処方箋を持って薬局に行くと、「ジェネリックにしますか?」と聞かれることも。でも、ジェネリック医薬品がどんなものが、ちゃんと知っていますか?
安いからとなんとなく選んでしまう人もいるジェネリック医薬品のメリットやデメリットを、山本学医師監修、医療アドバイザーの御喜千代さんが著した『大切な人が入院・手術になったときの病気の値段がわかる本』(アスコム)から解説。さらに、薬代を抑えるコツも紹介します。
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ジェネリック医薬品ってどんなもの?
ジェネリック医薬品は、安いけれど、安全なの?と思う人もいるはず。そこで、デリットとデメリットを知っておきましょう。
◆ジェネリック医薬品のメリット
ジェネリック医薬品は、研究・開発に莫大な費用がかかっている先発医薬品に対して、特許が切れたあと(先発医薬品発売から5~10年後)に作られた薬で、開発費用などがかかっていない分、値段が安くなっています。
特にがん治療のときは使われる薬が高価なことが多く、ジェネリック医薬品の価格の安さが、長い闘病生活の金銭的なサポートをしてくれることも。医師と相談しながら、上手に活用すれば、薬にかかる費用をかなり抑えることができます。
◆ジェネリック医薬品のデメリット
先発医薬品とジェネリック医薬品は、有効成分以外の製法や添加物が異なっているので、まったく同じ薬とはいえず、有効成分以外の製法や添加物は異なります。有効成分も添加物も国の厳しい基準に合ったものだけがジェネリック医薬品として認められてはいますが、添加物が違うため、アレルギーがある人などは、ジェネリック医薬品を服用すると体調が悪くなる恐れもあります。
さらに、安いからといってコストに意識がいきすぎて品質の低下を招くと、ときには命にかかわる事態になりかねません。そうすると、ジェネリック医薬品に変えたばかりに、余計な医療費がかかった、ということにならないよう、事前にしっかり医師や薬剤師に相談することが大切です。
そのため、処方箋を持って薬局に行くことが多いならば、困ったときに何でも相談できる、かかりつけの薬局や薬剤師をもつのがよいでしょう。
薬の値段の仕組みとは?
処方薬は、実は薬局によって支払う金額が違うもの。その金額は調剤報酬に基づいていて、薬本体の価格(薬価)だけでなく、薬局や薬剤師が提供する調剤サービスの料金も含まれています。
調剤報酬の中身である調剤技術料や薬学管理料は、薬局によって点数が異なるため、薬代も変わる、ということです。明細をチェックすると、市販薬と比べてお得なことに気づくかもしれません。
◆調剤技術料
調剤技術料には、調剤基本料と調剤料の2つがあります。調剤基本料は、薬局の立地や処方箋の受付回数のことで、9点から42点まで5つに区分されています。医療機関と同一敷地内にある薬局に設定される特別調剤基本料は点数が低く9点。大きな医療機関の近くにある中規模以上の調剤薬局チェーン店であれば、21点以上になります。
また、調剤料は薬局ごとよりも、薬の種類や処方する日数で点数が変わります。錠剤を半分に割ったり、軟膏として複数の薬を混ぜ合わせたりといった作業が必要になると、技術料が加算される仕組みになっています。
◆薬学管理料
服用している薬を一括して管理して相談に乗ってくれるかかりつけ薬剤師がいると、普段服用している薬と市販薬とののみ合わせをチェックしてくれたり、複数の医療機関にかかっているときに似たような作用がある薬が重複していないか確認してくれたりします。その場合にかかる管理や指導料が、薬学管理料として加算されています。
市販薬を買うなら知っておきたい制度
医療費控除の特例として2017年に新たに設けられた「セルフメディケーション税制」。
これは、きちんと健康診断などを受けている人が一部の市販薬(厚生労働省のウェブサイト<https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html>に掲載されている医薬品1830品目[2020年9月30日時点]が対象。対象商品には共通識別マークが付いています)を購入したときに所得控除を受けられる制度です。医療費控除よりも手軽に、誰でも申請できる控除となっています。
控除を受けられる金額は1万2000円以上(8万8000円まで)で、10万円以上という従来の医療費控除よりも、ハードルがグンと下がっているのが特徴です。
申請の仕方は医療費控除と同じで、確定申告で行います。医療費控除と異なる点は、特定健康診査や定期健康診断、がん検診、予防接種などを受けている証明が必要なこと。また、医療費控除とセルフメディケーション税制は同時に受けることができないので注意しましょう。
どちらを選ぶか迷ったときは、課税所得額とそれぞれの使用金額を入力してくれる計算をしてくれるウェブサイトがあるので、それらを使ってシミュレーションをするのがおすすめです。
教えてくれたのは:医療アドバイザー・御喜千代さん
みき・ちよ。世界60カ国にグループ企業を有す世界最大級のヘルスケアカンパニーJohnson&Johnsonで、外科医・産婦人科医を中心に新しい手術手技に関する概念の普及やトレーニングに携わる。宮内庁病院等の医療現場や、医学系学会・研究会でのコミュニケーション領域のプログラムを実施。MBA取得後、1999年からコミュニケーション業界に従事。マーケティング・コミュニケーションを専門領域とし、厚生労働省が行うヘルスプロモーションの民間団体の立ち上げにかかわる。各種医学系学会・研究会と生活者のコミュニケーションを担当し、「メタボリック・シンドローム」等の概念の認知向上や、健康概念理解促進目的の講演、美容系新素材の概念普及活動を行う。医学会、医療業界における豊富な人脈を持つ。日本医学ジャーナリスト協会 正会員、健康管理士一般指導員、健康マスター・普及認定講師、日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。
文/イワイユウ
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