誰もがかかる可能性のあるがん。自分だけでなく、大切な人が入院・手術になったときの「病気の値段」は、意外とわかっていないものです。
年間37万人もの人が亡くなるがんは、思っているより身近な病気です。けれど、いざ病気になったときに治療費がわかるのは、実は会計時。支払うときになって「えっ、こんなにお金がかかったの？」なんてことを避けるべく、山本学医師監修、医療アドバイザーの御喜千代さんが著した『大切な人が入院・手術になったときの病気の値段がわかる本』（アスコム）から、いざというときの心がまえができる、病気にまつわるお金のあれこれを紹介します。
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身近な3つのがんを知って備えよう
いつ、自分や身近な人がかかってしまうかわからない大病。日本人の2人に1人が、がんにかかるといわれています。もし、がんにかかったときは、種類や進行度によって治療費が大きく異なります。健康な今だからこそ、がん治療にかかる医療費を知って、備えておきましょう。
◆女性の死亡者が多い大腸がん
女性がかかるがんの中でも、最も死亡者が多いのが大腸がんで、年間2万4000人が亡くなっています。患者数は、乳がんに次いで2番目となる7万人と、女性にとっては要注意の病気。けれど、早期の段階では症状がほとんどないため、気づきにくいです。
特に40歳以上で、BMI（※）30以上の人は要注意！ 放っておくと、死亡リスクがあるだけでなく、こんなに高いお金がかかってしまうかもしれません。
※体重÷身長（m）×身長（m）
医療費総額の平均：97万4000円
3割負担の場合：約29万2000円
1割負担の場合：約9万7000円
平均入院日数：12.2日
※実際は高額医療費制度が適用されるため、申請すれば自己負担限度額を超えた分は払い戻されます（自己負担限度額は所得によって異なる）。以下で紹介するがんの医療費についても同様です。
◆胃がんは日本人に多い病気
日本人に多いがんである、胃がん。胃の粘膜にできた悪性腫瘍が、進行するにつれて壁の層の中に深く浸潤していく病気で、男性は年間2万9000人、女性は年間1万5000人が亡くなっています。胃がんの中には「スキルス胃がん」というものがあり、内視鏡検査では見つけにくいため早期発見が難しいです。
胃がんは50歳以上で、塩辛いもの、脂っこいものを好む人は注意するべき病気。胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎と診断されたことがある人もかかりやすくなるので、当てはまる人は定期的に検診を受けましょう。
医療費総額の平均：95万4000円
3割負担の場合：約28万6000円
1割負担の場合：約9万6000円
平均入院日数：14日
◆喫煙者は要注意の肺がん
肺門部や肺胞にできる悪性腫瘍を指す肺がん。亡くなる人の数は男性が5万2000人と、がんの中では死亡者が最も多く、女性は2万2000人でがんの中では死亡者数の多さが2番目。想像している以上に男女ともに身近な病気といえます。
肺は血管が豊富な臓器のため、遠隔転移をしやすく、治りにくいのが肺がん。50歳以上で、日に20本の喫煙や10年以上たばこを吸っていた人、さらに喫煙者と暮らしている人もかかるリスクが高いそう。長引く咳など気になる症状があれば、早めに呼吸器専門医を受診しましょう。
医療費総額の平均：85万5000円
3割負担の場合：約25万7000円
1割負担の場合：約8万6000円
平均入院日数：9.6日
心身の苦痛を軽くする緩和ケアは、医療費と別
さらに、がん治療の際には、病気によって生じる痛みや苦しみをやわらげる「緩和ケア」を手術、放射線、抗がん剤治療とともに行うケースが増えています。
緩和ケアには大きく、体の苦痛を取る治療と、心の苦痛を取る治療の2つがあります。痛みだけでなく、息苦しさや、病気になったときに起きる不安を軽くしてくれるこの治療は、多くのがん専門病院や大学病院、総合病院に緩和ケア医を中心としたチームがいて、患者を支えています。
外来または一般病棟に入院しながら緩和ケアを受ける場合は、かかる費用は3900円（健康保険適用で1～3割負担）。医療費とは別に加算されるので、覚えておきましょう。
がん治療では医療用ウィッグが必要なことも
がん治療の際に使われる抗がん剤の中には、副作用に脱毛が生じるものが少なくないのです。治療後に髪が再び落ち着くまでの間、ウィッグの着用を希望する人も多いです。
医療用ウィッグは、健康保険の適用外で、医療費も控除外。購入すると価格帯は10万円～21万円程度と、決して安い買い物ではないものの、脱毛による精神的ダメージは実際に体験するととても大きいため、脱毛が予想される治療を受けるならば用意しておきたいものです。
◆価格は2000円～35万円と幅広い
レンタル用ウィッグは価格が2000円～30万円程度と幅広く、レンタルでも1日250円程度～。さらにお手入れでお金がかかる可能性も。がん治療にはウィッグに費用がかかることも知っておきましょう。
※医療費総額の平均は、手術費、入院費、食事・生活療養費など、がんの治療を受けたときにかかる費用を含みます。平均入院日数は、手術を受けたときの入院の平均になります。
教えてくれたのは：医療アドバイザー・御喜千代さん
みき・ちよ。世界60カ国にグループ企業を有す世界最大級のヘルスケアカンパニーJohnson＆Johnsonで、外科医・産婦人科医を中心に新しい手術手技に関する概念の普及やトレーニングに携わる。宮内庁病院等の医療現場や、医学系学会・研究会でのコミュニケーション領域のプログラムを実施。MBA取得後、1999年からコミュニケーション業界に従事。マーケティング・コミュニケーションを専門領域とし、厚生労働省が行うヘルスプロモーションの民間団体の立ち上げにかかわる。各種医学系学会・研究会と生活者のコミュニケーションを担当し、「メタボリック・シンドローム」等の概念の認知向上や、健康概念理解促進目的の講演、美容系新素材の概念普及活動を行う。医学会、医療業界における豊富な人脈を持つ。日本医学ジャーナリスト協会 正会員、健康管理士一般指導員、健康マスター・普及認定講師、日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。
文／イワイユウ
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