えなどが起こる。逆に甲状腺ホルモンが過剰に作られると、イライラや不眠、多汗などに悩まされる。いずれも更年期症状に似ているので要注意。
◆激しいめまいを感じたら…メニエール病かも
平衡感覚をつかさどる耳の奥の内耳にリンパ液がたまって起こる。30~50代で発症することが多く、症状は聴力低下やめまい、耳鳴りなど。
◆異常な眠気やだるさを感じたら…糖尿病かも
女性ホルモンにはインスリンの効きをよくする働きがあるため、女性ホルモンの分泌量が減少するとインスリンの効きが悪くなって糖尿病になりやすくなる。更年期と似た症状としては、倦怠感や眠気など。
◆コレステロール値が急上昇したら…脂質異常症かも
女性ホルモンが減少するとコレステロール値は上がる。LDLコレステロールが基準値を超えると、脂質異常症の可能性も。動脈硬化の原因になるが、自覚症状がないので検査で数値が上がっていたら病院へ。
取材・文/上村久留美
※女性セブン2020年11月5・12日号
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