更年期の性の悩みといえば、性交痛など機能面での問題が浮かぶかもしれませんが、幸せなセックスは心が満たされてこそ実現するもの。そのために最も大切なのは、パートナーとのコミュニケーションかもしれません。
婦人科医で成城松村クリニック院長の松村圭子さんに、更年期の性を豊かにするためのメンタル面での秘訣を教えてもらいました。
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更年期に増えるセックスレスカップル
更年期は性に対しても揺らぎがち
更年期世代のセックスに対する気持ちは複雑です。「忙しくて体調も今ひとつだから、したくない」と思いながらも、「素敵なセックスで満たされたい」という願望も同時に持っていたりします。
パートナーに求められると億劫だけれど、セックスレスが続くと女性として魅力がないような気がして不安になる人も多いのではないでしょうか。そんなふうに心がゆらぐ更年期は、夫婦の関係がダイレクトに見えてくる時期でもあります。
パートナーとの性的な欲求のズレ
患者さんからのご相談で多いのが、パートナーとの性的な欲求のズレ。更年期は女性ホルモンの急変動で性欲が落ちることが多く、機能的にも女性器が乾いて性交痛が起こりやすいのです。そんな女性の心と体の変化に、男性はなかなか気づきません。一方的に求められ、拒絶したり無理して応じたりしているうちにセックスが面倒になってしまうという訴えをよく聞きます。
女性は自分の体調を気づかってくれないパートナーにガッカリして、男性は相手が以前のように自分を受け入れてくれないことに傷つき、セックスレスカップルが増えることになります。
更年期はパートナーとの絆を結び直すチャンス
コミュニケーションを深める
夫婦や長くつき合っているカップルでも、性について話すのには抵抗がある人が多いようです。患者さんの中には「普段の会話も業務連絡になりがちなのに、セックスのことなどとても話せません」というかたもいます。
せっかくなので、更年期を“夫婦関係を見直すよい機会”ととらえて、パートナーとのコミュニケーションを深めてはどうでしょう。今よりも会話を増やす、気が向いたときに相手を褒める、少し甘えてみるなど、できるところから試してみませんか?
女性の体の変化を理解してもらう
パートナーとの心の距離が近づいたと感じたら、あなたの今の体の状態について話してみましょう。
女性ホルモンの減少で膣が濡れにくくなっていること、体調が悪くて性欲もわかないことなどを聞いてもらって。うまく説明できそうにないなら、更年期についての本を渡して読んでもらうのもいいですね。そして、これまでと違う体の状態に変わってきていることを相手に理解してもらうのです。
「これならOK」ということも伝えて
更年期でセックスをするのがつらい場合は、できることとできないことを具体的に伝えることも大事です。たとえば、「挿入は痛くて無理そうだけど抱き合うのはうれしい」「一緒に寝るだけでホッとる」などソフトな言い方を工夫しましょう。
一方で、更年期の症状が軽く積極的にパートナーとの性を楽しみたい人は、お互いにどんなセックスがしたいか、どこが心地よいかなど性的な欲求を話し合うことをおすすめします。
感覚的にわかってもらいたい女性に対して、男性は言葉で理解しようとする傾向があります。自分の体や性のことなどを思い切って伝えて話し合うことで、パートナーとの関係はより深く豊かになるはずです。更年期が幸せなセックスのきっかけになることを願っています。
教えてくれたのは:成城松村クリニック院長・松村圭子さん
まつむら・けいこ。1969年生まれ。日本産科婦人科学会専門医。成城松村クリニック院長。広島大学医学部卒業。広島大学附属病院などの勤務を経て、現職。若い女性の月経トラブルから更年期障害まで、女性の一生をサポートする診療を心がけ、アンチエイジングにも精通している。生理日管理を中心としたアプリ「ルナルナ」の顧問医。西洋医学のほか、漢方薬やサプリメント、各種点滴療法なども積極的に治療に取り入れている。著書に『10年後もきれいでいるための美人ホルモン講座』(永岡書店)、『これってホルモンのしわざだったのね』(池田書店)など多数。https://www.seijo-keikoclub.com/
構成/森冬生
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